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コラム

患者からの怒り、どう受け止める?―『ブラック・ジャック』に学ぶキャリアVol.17

2020年10月5日

数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「復しゅうこそわが命」より、患者から理不尽な怒りをぶつけられた時の対応について考えます。

家族を殺した犯人だと誤解され…

某組織のミスにより、ある一般家庭で爆発事故が起こりました。4人家族の3人は即死し、娘だけが生き残りましたが、全身重傷で動けず、視力も失いました。そうした彼女の治療を引き受けたのがブラック・ジャックです。手足や皮膚、臓器を移植する大手術をし、彼女は運動機能を取り戻していきました。

ところが、彼女はブラック・ジャックが爆発事故の犯人だと誤解し、背後からメスを振り上げて襲いかかってきます。すぐにブラック・ジャックが気づいてメスを奪い返しますが、彼女は「あなたは家族みんなを惨殺したわ」「いつかきっと……殺してやるから!」と復讐心をたぎらせます。

マンガの詳細、その後の展開はこちらから
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怒りの背景を洞察し、冷静に対応する

患者から理不尽な怒りをぶつけられた時、医師はどう振る舞えば良いのでしょうか。

このストーリーのブラック・ジャックは冷静さを失わず、患者に対抗することもなければ、むやみに慰めることもしませんでした。それどころか、患者がある程度回復した時には崖に立ち、「おまえさんのいまの体力なら 私をここからつきおとすことだってできるだろうな」と言います。あくまで患者と敵対するつもりはない意思を表すのです。

ブラック・ジャックは、この患者について「彼女をささえているのは ただ復しゅうの心だけだ」と理解を示します。そうした深い洞察の背景には、かつて彼自身が爆発事故に巻き込まれた経験があります。母親が亡くなり、ブラック・ジャックは生死をさまよう被害を受けたため、復しゅう心が生き続ける原動力になることを、身を持って知っていたのです。

患者の気持ちが昂ぶる場面は、実際の医療現場でも少なくありません。そうした時、冷静に振る舞うためには、ブラック・ジャックのように患者の言動の原因を分析し、たとえば怒りをぶつけることで何を得たいのかを見極めることが大切なのかもしれません。

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