1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. 転職ガイド
  4. 企業(産業医・MD・社医)
  5. 産業医が知っておきたい「衛生委員会」とは
企業(産業医・MD・社医)

産業医が知っておきたい「衛生委員会」とは

2024年3月21日

企業における産業保健活動の主軸となる「衛生委員会」。 衛生委員会は活動を推進するための意思決定を行う場でもあるため、産業医と企業の双方にとって重要です。 本記事では、「衛生委員会とは?」という基礎的な知識から、委員会にて求められる産業医の役割についても紹介していますので、ぜひチェックしておきましょう。

衛生委員会の基礎知識

衛生委員会イメージ

まずは衛生委員会についてです。

衛生委員会とは、労働者と使用者そして産業医などのメンバーで構成される委員会のことで、1か月1回程度開催されることが一般的です。

衛生委員会の設置と適切な運営は法律で定められており、企業にとって義務となっているため、産業医であれば必ずと言っていいほど関わることがあります。

この衛生委員会では、職場における衛生状態の報告・情報共有が行われたり、産業医による衛生講話が実施されたり、今後の産業保健活動の方針策定などが行われます。

なお、衛生委員会は事業主と従業員が条件交渉等を行う場ではありません。あくまで従業員が安全かつ健康的に働くための討議の場として位置づけられます。

そこで産業医は医学の専門家という立場から助言を行い、企業の活動に寄与できるよう努めましょう。

【参考】厚生労働省「職場のあんぜんサイト」

衛生委員会を構成するメンバーと役割

続いて衛生委員会を構成するメンバーについてです。構成員の選出についてもルールがあるため注意が必要であり、一般的に以下のような人物で構成されます。

  • 議長(総括安全衛生管理者等)
  • 衛生管理者(人事担当者等)
  • 産業医
  • 各部署から選出された複数のメンバー など

1.議長

衛生委員会の議長を務めるのは、統括安全衛生責任者や事業の実施を統括管理する人等が挙げられます。議長が司会進行を行うことが多いです。

2.衛生管理者

衛生管理者は、企業等において衛生全般の管理を担う有資格者のこと。従業員50人以上の事業場では衛生管理者を選任する義務があり、この衛生管理者が産業医と企業との間で窓口の役割を果たしているケースも多いです。

3.産業医

医師免許および産業医の認定資格を持ち、専門家の立場から職場の安全・健康に関するアドバイスを行います。また、衛生講話等を行うこともあります。

4.各部署から選出された複数のメンバー

その他のメンバーについては、事業者から指名されるなどして選出された人物が衛生委員会の構成員として参加し、委員として積極的に発言等を行うこと、委員会を活性化することも重要になります。なお、産業医等を除く衛生委員会のメンバーは1~2年悌夫で入れ替わることが多いと言われています。

衛生委員会の審議内容

衛生委員会では、従業員の衛生に関する課題の評価・対策について審議が行われます。具体的な審議内容は以下のとおりです。

  • 1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
  • 2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
  • 3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
  • 4. 衛生に関する規程の作成に関すること。
  • 5. 危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置のうち、衛生に係るものに関すること。
  • 6. 安全衛生に関する計画(衛生に係る部分)の作成、実施、評価及び改善に関すること。
  • 7. 衛生教育の実施計画の作成に関すること。
  • 8. 化学物質の有害性の調査並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
  • 9. 作業環境測定の結果及びその結果の評価に基づく対策の樹立に関すること。
  • 10. 定期健康診断等の結果並びにその結果に対する対策の樹立に関すること。
  • 11. 労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置の実施計画の作成に関すること。
  • 12. 長時間労働による労働者の健康障害の防止を図るための対策の樹立に関すること。
  • 13. 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策の樹立に関すること。
  • 14. 厚生労働大臣、都道府県労働局長、労働基準監督署長、労働基準監督官又は労働衛生専門官から文書により命令、指示、勧告又は指導を受けた事項のうち、労働者の健康障害の防止に関すること。

【参考】厚生労働省「安全委員会、衛生委員会について教えてください」

衛生委員会における産業医の役割

衛生委員会における産業医の役割は、職場環境や労働災害、メンタルヘルス対策などのさまざまな課題や相談に対して、医学の専門家として指導・助言を行うというものです。

それだけでなく、衛生講話を通じて、委員に医学知識の啓発や教育を行い、事業者全体の健康意識を高めることも大切な役割です。

産業医の衛生委員会の参加については法で定められているわけではありませんが、産業医が参加することで議論の活性化や方針の策定などがスムーズに進むことが考えられます。

ちなみに、衛生委員会に産業医が出席できなかった場合には、衛生委員会の議事録を追って確認しておくことが大切になります。

衛生講話のテーマについて

衛生委員会イメージ2

衛生委員会では、産業医による衛生講話を行うケースが一般的です。

衛生講話のテーマは企業側が選ぶこともあれば、企業と産業医が一緒になって検討することもあるでしょう。

テーマは社内の事情や季節に合わせて選ばれることが多いのですが、医師によっては専門科ではないテーマになることもありますので、事前に情報収集しておくことが大切になります。

以下はよく取り上げられる衛生講話のテーマの一例です。

  • 1月:腰痛予防
  • 2月:活習慣病予防
  • 3月:労災対策
  • 4月:禁煙について
  • 5月:メンタルヘルスケア
  • 6月:食中毒予防
  • 7月:熱中症対策
  • 8月:過重労働対策
  • 9月:ハラスメント対策
  • 10月:ストレスチェックの活用
  • 11月:感染症予防
  • 12月:がん予防・検診について

衛生講話のテーマはどのように選ばれるのか

衛生講話で取り上げるテーマは上に述べたように季節に合ったものを選ぶこともあれば、社会で話題になっているテーマが取り上げられることもあります。

例として、パワーハラスメントはニュースで取り上げられることも多いと思いますが、職場環境改善という観点から選出することが効果的です。

各種のハラスメントが及ぼす身体的・精神的な影響について産業医から講話を行い、職場におけるハラスメント対策につなげることも大切になります。

また、メンタルヘルス不調対策は多くの企業で興味関心が高いテーマですので、さまざまな切り口で講話が行われるケースも多いです。

社内の実情にあわせて衛生講話のテーマが決まる

衛生講話では、その企業が抱えている課題をテーマにすることで職場改善につなげることが大切になります。

例えば、喫煙率が高い職場では禁煙に関する衛生講話を行うこと。

健康診断の受診率が低い場合では健診の重要性等について講話を行うことが効果的です。

そして、ストレスチェックの結果や健康診断の結果が思わしくない場合、安全衛生委員会の議題として討議することもあります。

また、社内の課題については現場で働く従業員の方が課題を実感しているケースも多いでしょう。

ですので衛生講話のテーマを社内公募することもあるようです。

衛生委員会を有効的な場にするために

衛生委員会の役割と運営について紹介しました。

産業医として、衛生委員会を有効的な場にしていくためには、構成メンバーと連携し社内の健康課題に向き合うことが大切になります。

産業医には専門家としての役割を求められていますので、職場のヘルスリテラシーが向上するよう、労働衛生に関する情報収集を行うことも行っていきましょう。

産業医としてのキャリアをご検討中の先生へ

エムスリーキャリアでは産業医専門の部署も設けて、産業医サービスを提供しています。

「産業医の実務経験がない」
「常勤で産業医をやりながら臨床の外勤をしたい」
「キャリアチェンジをしたいが、企業で働くイメージが持てない」

など、産業医として働くことに、不安や悩みをお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。

エムスリーキャリアには、企業への転職に精通したコンサルタントも在籍しています。企業で働くことのメリットやデメリットをしっかりお伝えし、先生がより良いキャリアを選択できるよう、多面的にサポートいたします。

この記事の関連記事

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医が知っておきたい「意見書」の書き方入門

    本記事では、産業医業務の要でもある「意見書」の基礎知識と書き方のポイントについて解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    専門科目外の医師でも産業医になれる?

    「専門科目外だから産業医になるのは難しいのでは?」とお考えの先生に、働き始めるにあたってよくある疑問と解消法についてお伝えします。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    タイトル:「スポット産業医」とは?働き方とはじめ方

    企業が必要に応じて単発で依頼する産業医業務「スポット産業医サービス」は、空いた時間を有効活用でき、予防医学や社会貢献にもつながる魅力的な働き方です。本記事では、医師がスポット産業医として働くメリットや、必要なスキルについて詳しく解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    〈第2回〉突然提出された療養が必要とする診断書をどう考え、どう対応するか

    〈連載第2回〉突如として提出される休職の診断書。それを取り巻く背景と人事・産業医の対応について、精神科クリニック院長であり産業医として職場のメンタルヘルスに向き合い続ける吉野聡先生が解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    〈第1回〉ストレスチェック制度導入から10年。人事と産業医はどのようにして「マンネリ化」を乗り越えるか

    〈連載第1回〉制度開始から10年が経つストレスチェック。人事と産業医はどのようにして形骸化を防ぎ有効活用すべきでしょうか。精神科クリニック院長であり産業医として職場のメンタルヘルスに向き合い続ける吉野聡先生が解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    はじめての産業医「衛生委員会」とは?医師としてのかかわり方

    本記事では、衛生委員会の基礎知識をはじめ、産業医としてのかかわり方のポイントを紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    はじめての産業医「職場巡視」とは?

    職場巡視は、産業医の重要な業務の一つであり、労働者の健康と安全を守るために欠かせない活動です。 本記事では、職場巡視の法的義務と巡視で確認すべきポイントを紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    はじめての産業医「労働衛生の3管理」とは

    本記事では「労働衛生の3管理」の概要について紹介しています。従業員の安全と健康を守るため、産業医が取り組むべき基本的な柱となりますので、この機会に再確認しておきましょう。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医が身につけたいビジネスマナー

    産業医として企業で働く際に知っておきたいビジネスマナーについて紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医面談で従業員が泣いてしまったら?

    産業医面談の際、従業員が泣き出してしまうような場合の対応例を紹介しています。

  • 企業訪問ガイドブック 今ならメルマガ登録で
    企業訪問ガイドブック
    プレゼント!
    産業医求人を受け取る(登録1分)

    人気記事ランキング

    この記事を見た方におすすめの求人

    常勤求人をもっと見る