1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. ノウハウ
  4. コラム
  5. ネコ、赤ん坊、代議士がケガ…誰から救う?―『ブラック・ジャック』に学ぶキャリアvol.21
コラム

ネコ、赤ん坊、代議士がケガ…誰から救う?―『ブラック・ジャック』に学ぶキャリアvol.21

2021年2月3日

数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「オペの順番」より、トリアージについて考えます。

船中での緊急手術。どのように優先順位を決める?

離島に渡る客船に乗っていたブラック・ジャック。突然、船内で発砲事件が起こり、(特別)天然記念物のヤマネコ、赤ん坊、代議士の3者が怪我をします。乗船客から「お医者さんがおいででしたら お願いしますーッ」とドクターコールがあがり、ブラック・ジャックは、「私のやりかたに 絶対文句はつけないこと」を条件に、緊急手術を引き受けました。

被害者のうち代議士は、その場で多額の謝礼を支払い、優先的に手術をするよう要求してきます。ブラック・ジャックがとっさの判断で決めた優先順位とは……。

マンガの詳細、その後の展開はこちらから
※m3.comへのログインが必要です

トリアージの免責や補償制度を検討する時期か

現実の世界でも、事件や事故、自然災害などでトリアージせざるを得ない場面は起こります。医療資源が限られる中、医師は治療の優先順位を判定することになりますが、常に100%の正解を出せるとは限りません。残念ながら、重症度が低いと判定した患者が命を落とすケースも現実にあります。

2011年に起きた東日本大震災では、病院に搬送された女性(当時95歳)がトリアージで軽症と判定されたものの、3日後に脱水症で死亡しました。女性の遺族は病院側の責任を追及し、損害賠償を求める訴訟を起こした後、和解が成立(19年12月)しました。訴訟を起こす権利は誰にでもある一方で、こうした出来事は医療現場を萎縮させる恐れがあります。

作品内にもブラック・ジャックが出廷する場面があり、トリアージは誰がどのような判断をしても、訴えられてしまうリスクをはらむことを感じさせます。

ちなみに、災害時の救命活動で時折言及されるのが、アメリカやカナダなどの「善きサマリア人の法」です。その趣旨は、緊急時に善意から救命活動を行った医療者などには、結果的に失敗しても、その責任を問わないというものです。日本にも民法698条(緊急事務管理)があるものの、十分に知られているとは言えないほか、重過失の扱いなどで現場医師にとって不安が残るのが現状でしょう。

大規模自然災害は毎年のように発生し、現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による医療資源の不足も懸念されています。トリアージが多くの医師にとって身近なものになってきた今こそ、トリアージの法整備を考えるタイミングなのかもしれません。

今後のキャリア形成に向けて情報収集したい先生へ

医師の転職支援サービスを提供しているエムスリーキャリアでは、直近すぐの転職をお考えの先生はもちろん、「数年後のキャリアチェンジを視野に入れて情報収集をしたい」という先生からのご相談も承っています。

以下のような疑問に対し、キャリア形成の一助となる情報をお伝えします。

「どのような医師が評価されやすいか知りたい」
「数年後の年齢で、どのような選択肢があるかを知りたい」
「数年後に転居する予定で、転居先にどのような求人があるか知りたい」

当然ながら、当社サービスは転職を強制するものではありません。どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

この記事の関連キーワード

  1. ノウハウ
  2. コラム

この記事の関連記事

  • コラム

    病名告知…誰に、何を、どこまで伝える?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。今回は、エピソード「侵略者」より、患者の「知る権利」「知らされない権利」に医師はどう応えるかについて考えます。

  • コラム

    「なぜ医師に?」キャリア迷子の処方箋

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。今回は、エピソード「三者三様」より、自分の意思でキャリアを歩む大切さについて考えます。

  • コラム

    エビデンスだけで患者は満足できない?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「目撃者」より、患者への寄り添い方について考えます。

  • コラム

    どうする?医療費を払わない患者の懇願

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「サギ師志願」より、医療費未払い問題について考えます。

  • コラム

    診療拒否が正当化、変わり始めた「応召義務」

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「曇りのち晴れ」より、医師の応招義務(応召義務)について考えます。

  • コラム

    ガイドラインにない“医師の仕事”実感した日々

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生。今回は、医師が“命”に寄り添うことについて語ります。

  • コラム

    患者からの怒り、どう受け止める?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「復しゅうこそわが命」より、患者から理不尽な怒りをぶつけられた時の対応について考えます。

  • コラム

    しがらみに縛られたキャリアの行方

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「ふたりのピノコ」より、医師の働く姿勢について考えます。

  • コラム

    医師が円満に引退するコツ

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、ストーリー「助っ人」より、医師の引退について考えます。

  • コラム

    今だから思う、研修医が報・連・相できない理由

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生。今回は研修医時代の失敗から学んだことについて語ります。

  • 人気記事ランキング

    この記事を見た方におすすめの求人

    常勤求人をもっと見る