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インタビュー

循環器内科医師が実践、エビデンス重視の食事術―医師による、医師のための健康ライフハックVol.4(前編)

2019年6月10日

巷に溢れる数々の「健康的な食事術」。玉石混合な情報が飛び交う中、エビデンスに裏打ちされた食事術を紹介する話題の本があります。その名は『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』。今回は、著者であるつかさ内科院長の稲島司(いなじまつかさ)先生にインタビューを実施(※1)。医師のライフスタイルにありがちなNG食生活に対し、改善のためのアドバイスをいただきました。(取材日:2018年12月27日)
※1 取材日 2018年12月27日時点では東京大学医学部附属病院に所属

そもそも「バランスの良い食事」という概念が間違い

――循環器内科の専門医でありながら、野菜ソムリエの資格を取り、食に関する著書を発表された稲島先生。食事法に興味を持ち始めたきっかけは何だったのでしょうか。

異業種の友人との飲み会がきっかけです。30歳を過ぎて友達同士で飲んでいると、健康の話題が増えてきます。誰かが健康のためにリコピンが良いからトマトを食べている、と話し出す。トマト自体は良いかもしれないけど、リコピンという物質が健康に良いというエビデンスはない。なんて医師の方々には常識で、そんな話をすると場の雰囲気に水を差すようで躊躇するとは思いますが、なぜか当時は「面白い!」「もっと知りたい!」と言ってくれる友人が多かったのです。赤ワインのポリフェノールは?ブルーベリーのアントシアニンは?といった質問を次々にいただき、それらの臨床研究を調べては答えているうちに、講演や執筆のオファーもいただくようになりました。

そもそも医師の仕事は疾病の治療がメインで、予防医学には興味を持ちづらいとは思いますが、食事の分野は古今東西の臨床研究を集めていくとなかなか面白いと思い始めました。とくにブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)やジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(JAMA)は食事関連の話題も多く、時間さえあれば読んでいます。

――実際、稲島先生の著書『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』では、エビデンスに基づいた食事法を提唱されていますよね。

はい、世の中にはさまざまな健康方法があり、最近ではエビデンスが紹介されることも増えましたが、ほとんどが動物実験などに基づいた基礎研究の情報です。私はもともと動物や細胞を用いた基礎研究に従事し、一生続けていこうと思っていた時期もありますので、その重要性は認識しているつもりです。しかし、生活者として、臨床医として参考にするのは、ヒトでの大規模臨床研究を基にしたエビデンスです。

たとえば、抗酸化作用が強く、がん予防効果が期待されていたβ-カロテンは、動物実験では効果が見られたものの、ヒトでの効果は否定的です。また、同じく抗酸化作用を有し心血管疾患防止の予防薬として期待されていた時期もあるビタミンEも、摂りすぎるとわずかではあるものの死亡率が高まることが報告されています。ヒトで証明される前に基礎実験で効果が検証されるのは科学的な道筋ですが、その基礎実験の結果だけで特定の物質やサプリメントがメディアで過大評価される風潮には問題があると訴えています。単に効果がないだけでなく、一部には有害性すら指摘されているからです。

――では、稲島先生が実戦している食事術のポイントを教えてください。

私の考える食事術の柱はふたつあります。ひとつめは、そもそもバランスの良い食事、という考え方を改める時期なのではないか、ということです。そもそも現代の食事はカロリーに加えて主食、糖質過多です。また最近は赤身肉が健康によいと言われていますが、赤身肉をたくさん食べることも、大腸癌や脂質異常症のリスクが指摘されています。

反対に野菜をはじめとした食物繊維は、一部のウェブサイトでは摂り過ぎは有害と掲載されているようですが、信頼できる臨床研究の結果からは、いわゆるJカーブにならない、つまり食べ過ぎても問題ないと考えられています。

バランス良く、と言われてしまうと、疾病予防効果のある食材をほどほどにして疾病リスクを高める食材を取り入れてしまう可能性があります。もし健康のためだけを考えるのであれば、疾病予防効果の確認されている食材をより多く食べたほうがいい、と考えています。

ふたつめは、そうは言っても好きなものを食べてもいいじゃないか、ということです。一度しかない大切な人生、好きなものを目一杯に食べるのも大きな喜びです。私もラーメンや焼肉が大好きですし、飲み過ぎることもしばしば。あれはダメ、これを食べろ、ではなく、健康的な食事術を無理なく習慣化しながら、好きなものを食べていこう、というのが基本姿勢です。

――具体的にはどういったものでしょうか。

朝食では、どんぶり一杯程度の野菜を毎日食べることを習慣にしています。多くの方にとって朝食は、昼食や夕食と比較して、自宅で摂ることかつメニューが固定しがちであるという特徴があります。

たとえば前夜のうちにサラダを準備して冷蔵庫に入れておけば、翌朝はそれを食べるしか無い、という状況が生まれますよね。野菜のトッピングには、少量のスモークサーモンや豆類。そして、心筋梗塞や脳卒中の発症、心血管疾患による死亡リスクを下げることが証明されているナッツやオリーブオイルも一緒に摂っています。毎朝サラダをムシャムシャ食べるのは気が進まないと思われるかもしれませんが、ランチや飲み会で野菜を食べる努力をするよりはるかに効率的です。また朝食で、ある程度の野菜を食べていれば、昼や夜に好きなものを食べても罪悪感が少なくすみます。

逆に、朝食の定番で一般的には体に良いと考えられているヨーグルトや牛乳、実は成人に対して目立って有益なエビデンスはありません。ヨーグルトは個人的には好きな食品ですが、糖分や香料も多いです。もし健康のためだけに召し上がっている方がいたとしたら、再考をお勧めします。

また、医師の方々には常識かもしれませんが、サプリメントでは定番のグルコサミンやコンドロイチン硫酸なども、ヒトに対する研究では効果が否定されています。「効果はあまり期待できません」とお伝えするだけでなく、臨床研究の結果をお示しするのも我々の役割かもしれません。

食生活全般に言えることですが、好きで摂取している場合は構いませんが、好きでもないのになんとなく健康に良さそうという理由で取り入れているだけならば、食習慣を考え直してみていただきたいものです。

医師にありがちNG食生活にアドバイス

取材当時、東京大学医学部附属病院に所属し毎日の地域医療連携部や循環器内科での外来を担当。カテーテル検査なども受け持ちつつ、当直や外勤、週1回ペースの講演に著書の執筆と多忙な生活を送っていた稲島先生。そんな忙しい生活の中でも実践できるものとして、ありがちな医師のNG食習慣に対するアドバイスをいただきました。

ケース1:外来や手術で忙しく、まともに食事を取る時間がない

忙しい日々の中でも朝食では、可能な限り野菜を摂ることを意識してみてください。経験上、カロリー不足の医師には遭遇したことがありませんので、野菜のみでも良いかもしれません。私自身も、先に紹介したように、朝はどんぶり一杯程度の野菜を摂っています。

ケース2:食事のために病院から出る時間がなく、コンビニ飯ばかり

私も週に数回、コンビニで食事を調達することがありますが、そんな時にはできるだけサラダを選んでいます。夜勤で慌ただしくカップ麺をひとつだけ…なんていうこともあるでしょうし、毎回は難しいかもしれません。コストも考えてしまいますが、医者の不養生にならうよう、是非サラダをプラスすることを思い出して欲しいです。

ケース3:飲み会や接待が多く、脂質や糖質を取りすぎてしまう

仲間内の飲み会のときには、率先してオーダー係になります。特に大勢の飲み会は、各々が注文するより、オーダー係を一人決めておくと、内容に統一感が出ますし、費用面でも安上がりです。もし場の雰囲気に水を差さないようであれば、あえて食事に気をつけていることを公言することも有効かもしれません。

エビデンスに裏打ちされた食事術を実践し『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』(冬樹舎、2018年)を上梓されている稲島先生に伺った、医師におすすめの食事のポイント。後半では、著書の担当編集者である佐藤さんのお話を交えながら、42歳の若さでレッドオーシャンである食事術本を上梓した経緯や、そのキャリアについてのお話を伺いました。

稲島 司
いなじま つかさ
総合内科専門医。循環器専門医。認定産業医、認定健康スポーツ医。野菜ソムリエ。

2003年東京医科大学医学部卒業。東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。東京大学医学部附属病院地域医療連携部助教・循環器内科をへて2019年5月、東京都北区につかさ内科クリニックを開業。著書は『医師が実践する超・食事術 エビデンスのある食習慣のススメ』のほか『「健康に良い」はウソだらけ』、『血管を強くする歩き方』(共著、東洋経済新報社)、監修した書籍に『長生きしたけりゃパンは食べるな』(フォーブス弥生著、SB新書)などがある。

協力:佐藤敏子 冬樹舎代表
食事術の詳細や出典は、『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』(冬樹舎、2018年)(リンク:https://www.amazon.co.jp/医師が実践する-超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-稲島-司/dp/4861138744)よりご参照ください。

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