初めまして。都内の企業で専属産業医として働く医師「Dr.けん」です。 本連載では、臨床医から産業医へと転身した私の経験を基に、産業医の「あるある」事例とその時に感じたことや、対応の際に心がけていることを紹介していきます。 今回は連載第1回として、まずは自己紹介を兼ねて、私が産業医の道を選んだ理由や、キャリアチェンジで感じたことについてお話しさせていただきます。 産業医という働き方にご関心をお持ちの先生、あるいは働き始めたばかりで戸惑いを感じていらっしゃる先生方にとって、本連載で取り上げる「あるある」と、それに対し私がどのように取り組んできたかという内容が、何らかのヒントとなれば幸いです。
臨床医から産業医へ。転身を志したきっかけ
患者さんを診察する際、「どうすればこのような状態や症状を防げたのだろうか」と考えることはありませんか?
もともと私は臨床の現場に勤務し、その後この産業医という道を歩み始め、現在は専属産業医として都内にあるオフィスで働いています。
病気の治療は医師にとって重要な職務ですが、日々の診療を通じて「病気にならないためにできたことは何だろう」「病気になった人でも、働き続けることを応援したい」といった思いを持つようになったことが、この道を進むきっかけとなりました。
産業医を始めて戸惑った「立場の違い」
産業医として働き始めたばかりの頃、私が戸惑いを感じていたことがあります。それは、臨床医と産業医の立場の違いです。
これは、産業医をはじめたばかりの方にとって「あるある」な戸惑いではないかと思います。
産業医になってからは、医療的な視点に加え、従業員一人ひとりのキャリア観や企業理念、就業規則、各種法令、生産性といった、臨床医時代にはあまり意識することのなかった多角的な視点が求められることをあらためて知りました。
業務の場面で感じた産業医の役割
この戸惑いを特に感じたのは、従業員の復職判断を求められたときです。
臨床の現場であれば、病気が治ったか、日常生活が送れるかどうかが判断の基準になることが多いです。
一方で、産業医としてはその従業員が安全で健康に働けるかどうかが重要になってきます。このように、臨床医と産業医では視点が異なります。
日常生活はOKですが、仕事を安全に行えるレベルにはまだまだ至っていないケースや、逆に言えば病気であっても条件次第では、同僚と同程度の業務をこなせるケースもあります。
上記のようなケースでは特に臨床の経験に基づいて安易に産業医が意見を出してしまうことは、従業員本人の健康に良くなかったり、本人のキャリアを絶つきっかけになったり、会社や同僚の方にも良くない影響を与えてしまうこともあります。
産業医って難しい?
「産業医ってなんだか難しそう」と感じられる方もいるかもしれません。私もはじめこそ戸惑いを覚えることもありましたが、今では産業医の仕事に大きなやりがいを感じています。
苦手意識のあった業務も、取り組んでみれば臨床の経験が活きてくる場面も多いです。
産業医の仕事は臨床の現場と比較すると「予防」が中心となることが多いです。
さらに、対象は従業員の個々人だけでなく、その労働環境と作業内容もしっかりと把握して、安全で衛生的な組織づくりに取り組むことが重要になります。
まとめますと、産業医は「健康管理」のプロですが、「労働環境」「作業」にも目を配り、適切なフィードバックを行うことで事故や健康被害を未然に防ぐことが私たちの役割だと考えています。
産業医としてのキャリアをご検討中の先生へ

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「産業医の実務経験がない」
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