1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. ノウハウ
  4. インタビュー
  5. 付加価値を身に着けた心臓血管外科医(中編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3
インタビュー

付加価値を身に着けた心臓血管外科医(中編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

2019年3月10日

高度な技術を要する心臓血管手術を年間300件以上もこなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。海外で心臓血管外科医としての実績を積んだ後、天野篤先生と出会ったことがひとつの転機になります。中編では、天野先生から受けた影響や、ナンバーワン医師として患者と関わる際に大事にしていることを伺いました。(取材日:2018年11月19日)

天野先生から教わった、スーパードクターになるための秘訣

—留学を終えて東京女子医科大学で助教授を経た後、順天堂大学の天野篤先生の元へ移られたのは何かきっかけがあるのでしょうか。

2000年前後から、天野先生たちが心臓を動かしたまま手術を行う「オフポンプ手術」という革新的な手術に取り組み始めたからです。それまでは人工心肺を使ったオーソドックスなバイパス手術を行っていたのですが、次第にオフポンプの手法は世界的な潮流になっていきました。今振り返ると、その潮流に乗れた人と乗れなかった人がいたと思います。

当時、私は30代の若手。女子医大の看板としてオフポンプによるバイパス手術を始めてしばらくした時に、天野先生から「バイパスだけやっていてはだめ、いろんな手術をやらなきゃ。うちに来なさい」とお誘いをいただいたのです。

—当時、天野先生はどのような存在だったのでしょうか。

天野先生は割と異端児でした(笑)。天皇陛下の手術をする前でしたし、順天堂大学の教授とはいえ民間病院出身だったので、学会からは違うフィールドの人とみなされていたんです。でも私は、短期間に患者を集めて、内科医から「バイパスだったら天野先生」とものすごく評価されている状況に「これはすごいな!」と感銘を受けました。当時は女子医大で自ら術者として執刀する立場にありましたが、天野先生のような新しい風がどうやって患者を集めているのかを知りたかった。順天堂大学に移る際、いろんな人から反対されましたが、唯一「よかったね!」と賛成してくれたのは、私をオーストラリアへ導いてくださった南淵先生でした。

―その後、天野先生からはどのようなことを学びましたか。

患者さんや内科医に対して「付加価値をつけ、人よりも違う技量を見せつけて、圧倒的な信頼を得ること」が大事だと気づきました。

順天堂大学ではどっぷりと臨床に浸かり、天野先生に無茶ぶりされましたけど(笑)とても充実した3年間でしたね。天野先生と一緒に手術に入ることはほとんどなく、隣の手術室でそれぞれ執刀していましたが、さまざまな影響を受けました。たとえば、医師も立派なサービス業だということ。手術が上手い先生はいくらでもいますが、アピール力を兼ね備えている人はなかなかいない。それが「付加価値をつけ、人と違う技量を見せつける」というところにも通じるように、医師として自ら売りだす術を知っていると、天野先生のようなスーパードクターになれる可能性が高まるのだろうと思います。

ナンバーワンの医師として、自分の腕で患者さんを集める

—天野先生から大きな影響を受けた後、埼玉医科大学の教授に就任されてから考え方に変化はありましたか。

順天堂大学では天野先生に次ぐナンバー2の立場でしたが、埼玉医大ではナンバー1を担わざるを得なかったので頼りになるのは自分の腕だけでした。埼玉県は私にとって未開の地で、行ってみたら申し訳ないけれどすごい田舎。こんな所でどうやって患者を集めればいいのかがわからなかったので、最初は車に乗ってあいさつ周りから始めました。

その後は患者を一人ひとり丁寧に診て「2本足で返す」ことをモットーに、同志の医師4人で当直も手術もしながら治療をこなしていきました。そうすると少しずつ評判が上がって、6~7年目で天野先生がいる順天堂大学を抜き、日本で一番心臓手術をする大学病院になっていました。

ここまで成長するのは大変でしたがラッキーだったのは、埼玉県は人口730万人という国内でも5番目の密集地域なのに、病院と医師の数がものすごく少なかったこと。埼玉県の患者さんは東京都の医療機関に行く傾向がありますが、それを食い止めたら結構な人数がいるんです。そのため、時には病院が所有している救急車に乗って患者を迎えに行ったこともありました。「待っていたって患者は来ない、だから救急車を自由に使わせてください」と訴えて(笑)。

—患者さんとの関わり方で、心がけていることはありますか。

私の名刺には携帯番号を記載して、患者さんには「何かあったら電話してください」と渡しています。そのくらい医師という仕事に没頭しないと心臓血管外科医はできません。今でも毎日手術をする前に患者さんの顔を見て、終わった後は患者さんの傷をチェックする回診が欠かせません。

その時、何かを訴えたいように見える人には立ち止まって診てあげたり、「Face to Face」でそれぞれの患者さんに応じた接し方をしたりするように心がけています。手術や痛みに弱い方もいますからね。「病は気から」というように、患者さんを安心させて治療への自信を持たせると術後の回復も違うんですよ。

すでに世界の潮流に乗りバイパス手術を実践していた新浪先生は、天野篤先生との出会いによって医師のあり方を再認識し、一流の外科医としてさらなる発展を遂げました。最近では国内の活躍にとどまらず、海外に活動を広げ精力的に医療支援活動を行っています。後編では、海外での医療支援活動の実情や展望、そして多数の手術をこなす新浪先生が集中力を維持するための習慣をご紹介します。

今後のキャリア形成に向けて情報収集したい先生へ

医師の転職支援サービスを提供しているエムスリーキャリアでは、直近すぐの転職をお考えの先生はもちろん、「数年後のキャリアチェンジを視野に入れて情報収集をしたい」という先生からのご相談も承っています。

以下のような疑問に対し、キャリア形成の一助となる情報をお伝えします。

「どのような医師が評価されやすいか知りたい」
「数年後の年齢で、どのような選択肢があるかを知りたい」
「数年後に転居する予定で、転居先にどのような求人があるか知りたい」

当然ながら、当社サービスは転職を強制するものではありません。どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

この記事の関連キーワード

  1. ノウハウ
  2. インタビュー
【記事特集】医師の転職カルテ
キャリアの悩みに、コンサルタントが答えました


・いつ、どうやって転職したらいいのかわからない
・新たな環境で働きたいが、不安
・育児や介護、持病との両立はできる?

【詳しくはこちらから】

この記事の関連記事

  • インタビュー

    男性医師4人が時短勤務。亀田ファミリークリニック館山院長に聞く“快諾”の理由とは?―パパ医師の時短勤務(3)

    亀田ファミリークリニック館山(常勤換算医師数16人) は、家庭医診療科医長の岩間秀幸先生を皮切りに、家事や育児を理由とした男性医師の短時間勤務が続いています。2020年は、4人目の男性医師の時短勤務が始まる予定です。クリニック管理者として見ると、マンパワーが落ちるという側面も持つ時短勤務ですが、岡田唯男院長は、岩間先生から最初に時短勤務の相談をされたときどのように感じたのでしょうか。社会的にはまだ多いとは言えない男性医師の時短勤務を快諾する理由とは?

  • インタビュー

    社員の4割がリモートワークの会社で、産業医は何をする? ―産業医 尾林誉史先生×企業の語り場 vol.3

    株式会社Kaizen Platformは2013年の創業時から従業員のリモートワークを実施。日々従業員の4割はオフィスに出社していません。そうした環境下で人事・労務スタッフはどのようにアプローチするのでしょうか? HR部部長の古田奈緒氏と、同社の産業医を務める尾林誉史先生に実情を伺いました。

  • インタビュー

    産業医10名を1拠点に集約!産保先進企業の働き方―日立健康管理センタ産業医鼎談(後編)

    産業医歴1年目の若手から経験30年超のベテランまで、常勤医10名ほどが集まる日立健康管理センタの産業医、林先生・渡辺先生・朝長先生の3名へのインタビュー後編。

  • インタビュー

    臨床との違いは?常勤産業医の働き方―日立健康管理センタ産業医鼎談(前編)

    産業医歴1年目の若手から経験30年超のベテランまで、常勤医10名ほどが集まる日立健康管理センタ。医師のキャリアとしては多くない「常勤産業医」の働き方について、同施設の産業医3名に聞きました。

  • インタビュー

    42歳で食事本を上梓し相次ぐ講演依頼、開業へ―医師による、医師のための健康ライフハックVol.4(後編)

    ヒトでのエビデンスに裏打ちされた食事術を解説した本『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』(冬樹舎、2018年)の著者である稲島司先生。後半では、著書の担当編集者である佐藤敏子さんのコメントを交えながら、本を上梓したことで変化したキャリアや今後の目標について語っていただきます。

  • インタビュー

    循環器内科医師が実践、エビデンス重視の食事術―医師による、医師のための健康ライフハックVol.4(前編)

    巷に溢れる数々の「健康的な食事術」。玉石混合な情報が飛び交う中、エビデンスに裏打ちされた食事術を紹介する話題の本があります。その名は『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』。今回は、著者であるつかさ内科院長の稲島司(いなじまつかさ)先生にインタビューを実施しました。

  • インタビュー

    酒好き肝臓専門医が一押しする飲み方(後編)―医師による、医師のための健康ライフハックVol.2

    肝臓専門医として『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修し、お酒の飲み方のスペシャリストとしても注目を集めている浅部伸一先生(アッヴィ合同会社)。2017年から外資系製薬会社の開発マネジメントを行うかたわら、地方での訪問診療も精力的に行っている異色かつバイタリティ溢れる医師です。後編では二拠点生活から見えてきた地方と都市の治療の違い、そして健康を維持しながらお酒と付き合うためのポイントを伺いました。

  • インタビュー

    お酒をライフワークにした肝臓専門医(前編)―医師による、医師のための健康ライフハックVol.2

    肝臓専門医として『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修し、お酒の飲み方のスペシャリストとしても活躍されている浅部伸一先生(アッヴィ合同会社)。消化器内科としての研さんを積んだ後、国立がんセンターやカリフォルニア留学で肝炎ウイルス・免疫の研究活動を行い、2017年からは外資系製薬会社の開発マネジメント職へ転身しました。前編では、肝臓専門医になった経緯から製薬業界に転出した理由について伺いました。

  • インタビュー

    心臓血管外科医が伝授!集中力を保つ術(後編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

    バイパス手術を中心に高度の技術を要する心臓血管手術を年間300件以上もこなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。国内で一流の外科医として活躍するかたわら、タイやミャンマーでも精力的に医療支援活動を行っています。後編では日本と東南アジアにおける医療の関わりや、日々難しい手術に従事している新浪先生が集中力を保つための秘訣を伺いました。

  • インタビュー

    「あいつは臨床ダメ」を覆した仕事術(前編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

    バイパス手術をはじめ、高度な技術を要する心臓血管手術を年間300件以上こなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。医学部卒業後は大学院で研究活動を続けながら、東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所外科に入局。その後も、アメリカやオーストラリアへ留学し、最先端技術に触れながら心臓血管外科医として腕を磨きます。前編では、心臓血管外科のスペシャリストになるまでの経緯を伺いました。

  • 人気記事ランキング