1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. ノウハウ
  4. インタビュー
  5. 「医師の技術の賞味期限、どんどん短く」―慶大・花田教授に聞く変革時代のキャリア論【前編】
インタビュー

「医師の技術の賞味期限、どんどん短く」―慶大・花田教授に聞く変革時代のキャリア論【前編】

2018年4月26日

時代の変化を映すかのように、既定路線にとらわれないキャリアを歩む医師が増えています。自分の可能性を広げ、充実した医師人生を築いていくために今、何をすべきなのか。今回はキャリアデザインという概念を国内に広めたことでも知られる慶應義塾大学の花田光世・名誉教授に、医師のキャリア形成の課題について聞きました。

 「医師のスキルの賞味期限は、どんどん短くなっていく」

―まず医療業界におけるキャリア形成のポイントについて、どのようにお考えでしょうか。

キャリア論では、自分の思いこみや既存の価値観、特定の見方などから自分を解放し、新たな可能性にチャレンジするプロセスをアンラーニングと言います。今後、医師の世界においては特に、アンラーニングできる人材が求められるようになると考えられます。

どういうことでしょうか。

医療業界は現在、大きな変革期にあります。たとえば一部の製薬会社の間では、そう遠くない将来、病気の治療法(外科を除く)は「4割薬、3割医療機器(放射線療法など)、2割再生医療・遺伝子治療」となっていくと予測されており、将来戦略に向けての危機感ともなっています。また、自己の幹細胞を採取・保存し、劣化した内臓の再生などに活用する治療も現実化に向け動き始めています。こうした医学の発展はもちろん、AIといったテクノロジーも日々進化を遂げている。

一方で、患者側のニーズも多様化しています。かつてであれば入院を余儀なくされていた、障がいという特性をもたれた方や介護支援が必要なご高齢の方々が自宅で暮らせるようになったり、企業における健康経営に注目が集まったりして、医師の活躍の場が、必ずしも医療機関だけにとどまらないという状況が生まれているのです。

キャリア論の分野では、こうした変化の大きな環境において価値ある人材として活躍し続けるためには、「非連続的成長」が重要だと指摘されています。非連続的成長とは、新しい価値観や体験を元に、自身の成長を促すこと。逆に「連続的成長」とは、過去からの延長線上にあるような成長のことです。従来は、そうした日々の積み重ね、特定の知識やスキルの研鑽、仕事の工夫を通じてキャリアアップを果たすという考え方が一般的でしたが、そうした連続的成長だけでは社会の変化に対応できなくなりつつあるのです。

―自分の専門性などを極める「連続性ある成長」を遂げつつ、新しい価値観に基づく非連続的な成長を繰り返していくことが重要だと。

そうですね。非連続的成長の重要性をわかりやすく説明しようとするとき、わたしは「賞味期限」の話をします。

たとえば、冷蔵庫に食べ物を保管していたとします。その食べ物の消費期限が切れている場合には口をつけないという人が多いと思いますが、ではこれが賞味期限切れだったらどうか。「まあいいか」と食べてしまうという人も多いのではないでしょうか。

今度はシチュエーションを変えて考えてみましょう。もし皆さんがスーパーマーケットに行ったとして、賞味期限切れの食べ物が置いてあるでしょうか?ありません。賞味期限切れの商品は棚卸しの際に処分され、商品としては売りにだされないからです。要するに、「賞味期限切れの商品は、個人としては食すかもしれないが、組織としてそれを提供することはしない」ということです。

医師に限らず、人間のスキルにもこうした「賞味期限」があります。時代遅れのスキル、いわば「消費期限切れ」のスキルが通用しないのは言うまでもありません。のみならず、時代遅れとまではいかなくとも、旬を過ぎているようなスキルは「賞味期限切れ」であり、賞味期限の切れたスキルしか持っていない人材は競争力が弱いということです。スーパーマーケットで賞味期限切れの商品が廃棄を余儀なくされることを思えば、まだ自分のスキルが賞味期限内であるうちに、新たなスキルを習得(非連続的成長)し、自分自身をアップデートさせることが重要なのは自明ですよね。

先ほど述べたように、昨今、医療業界の移り変わりは非常に激しい。その分、特定のスキルの賞味期限もどんどん短くなっていくので、固定観念にとらわれず、新たな知識を吸収するなどして仕事の幅を広げ続けていかなければならない。それが医師をとりまく現状なのではないでしょうか。

花田 光世
はなだ みつよ
一般財団法人SFCフォーラム代表理事、慶應義塾大学名誉教授

南カリフォルニア大学Ph.D.-Distinction(組織社会学)。産業能率大学教授、同大学国際経営研究所所長を経て、1990年より慶應義塾大学政策学部教授。企業組織、とりわけ人事・教育問題研究の第一人者。日本企業の組織・人事・教育の問題を研究調査、経営指導する組織調査研究所を主宰する。特に最近はキャリア自律プログラムの実践、Learning Organization の組織風土づくり、情報コミュニティの構築などに関する研究、企業での実践活動を精力的に行う。産業組織心理学会理事、アウトソーシング協議会会長をはじめとする公的な活動に加えて、企業の社外取締役、経営諮問委員会、報酬委員会などの民間企業に対する活動にも従事。現在は、キャリア・リソース・ラボの活動に加え、一般財団法人SFCフォーラム代表理事として活動。

今後のキャリア形成に向けて情報収集したい先生へ

医師の転職支援サービスを提供しているエムスリーキャリアでは、直近すぐの転職をお考えの先生はもちろん、「数年後のキャリアチェンジを視野に入れて情報収集をしたい」という先生からのご相談も承っています。

以下のような疑問に対し、キャリア形成の一助となる情報をお伝えします。

「どのような医師が評価されやすいか知りたい」
「数年後の年齢で、どのような選択肢があるかを知りたい」
「数年後に転居する予定で、転居先にどのような求人があるか知りたい」

当然ながら、当社サービスは転職を強制するものではありません。どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

この記事の関連キーワード

  1. ノウハウ
  2. インタビュー

この記事の関連記事

  • インタビュー

    男性医師4人が時短勤務。亀田ファミリークリニック館山院長に聞く“快諾”の理由とは?―パパ医師の時短勤務(3)

    亀田ファミリークリニック館山(常勤換算医師数16人) は、家庭医診療科医長の岩間秀幸先生を皮切りに、家事や育児を理由とした男性医師の短時間勤務が続いています。2020年は、4人目の男性医師の時短勤務が始まる予定です。クリニック管理者として見ると、マンパワーが落ちるという側面も持つ時短勤務ですが、岡田唯男院長は、岩間先生から最初に時短勤務の相談をされたときどのように感じたのでしょうか。社会的にはまだ多いとは言えない男性医師の時短勤務を快諾する理由とは?

  • インタビュー

    社員の4割がリモートワークの会社で、産業医は何をする? ―産業医 尾林誉史先生×企業の語り場 vol.3

    株式会社Kaizen Platformは2013年の創業時から従業員のリモートワークを実施。日々従業員の4割はオフィスに出社していません。そうした環境下で人事・労務スタッフはどのようにアプローチするのでしょうか? HR部部長の古田奈緒氏と、同社の産業医を務める尾林誉史先生に実情を伺いました。

  • インタビュー

    産業医10名を1拠点に集約!産保先進企業の働き方―日立健康管理センタ産業医鼎談(後編)

    産業医歴1年目の若手から経験30年超のベテランまで、常勤医10名ほどが集まる日立健康管理センタの産業医、林先生・渡辺先生・朝長先生の3名へのインタビュー後編。

  • インタビュー

    臨床との違いは?常勤産業医の働き方―日立健康管理センタ産業医鼎談(前編)

    産業医歴1年目の若手から経験30年超のベテランまで、常勤医10名ほどが集まる日立健康管理センタ。医師のキャリアとしては多くない「常勤産業医」の働き方について、同施設の産業医3名に聞きました。

  • インタビュー

    42歳で食事本を上梓し相次ぐ講演依頼、開業へ―医師による、医師のための健康ライフハックVol.4(後編)

    ヒトでのエビデンスに裏打ちされた食事術を解説した本『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』(冬樹舎、2018年)の著者である稲島司先生。後半では、著書の担当編集者である佐藤敏子さんのコメントを交えながら、本を上梓したことで変化したキャリアや今後の目標について語っていただきます。

  • インタビュー

    循環器内科医師が実践、エビデンス重視の食事術―医師による、医師のための健康ライフハックVol.4(前編)

    巷に溢れる数々の「健康的な食事術」。玉石混合な情報が飛び交う中、エビデンスに裏打ちされた食事術を紹介する話題の本があります。その名は『医師が実践する超・食事術-エビデンスのある食習慣のススメ-』。今回は、著者であるつかさ内科院長の稲島司(いなじまつかさ)先生にインタビューを実施しました。

  • インタビュー

    酒好き肝臓専門医が一押しする飲み方(後編)―医師による、医師のための健康ライフハックVol.2

    肝臓専門医として『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修し、お酒の飲み方のスペシャリストとしても注目を集めている浅部伸一先生(アッヴィ合同会社)。2017年から外資系製薬会社の開発マネジメントを行うかたわら、地方での訪問診療も精力的に行っている異色かつバイタリティ溢れる医師です。後編では二拠点生活から見えてきた地方と都市の治療の違い、そして健康を維持しながらお酒と付き合うためのポイントを伺いました。

  • インタビュー

    お酒をライフワークにした肝臓専門医(前編)―医師による、医師のための健康ライフハックVol.2

    肝臓専門医として『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社、2017年)を監修し、お酒の飲み方のスペシャリストとしても活躍されている浅部伸一先生(アッヴィ合同会社)。消化器内科としての研さんを積んだ後、国立がんセンターやカリフォルニア留学で肝炎ウイルス・免疫の研究活動を行い、2017年からは外資系製薬会社の開発マネジメント職へ転身しました。前編では、肝臓専門医になった経緯から製薬業界に転出した理由について伺いました。

  • インタビュー

    心臓血管外科医が伝授!集中力を保つ術(後編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

    バイパス手術を中心に高度の技術を要する心臓血管手術を年間300件以上もこなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。国内で一流の外科医として活躍するかたわら、タイやミャンマーでも精力的に医療支援活動を行っています。後編では日本と東南アジアにおける医療の関わりや、日々難しい手術に従事している新浪先生が集中力を保つための秘訣を伺いました。

  • インタビュー

    付加価値を身に着けた心臓血管外科医(中編)―医師による、医師のための健康ライフハック Vol.3

    高度な技術を要する心臓血管手術を年間300件以上もこなし、「心臓手術のスーパードクター」として注目されている、東京女子医科大学の新浪博士先生。海外で心臓血管外科医としての実績を積んだ後、天野篤先生と出会ったことがひとつの転機になります。中編では、天野先生から受けた影響や、ナンバーワン医師として患者と関わる際に大事にしていることを伺いました。

  • 人気記事ランキング