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企業(産業医・MD・社医)

【産業医という働き方】産業医の役割・業務内容

2025年5月22日

産業医には働く人の安全と健康を守るという役割があります。 本記事では、非常勤(嘱託)産業医の役割のほか、現状と働き方について解説します。

産業医の働き方(非常勤・嘱託)

非常勤(嘱託)産業医の働き方を見てみると、病院やクリニックで働く傍ら、月に1回から数回の頻度で企業等に訪問するケースが多く、また1回の訪問あたり1〜数時間の産業医業務を行うことが一般的です。

なお、週の労働時間が32 時間を超える場合は常勤、それ未満の場合は非常勤医師として取り扱われます(参考:厚生労働省医政局長通知「医療法第 25条第 1項の規定に基づく立入検査要綱」)

産業医の働く場所は、基本的に労働者50人以上規模の事業場です。 事業場(事業所ともいいます)の定義は「企業」ではない点が重要です。 事業場とは、端的にいうと職場の単位と言い換えることができ、例えば「本社には50人の労働者がいるけれど、支社には30人しか働いていない」といった場合、同じ企業であっても本社には産業医選任が必要であり、支社での選任義務は無いということになります。

産業医の選任義務と事業場の規模の関係は以下の表になっており、従業員数が1,000名以上では専属産業医を選任する必要があります。

産業医の役割と業務内容

産業医の主な役割は企業等において働く従業員の心身の健康を守ることです。 労働災害だけでなく近年ではメンタルヘルス対策など、産業医に求められる役割も多様化してきていると言われています。

従業員が安全でかつ健康的に働ける職場環境となるように、医師として専門的観点から指導や助言を行うことが求められています。

産業医の業務内容は労働安全衛生法・労働安全衛生規則によって定められているものや、職場の健康維持に必要な活動まで様々なものがあります。主なものは次の7つです。一つずつ確認しておきましょう。

  1. 衛生委員会への参加
  2. 職場巡視
  3. 労働衛生教育の実施
  4. 健康診断結果の確認と就業判定の実施
  5. 健康相談の実施
  6. ストレスチェック
  7. 休職者・復職者などへの面談

1.衛生委員会への参加

産業医の選任義務が発生する事業場では、同時に「衛生委員会」と呼ばれる組織を構成し、職場の健康管理について定期的に討議することが求められています。 そして、その衛生委員会の構成員として、産業医が参加することが望ましいとされているため、企業等では衛生委員会のメンバーに産業医が入っていることが一般的です。

委員会のメンバーから共有された情報をもとに、産業医は医師という立場から職場の健康課題等について助言を行うようにします。 また、企業によっては産業医による衛生講話を実施しているケースもあります。

2.職場巡視

職場巡視とは読んで字のごとく職場の見回りを行うことです。 ただ職場を見て回るだけでなく、産業医(医師)という立場から健康障害リスクをチェックする必要があります。

例えば、「オフィスの光量は足りているか」「大きな騒音が発生していないか」「転倒・転落の危険性はないか」など、従業員の安全や健康を守るという視点で巡視を行います。 職場巡視は労働安全衛生規則により毎月1回以上、もしくは2ヶ月に1回以上の実施が義務付けられています(労働安全衛生規則 第15条など)。

3.労働衛生教育の実施

労働衛生教育は衛生講話という形で実施されることが一般的で、前述したように衛生委員会の場で衛生講話を行うケースも多いです。 労働災害やメンタルヘルス不調等を防ぎ、心身ともに健康的な職場をつくるためには、従業員のヘルスリテラシーを向上させることも欠かせません。

衛生講話とは、産業医が企業と従業員に対して行う研修のようなもので、「熱中症予防」「メンタルヘルス不調対策」「長時間労働の危険性」など、様々なテーマで行われます。 労働衛生教育は法令によって実施が義務付けられている業務ではありませんが、事業場もしくは産業医自らが必要と判断したときに実施します。

4.健康相談の実施

産業医が行う3つ目の業務内容は、健康相談の実施です。 従業員から申し出があった場合、産業医は個別で健康相談を受け、心身の健康に関する不安や悩み等を聞く役割があります。 産業医は従業員の話にしっかりと耳を傾け、指導・助言を行います。

5.健健康診断結果の確認と就業判定の実施

健康診断結果の確認と就業判定を行うことも産業医の業務のひとつです。 定期健康診断は年に1回の受診義務があります。 産業医はその健康診断の結果を確認し、従業員の就業の可否を判断することが求められています。

6.ストレスチェック

ストレスチェックとは、従業員の精神的不調を発見し速やかに対処することを目指して行われます。 企業には年に1回以上、このストレスチェックを実施する義務があります。 ストレスチェックにて「高ストレス」と判断された従業員に対しては、産業医面談などを行うことがあります。 ストレスチェックの実施については以下のマニュアルも参考にしましょう。

【参考】厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

7.休職者・復職者などへの面談

従業員の休職時と復職時には産業医が面談を行います。 メンタルヘルス不調やその他疾患等を理由に休職を余儀なくされてしまう従業員もいるため、産業医は個別で面談を行い、心身の状況を確認します。必要に応じて就業制限や休職を勧めたり、企業に報告したりします。

また、面談では医療機関の受診を促すのも産業医としての役割の1つです。休職者に対しては、復職について判定することもあります。

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