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企業(産業医・MD・社医)

有害業務と特殊健診、産業医として特に重要なこと

2025年11月20日

本記事では、有害業務の定義と具体例、特殊健診の目的を解説します。産業医の先生が持つ重要な役割として、法令遵守、リスク把握、そして異常所見時の事後措置・就業判定の2つのポイントを紹介します。

ポイント1:法令遵守とリスクの把握

事業場内に法令で定められた有害業務があるかを正確に把握し、あわせて、対象者には特殊健診を漏れなく実施できているかを確認します。

ポイント2:事後措置と就業判定

特殊健診の結果、異常な所見が認められた労働者に対しては、健康保持のため以下の措置を講じる必要があります。

  • 異常所見に関する医師の意見の提出(就業上の措置、保健指導)
  • 精密検査の指示
  • 必要に応じて作業時間の短縮、作業転換、作業環境の改善 など
  • これらの措置を通じて、労働者が安全で健康に働き続けられるよう、事業主や衛生管理者と連携して対応していくことが産業医の重要な役割となります。

    有害業務とは

    出典:厚生労働省「化学物質による労働災害防止のための新たな規制について」

    有害業務とは、有害物質(化学物質、粉じん、放射線など)や、有害な作業環境(高温、低温、異常気圧、騒音、振動など)により、労働者の健康に障害を引き起こすおそれのある業務のことを指します。

    労働安全衛生法や労働基準法施行規則などで具体的に定められており、これらの業務に労働者を従事させる事業主には、特殊健診の実施や作業環境の管理など、労働者の健康を確保するための特別な措置が義務付けられています。

    有害業務の具体的な例(労働安全衛生法関連)

    化学物質

    鉛業務、有機溶剤業務、特定化学物質を製造・取り扱う業務、四アルキル鉛業務、石綿(アスベスト)業務など

    物理的要因

    放射線業務、高気圧業務、騒音を発する場所における業務、振動工具を使用する業務など

    環境要因

    粉じん作業、多量の高熱・低温物体を取り扱う業務、著しく暑熱・寒冷な場所における業務など

    特殊健康診断とは

    特殊健康診断とは、上記の有害業務に常時従事する労働者に対して、業務に起因する健康障害を未然に防止したり、早期に発見したりすることを目的として、法令により実施が義務付けられている健康診断です(労働安全衛生法、じん肺法、各種中毒予防規則など)。

    一般健康診断が労働者の一般的な健康状態を把握するのに対し、特殊健診は特定の有害な要因に特化した検査項目が含まれている点が特徴で、健康影響を早期に把握し、重篤な職業病への移行を防ぎます。

    主な特殊健康診断の種類と産業医が見るべきポイント

    有機溶剤

    塗装、洗浄、接着剤の使用などで有機溶剤を取り扱う業務

    ※尿中代謝物(例: マンデル酸、メチル馬尿酸)の検査結果と作業管理の状況を関連付けます。

    特定化学物質

    特定の有害な化学物質(塩素、硫化水素など)を取り扱う業務

    ※物質ごとに健康影響が異なるため、取り扱う物質名と毒性を把握し、法令で定められた項目を確認します。

    鉛を扱うハンダ付け、鉛蓄電池製造などの業務

    ※血液中の鉛濃度、尿中アミノレブリン酸(δ-ALA)の値をチェックします。

    電離放射線

    X線装置、放射性同位元素を取り扱う業務

    ※被ばく歴の調査、白血球数・白血球百分率、眼・皮膚の検査など、被ばくによる影響に着目します。

    じん肺

    粉じんが著しく発生する場所での作業(鉱山、研磨など)

    ※胸部X線写真の結果(じん肺の所見)、肺機能検査の結果、作業歴の調査が重要です。

    騒音

    等価騒音レベル85dB以上の作業場における業務

    聴力検査(オージオメーター)の結果を重視し、作業環境の騒音レベルと防音保護具の使用状況を確認します。

    本記事では、労働者の健康に障害を及ぼすおそれのある有害業務の定義と具体例、および特殊健診の目的を解説しました。

    産業医の重要な役割として、まず事業場内の有害業務を正確に把握し、対象者に特殊健診を漏れなく実施する法令遵守とリスク把握が求められます。

    さらに、特殊健診で異常所見が認められた労働者に対しては、医師の意見提出、精密検査の指示、必要に応じた作業環境や就業場所の調整などの事後措置と就業判定を適切に行うことが肝要です。

    これらの措置を通じて事業主や衛生管理者と連携し、労働者が安全で健康に働き続けられるよう支援することが、産業医の重要な責務です。

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