一定規模を超える事業場では、衛生委員会の実施が法令で義務付けられています。 衛生委員会は、労働者の健康と安全を守るために重要な役割があり、産業医からも積極的な介入が求められる場です。 本記事では、衛生委員会の基礎知識をはじめ、産業医としてのかかわり方のポイントを紹介します。
衛生委員会の法的義務と目的
従業員50名以上の事業場においては、月に1回以上の頻度で衛生委員会を実施することが事業主に義務付けられています。
また、産業医は委員として携わる必要があります。産業医の出席は義務ではないものの、指導や助言、コミュニケーションをとるための貴重な機会となりますので、参加を求められるケースが多いです。
衛生委員会のメンバーは、統括安全衛生管理者(議長)や衛生管理者、人事担当者、衛生の経験を持つ委員で構成され、その目的は、従業員の労災防止や健康増進について調査・協議することにあります。
よって、産業医は積極的に医学的な見地から意見を述べ、改善に向けて協力しましょう。
衛生委員会で話し合うこと(審議事項)
衛生委員会において審議する内容は法令により定められており、主な内容は以下の通りです。
- 1.労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
- 2.労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
- 3.労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
- 4.前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項 出典:労働安全衛生法第18条
- 職場巡視:巡視で把握した課題について、それが安全・健康に対しどの程度の影響を及ぼす可能性があるのか。また、対策を講じる方法やその効果について伝える。
- 健康診断、ストレスチェック:受診率や有所見率を全国の平均値と比較し、職場の状態を分析します。その上で、保健指導や健康教育といった改善アプローチに取り組みます。
- 長時間労働:長時間労働者の発生状況だけでなく、部署での傾向などを分析します。その上で過重労働の危険性について解説し、改善策(ノー残業デーの徹底など)を提案します。
- 衛生講話(衛生教育):労災防止や健康増進に関する講話を行います。取り上げるテーマについては衛生担当者等と相談して決めることが多く、職場の課題に関連するもの、シーズンに合ったものから選ばれることが一般的。
職場においては、法改正や新たなガイドラインの策定など、常に最新の項目に対応していく必要があります。そのため、衛生委員会では、上記の基本事項に加えて、その時々に合わせた内容についても議論を行います。
産業医としての関わり方
衛生委員会の審議事項は多岐にわたります。産業医の関わり方としては、医学的見地から助言あるいは指導を行うことが基本になります。
産業医は「中立公正」の立ち位置を心がけます。事業者側にも労働者側にも寄りすぎない立場から、職場の健康と安全の確保を最優先にします。
衛生委員会の場で衛生講話(衛生教育)を行うこともあります。そのため、委員会に臨む際は事前の準備をしておきましょう。
衛生委員会の審議事項と産業医の対応例としては、次のようなことが挙げられます。
まとめ
衛生委員会の定期的実施は法令で定められた義務であり、産業保健活動において重要な役割を担っています。
そのため、委員会を形式的なものに留めず、産業医は医学の専門家としての立場から助言を行い、改善に繋げられるよう、実効性を高めていくことが求められます。