職場巡視は、産業医の重要な業務の一つであり、労働者の健康と安全を守るために欠かせない活動です。 本記事では、職場巡視の法的義務と巡視で確認すべきポイントを紹介します。
職場巡視の法的義務と目的
労働安全衛生法および労働安全衛生規則により産業医は少なくとも毎月1回(特定の要件を満たす事業場では2か月に1回)の職場巡視を行うことが義務付けられています。
職場巡視を通じて、労働者を取り巻く職場環境(健康状態・ストレス状況、有害因子など)を正確に入手してください。
そして、作業方法や衛生状態が従業員の健康障害を引き起こすおそれがある場合は直ちに必要な措置を講じます。
また、職場巡視を行った結果については記録と保管が必要になります。
職場巡視の要点
職場巡視における産業医の心構えとして、漫然と巡視を行うだけでは、改善につながらないおそれがあります。よって、チェックリスト(記録票)を活用することが効果的です。
チェックリストの準備する際には、前任者のものを確認する、職場の衛生管理者等と相談するなどして、事前に重点事項を記載しておくことで見落としを少なくすることができます。
職場の人員構成や作業内容、作業環境測定結果、健康診断の結果などの情報を事前にキャッチアップしておくことで、職場巡視の際に課題を発見しやすくなるでしょう。
また、職場の環境は絶えず変動しているものと考えておきます。特に、非定常作業が発生する場合は注意して巡視を行ってください。
■職場巡視で使用するもの職場巡視を行う際、携行しておきたい主なものは以下の4点です。業種や作業環境にあわせて、携行品を選ぶようにしましょう。
- 1.チェックリスト
- 2.照度計、騒音計などの測定機器
- 3.カメラなどの記録機器
- 4.作業服、ヘルメット、安全靴など(主に製造業)
- 照明:厚生労働省の「VDTガイドライン」を参考にする
- 騒音:プリンター、スピーカーなどの音量は大きすぎないか
- 水質基準(給水・排水):水道法第4条に適合しているか
- 廃棄物:ごみなどが指定の場所に廃棄されているか
- トイレ:個室、手洗い場の設備が事務所則に適合しているか
- 更衣室、休憩室:プライバシーの保護状態は適切か
- 救急用具、消化器、避難経路:緊急時に対応可能な常態か
巡視のポイント
一般的なオフィスでは、事務所則に沿って巡視を行い、主に以下の点を確認します。
※参考:厚生労働省「ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました」
製造業などでは上記の確認事項のほか、化学 物質などの有害因子について把握します。その際は「化学 物質安全データシート(SDS)」を活用し、毒性などを事前に確認してください。
職場巡視を終えたら
さいごに職場巡視の事後措置についてです。巡視後は衛生委員会の構成員等に対して結果のフィードバックと改善が必要な点を提示します。
また、次回の職場巡視では、どの程度まで改善されたかという視点でチェックするようにしてください。
職場巡視を単なる形式的な活動にせず、産業医として労働者の安全・健康を守るための業務として取り組みましょう。