医療機関と企業では求められるスキルが異なりますが、ビジネスマナーもそのひとつです。 産業医として働く際には、企業で必要とされるビジネスマナーをあらためて理解し、実践することで円滑な人間関係を築き、信頼を得ることにつながります。
臨床医と産業医、目的の違い
まずは臨床医と産業医について、仕事の目的や対象者などの違いを確認しておきましょう。
病院・クリニック等の医療機関では、治療や診断といった医療行為が中心であり、当然ながら主な対象者はけがや病気を患っている方です。
一方の企業では医療行為は行いません。労災防止や健康障害対策などの予防活動がメインとなり、対象者は基本的には健康な人です。
また、企業の目的は利益の追求や生産性の向上です。従業員の健康は、その目的達成のための重要な要素として捉えられます。
よって、労働衛生に関する法令の遵守はもちろん、いかに事業を継続・発展させるかというビジネスの視点が常に存在します。
①時間感覚の違い
緊急性の高い医療現場では、数分、数秒の判断が求められることもあります。それらの事情により、予約診療であっても患者の状況によっては時間が前後することも珍しくありません。
一方、企業では会議やアポイントメントなど、時間厳守が徹底されます。わずかな遅刻も相手の時間を奪う行為とみなされ、信頼を損ねる可能性がありますので、訪問が予定通りにならない場合などは事前に連絡を入れる等、適切なコミュニケーションが必要です。
②コミュニケーションスタイルの違い
医療機関では医師と患者、医師と看護師などの役割が明確で、指示・報告・相談という縦のラインがはっきりしていることが多いです。また、専門用語が日常的に使われます。患者に対しては、病状説明など、共感と分かりやすさが求められます。
企業では、上下関係だけでなく部署間の連携、取引先との交渉などさまざまな対人関係が存在します。よって、正しく敬語を使い論理的な説明や簡潔的な報告などが重視されます。
また、医療に関する専門用語は伝わらない場合も多いため、なるべく平易な言葉に置き換えることも大切ですし、一般的なビジネス用語を身に着けておくこともおすすめです。
③服装・身だしなみの違い
医療機関では白衣やスクラブが一般的ですが、企業ではスーツやオフィスカジュアルが基本になります。なお、製造業などの場合は制服を着用するケースもあります。
企業の業種や社風によって許容範囲は異なりますが、TPOに合わせた清潔感のある服装が求められます。
産業医が身につけておきたいビジネスマナー
前述した文化の違いを踏まえ、産業医として働く際に身につけておきたいビジネスマナーを紹介します。
①あいさつと立ち居振る舞い
職場で働く人たちに信頼感や安心感を持ってもらうためにも、あいさつは欠かせません。笑顔を心がけ、相手の目を見て明るくあいさつをすることは、ビジネスマンの基本です。
会釈、普通礼、丁寧礼など、状況に応じたお辞儀の使い分けも覚えておきましょう。
②言葉遣いと姿勢
企業では基本的に丁寧語、尊敬語、謙譲語を正しく使い分けることが求められます。「〜です」「〜ます」といった丁寧語を基本としつつ、役職者には尊敬語を用いるなど、使い分けましょう。
産業医面談などのシーンでは傾聴・共感を意識して、相手に寄り添う言葉遣いを行います。
情報共有も非常に重要です。状況の変化があった場合や、不明点がある場合は、速やかに産業保健の担当者や関係者に報告・連絡・相談を行いましょう。
③名刺交換
産業医として活動する場合、必ず名刺を用意しましょう。名刺入れも用意し、折れたり汚れたりしないよう丁寧に扱います。
名刺交換の基本は目下の者から先に差し出します。また、相手の名刺を受け取ったらすぐにしまわず、着席するまで机の上に置いておくなど、基本的な名刺交換の作法を身につけましょう。
④ビジネス文書・メール作成
ビジネスメールでは件名で内容を明確にします。また、宛名や署名の記載を行い、CCとBCCを正しく使い分けるなど、ビジネスメールの基本ルールを守りましょう。
メールの文章は要点を明確に伝えることを意識しましょう。箇条書きで記載することも有効です。
また、メールはなるべく早く返信することを心がけます。すぐに回答できない場合はその旨を伝えるようにして、返信を先延ばしにしないようにします。
まとめ
産業医は、医療の専門家であると同時に、企業という組織の一員として活動します。そのため、企業で働く人の文化を理解し、それに合わせたビジネスマナーを身につけることが大切です。
適切なビジネスマナーは良い人間関係を築き、信頼される産業医として、より大きな貢献ができるようになるでしょう。
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