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インタビュー

地域包括ケアをわかりやすく 充実度の数値化から見えてくるもの―安藤高朗氏(医療法人社団永生会 理事長)

2017年10月23日

2025年に向けて整備が進む「地域包括ケアシステム」。その概念は徐々に浸透しつつある一方、抽象的な話で留まっている地域もあります。そのような中で「地域包括ケアインディケーター」という指標を用いて、地域包括ケアの充実度を数値で評価する取り組みを模索しているのが医療法人社団永生会(東京都八王子市)です。今回は安藤高朗理事長に、現在行っている具体的な取り組みと今後押さえておくべき地域包括ケアの指標について聞きました。

職員満足度を病院経営に取り入れ、20カ所の拠点を持つ大型法人に

―はじめに、貴会の特徴を教えてください。

当会は、東京都八王子市を中心に「急性期」「回復期・慢性期」「在宅」の3つの車輪で、切れ目のない医療・介護を提供しています。もともと国民皆保険制度が始まった1961年に21床の個人病院として始まりましたが、1989年に院長だったわたしの父親が急逝。29歳で院長職を引き継ぎ、当時からデータやエビデンスに基づいた医療を提供したいと思って、今に至ります。

―現在、貴会には急性期の南多摩病院、回復期・慢性期の永生病院をはじめ、3カ所の介護老人保健施設、5カ所の訪問看護ステーションなど約20カ所の拠点があり、法人内での地域包括ケアも実現していますが、ここまで規模を拡大できた理由は何でしょうか。

安藤高朗大きく2点あります。1つは患者ニーズに基づく機能を強化したことです。当会で実施している地域住民向けの定期アンケートからは「救急」と「介護」のニーズが根強いことがわかっています。そのため、この2つの領域を中心に整備しつつ、老人クラブやタウンミーティングなどにも顔を出して、住民の需要を探ってきました。

それと同時に意識したのが、法人内の患者満足度と職員満足度です。たとえば、医師には患者と職員による点数評価を取り入れています。院長就任当時は年上の医師も多かったので誰もが納得できるように、患者やそのご家族に50点、看護師や介護士に50点を配点し、計100点満点で採点する仕組みとしました。

職員の満足度調査は施設・部署ごとに行い、課題は7カテゴリーに分けて改善を図っています。自由記述欄には忌憚のない意見も求めており、経営者にとっては怖い面もありますが、職員満足度が上がれば質の高い医療・介護につながり、ゆくゆくは患者満足度にもつながっていくと思うので、なかなか侮れません。このように、地域と患者のニーズに基づいた施策が院内外でうまくいっているのかを1つ1つ確かめてきた結果、今の法人規模につながっているのではないかと思います。

―ちなみに、法人内の医療と介護施設同士の連携で工夫されていることはありますか。

お互いに垣根がなく、職種別の制限がない限り、研修や学会には一緒に参加しています。資格取得でも、医療・介護の分野を問わず自己研鑽に励む方が多いですね。
ただ、患者情報は、電子カルテと紙カルテを使って医療と介護のそれぞれで管理をしているので、ICTを使った一元化を考えているところです。

地域の現状を目に見えるかたちに落とし込む

―そもそも「地域包括ケアインディケーター」とは、どのような指標なのでしょうか。

地域包括ケアを構造、過程、結果・成果の3フェーズに分け、体制や活動量を数値化した指標のことです。作成のきっかけは、伊藤雅治氏(元厚生労働省医政局長)からの提案でしたが、わたし自身も厚生労働省の情報だけでは漠然としていて、具体的な行動を起こしづらいと思っていました。ようやく指標案ができたので、東京都医師会へ提案し、都全体で活用できるように動き始めています。

地域包括ケア
※医療法人社団永会の資料をもとに編集部作成/クリックすると拡大します。

当会は医療施設や介護施設がありますので、そのサービスに関連する指標はすべて見ていく必要があると感じています。強いて言うなら「地域包括ケアに対する満足度」は指標の定義から始めなければいけませんので、職員たちと「良い医療、良い介護とは何か」という根本的な問いから、しっかりと考えていきたいと思っています。

―これからは法人を超え、市区町村や他法人とも協働していく必要がありそうですが、そこで重要視されている指標はありますか。

現時点では、地域包括支援センターや訪問看護ステーションの総数、かかりつけ医をもっている人の割合、孤独死発生率・防止率、在宅での看取り率などを重要視しています。
市区町村では2025年から2050年にかけての将来推計人口が出せると思うので、先ほどの指標と照らし合わせれば、適切な医療資源の配分や持続可能なまちづくりのヒントが得られるのではないかと考えています。

―地域包括ケアには地域性も影響するかと思いますが、これまでの活動を通して明らかになった東京都八王子市の特徴を教えてください。

この地域は、前々から公的病院がなく民間同士で切磋琢磨してきた歴史があります。その一方で、自然と機能分化ができて競合することが少なかったからか、顔を合わせてコミュニケーションがとれる良い関係が続いています。
2011年に発足した高齢者救急の連携団体「八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会(八高連)」でも、行政、消防署、あらゆる領域の医療・介護事業者が集まって作成した「救急医療情報シート」が市民に定着しつつあります。また、八王子市医師会の集まりは、地域包括支援センターのケアマネジャーが多職種を呼び込んでくれる場にもなっています。

永生会―ちなみに、貴会の法人内で、地域包括ケアを数値化したことで感じる変化はありますか。

「地域包括ケアインディケーター」は指標を設定している段階のため、当会で完全に取り入れられているわけではありません。ですので、地域包括ケアインディケーターを導入することで現場がどう変わるかは、まだまだこれからと言えます。

ただ、当会内での地域包括ケアに対する意識は高く、まちづくりに関する職員アンケート(2017年9月実施)では、地域包括ケアの認知度が9割以上。「まだ理解できていないが地域包括ケアを知りたい」という職員は94%におよびます。一法人としてだけでなく、職員一人ひとりの中で地域包括ケアへの関心が高まっており、現場の職員からも今後のまちづくりのための方策として「総合診療の強化」「患者同士、同じ職種同士が集まれる悩みを共有する場づくり」「住民のヘルスリテラシーの向上やサポーター養成」といった案が挙げられています。現場の声を吸い上げて取り組みを推し進め、「地域包括ケアインディケーター」も参考にし、ブラッシュアップしながら地域の活性化につなげていきたいと考えています。

地域包括ケアの成功は、法人内外の情報から導き出せる

―地域包括ケアに正解はないとも言われますが、安藤先生が考える“地域包括ケアの成功”とは、どのような状態のことを指すとお考えでしょうか。

医療資源が適切に配分されており、当法人で行っているような患者満足度が高ければ、成功と言えるのではないでしょうか。そのためには、医療・介護が過不足のない状態をつくりつつ、ご近所力や地域力を育むことも大切でしょう。これは地域包括ケアの「自助」「互助」にあたりますので、わたしたちができることに限界はありますが、家族向けの介護者講習会を30年以上行っていますし、お祭りやカフェといったかたちで、地域づくりに楽しさ、おもしろさを取り入れているつもりです。

―そうした地域づくりのためには、今後求められる医師の役割も変わってきそうですね。

もはや診療所や病院で待っていれば良い時代ではありません。医師も地域包括ケアチームの一員であることを自覚して、地域医療構想や介護・保健に関わる予防事業などに、一緒に取り組んでいく姿勢が大切なのだろうと思います。

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