数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「オペの順番」より、トリアージについて考えます。
船中での緊急手術。どのように優先順位を決める?
離島に渡る客船に乗っていたブラック・ジャック。突然、船内で発砲事件が起こり、(特別)天然記念物のヤマネコ、赤ん坊、代議士の3者が怪我をします。乗船客から「お医者さんがおいででしたら お願いしますーッ」とドクターコールがあがり、ブラック・ジャックは、「私のやりかたに 絶対文句はつけないこと」を条件に、緊急手術を引き受けました。
被害者のうち代議士は、その場で多額の謝礼を支払い、優先的に手術をするよう要求してきます。ブラック・ジャックがとっさの判断で決めた優先順位とは……。
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トリアージの免責や補償制度を検討する時期か
現実の世界でも、事件や事故、自然災害などでトリアージせざるを得ない場面は起こります。医療資源が限られる中、医師は治療の優先順位を判定することになりますが、常に100%の正解を出せるとは限りません。残念ながら、重症度が低いと判定した患者が命を落とすケースも現実にあります。
2011年に起きた東日本大震災では、病院に搬送された女性(当時95歳)がトリアージで軽症と判定されたものの、3日後に脱水症で死亡しました。女性の遺族は病院側の責任を追及し、損害賠償を求める訴訟を起こした後、和解が成立(19年12月)しました。訴訟を起こす権利は誰にでもある一方で、こうした出来事は医療現場を萎縮させる恐れがあります。
作品内にもブラック・ジャックが出廷する場面があり、トリアージは誰がどのような判断をしても、訴えられてしまうリスクをはらむことを感じさせます。
ちなみに、災害時の救命活動で時折言及されるのが、アメリカやカナダなどの「善きサマリア人の法」です。その趣旨は、緊急時に善意から救命活動を行った医療者などには、結果的に失敗しても、その責任を問わないというものです。日本にも民法698条(緊急事務管理)があるものの、十分に知られているとは言えないほか、重過失の扱いなどで現場医師にとって不安が残るのが現状でしょう。
大規模自然災害は毎年のように発生し、現在は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による医療資源の不足も懸念されています。トリアージが多くの医師にとって身近なものになってきた今こそ、トリアージの法整備を考えるタイミングなのかもしれません。
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