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産業医面談で従業員が泣いてしまったら?

2025年6月10日

産業医面談の際に従業員で泣き出してしまう状況は、抱えている問題が深刻である可能性を示唆しています。 本記事ではこうしたケースに直面した際、産業医としてどのように対処すべきか要点を紹介します。 注:本記事の内容はあくまで一般的なものであり、また医療的な側面が強い対応にもなります。個々の状況に合わせて注意し、柔軟に対応することが重要です。

従業員が泣いてしまう主な理由

産業医面談の場で従業員が泣いてしまう理由には様々なものが考えられますが、主な理由としては、過重労働や人間関係の悩み、仕事内容への不満、ハラスメントなどが考えられます。

これらの精神的な負担が蓄積している場合、面談の場で感情が溢れ出してしまうことがあります。

また、すでに精神疾患を抱えている場合、面談が症状のトリガーとなることもあるでしょう。その他にも、配置転換や異動といった環境の変化や、プライベートの出来事が原因になっているケースも考えられます。

重要な注意点

最も注意が必要となるのが自殺のおそれがあるようなケースです。

面談時に従業員が自殺をほのめかしたり、希死念慮を抱いている場合は、自殺リスクを慎重に評価する必要があります。自殺リスクが高いと判断した場合は、速やかに医療機関への受診を勧め、必要に応じて緊急的な対応を検討してください。

対応例①:傾聴を行う

まずは従業員が安心して話せるように、落ち着いた雰囲気を作ります。会話の際も相手の言葉を遮らずに最後まで話を聞くようにします。その際には共感的な態度を示すことも大切です。

従業員の気持ちを汲んだ言葉を伝えるよう心がけてください。ただし、安易な励ましや同情は避け、あくまで気持ちに寄り添う姿勢が大切です。

また、従業員の表情や態度に注意します。目を見て話を聞き、相槌を打つなど、相手からの言葉だけでなく、表情や態度でも共感を示しましょう。

対応例②:情報収集と状況把握

情報収集と状況を把握するために、従業員が泣き出してしまった原因を尋ねます。ただし、無理に聞き出すことは避け、話せる範囲で構わないことを伝えます。

その上で職場環境、業務内容、人間関係、健康状態、家庭環境など、考えられる要因について、従業員が抱えている問題について尋ねます。

また、過去の産業医面談の記録がある場合は事前に確認し、今回の状況との関連性を探ります。

対応例③適切な支援とアドバイス

従業員の状況に応じて、社内の相談窓口(人事・上司など)や社外の専門家(カウンセラー、精神科医、地域の相談機関など)を紹介しましょう。

職場環境が原因となっている場合は、人事や上司と連携し業務内容の見直しや労働時間の調整、人間関係の改善など、職場環境の改善を検討します。

また、必要に応じて精神科や心療内科への受診を勧めましょう。受診を促す際は、治療の必要性を丁寧に説明し、受診への抵抗感を和らげるように努めます。

面談内容の記録と情報共有、フォローアップ

面談後は従業員の状況や実施した支援内容などを詳細に記録します。

その上で、必要に応じて人事、上司、産業保健スタッフなど、関係者と情報共有を行いましょう。ただし、個人情報の保護に十分配慮し、従業員の同意を得てから情報共有を行うようにします。

その後は従業員の状況を定期的に確認し、追加面談などのフォローアップを行います。

また、産業医自身がスキル面で不安がある、メンタル関連の判断に迷う場合は、産業医としての知見を向上させるために、研修や勉強会に参加してみてください。

意見書・報告書の作成例については厚生労働省の「長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル」が参考になりますので、確認しておきましょう。

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