大見貴秀(おおみ・たかひで)
前回の記事:高給なのに資産形成は困難?医師のふところ事情―知らなきゃ損?!Dr大見の資産形成塾(1)
フリーランス医師にとって、6月は気が重い時期ではないでしょうか?というのも、住民税の納税通知書が届くのが6月上旬から中旬にかけてだからです。昨年の収入にもよりますが、ギョッとするほど大きな金額となっていることも珍しくありません。なぜ月々の源泉徴収で税金を支払っているのにも関わらず、別途住民税を払う必要があるのでしょうか?今回は、所得税と住民税の仕組み、医師が押さえておくべき注意点を見ていきましょう。
「住民税が払いきれない…」 こんな医師は特に注意
所得税と住民税の最大の違いは「国に納める」か「地方に納める」か、です。
所得税は「国に納める税金」で、基本的に月々の給与から「源泉徴収」されています。常勤医として一つの病院に勤務している場合、過不足は年末に「年末調整」という形で清算されます。2か所以上の病院に勤務していたり、1か所の病院に勤務していても年間の給与が2000万円を超えたり、副業などをしたりしている場合は「確定申告」で過不足を清算します。
前回(高給なのに資産形成は困難?医師のふところ事情)取り上げたように、所得税は累進課税制度を採用しています。累進課税制度とは富の再分配を目的として、課税所得が多ければ多いほど所得税率も大きくなる仕組みのこと。最も低い税率は課税所得が195万円以下の時の5%、最も高い税率は課税所得が4000万円を超えている時の45%となります(2017年6月現在)。「今年」の所得に課税されるのも、所得税の大きな特徴です。
「住民税が払いきれない…」 こんな医師は特に注意
所得税が国に納める税金であるのに対して、住民税は「地方に納める税金」です。毎年1月1日時点で住所がある都道府県・市区町村に納めるもので、昨年(1月―12月)の所得をもとに納税額が決定します。
常勤医として勤務している場合、事業所は住民税を12回に分けて、給与から天引きして納付します(特別徴収)。一方、フリーランス医師の場合はこうした特別徴収ができないため、自分で金融機関の窓口やコンビニエンスストアなどに足を運び、納めなければなりません(普通徴収)。普通徴収の場合、市区町村から毎年6月に納税通知書が送付され、4回に分けて住民税を納めます(多くの場合期限は6月末、8月末、10月末、翌1月末)。特別徴収が12分割なのに対して、普通徴収では4分割となるので、見た目上の金額が大きく、負担感が多い印象となります。
なお、住民税は「均等割」と「所得割」で納税額が決定します。「均等割」はどんな人でも一律に適用される金額のことです。現在、東京都民の均等割は都民税額1500円と区市町村民税額3500円の計5000円となっています。「所得割」は前年の所得に対して課税される住民税で、収入に関わらず基本的には一律10%です
以上を踏まえ、医師が特に注意しておくべきなのは、「住民税の額が“昨年”の所得をもとに決まる」という点でしょう。例えば昨年の給与所得が2000万円超で、今年の給与が急激に下がる場合、予想外に住民税が高くて払えなくなる可能性もあります。フリーランスで集中的に収入を得た医師や、ライフイベントなどによって突如勤続が困難になってしまう懸念のある医師は特に、ある程度貯蓄をしておくなどして、翌年の住民税を払えなくなることがないよう注意しなければいけません。
価値観に合わせ控除の活用を
なお、こちらも前回(高給なのに資産形成は困難?医師のふところ事情)取り上げたように、所得税、住民税ともに「所得のすべて」ではなく「課税所得」に対して課税されます。課税所得とは所得から基礎控除や配偶者控除、社会保険料などを差し引いた金額のこと。課税所得が多ければ多いほど、納税する所得税と住民税の額が大きくなりますが、逆に少なければ少ないほど納税額は小さくなります。したがって、控除対象となる支出を増やすと、所得税や住民税の納税額が減少するので、節税対策に有効だと言われるのです。
ご参考まで、以下に代表的な控除制度をお伝えします。納税額は年金にも影響を及ぼすので、その点は考慮に入れるべきですが、医師は税金が高くなりがちなので、ご自身の価値観に合わせ、控除をうまく使いましょう。
・医療費控除(年10万円以上を越えた分で年200万上限)
・生命保険料控除/地震保険料控除
・出身大学・子どもの学校等への寄付金控除
・ふるさと納税など都道府県・市区町村に対する寄附金 など
※ 所得税・住民税によって控除対象・額は異なる場合があります
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