数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「ふたりのピノコ」より、医師の働く姿勢について考えます。
「奇病」の原因は明らかなのに…
ある化学工場の公害病を治療していたブラック・ジャック。工場から少し離れた町で旅館を探していると、偶然、ピノコにそっくりな女の子を見かけます。気になったブラック・ジャックがその子の家を訪れると、ロミという名前で、重い呼吸器障害の伴う「奇病」にかかっていることがわかりました。保健所の医師が診ても、有効な手立ては見つかりません。
ロミのレントゲン画像を見たブラック・ジャックは、奇病の正体が公害病だとすぐに気付きました。工場の有害廃棄物が風に乗って町まで飛んできて、呼吸器障害をもたらすのだと。しかし、保健所の医師はそれを認めません。自分が工場から依頼されて調査した結果、工場とロミの奇病は無関係だったと、語気を荒げて主張します。あまりにムキになる姿を見て、ブラック・ジャックは「おまえさんにもいろいろ事情があるんだろうね」と察します。事実、その医師は公害病だと認めるわけにはいかない、“ある事情”を抱えていたのです。
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誰のために医療をするのか?
本ストーリーのポイントは、「誰のため、何のための医療か」という視点ではないでしょうか。今回登場する保健所の医師は“ある事情”によって、患者よりも「工場のため」「お金のため」に医療をしていました。その後、一人の患者が亡くなった後、ブラック・ジャックは言いました。「外科手術にふみきっていりゃ こんなことにならなかった」「その勇気さえなかったのかい」と。この問いをきっかけに、保健所の医師は“ある事情”に絡め取られていたことを強く後悔するのです。
医師も人ですから、時として、立場やしがらみ、その他の様々な事情から、自身の信じる道を進むには大きな決断が求められる可能性があります。そうした時、ブラック・ジャックの「その勇気さえなかったのかい」という一言は、ハッとさせられるかもしれません。
ブラック・ジャック自身は、工場から口止め料をもらい、ピノコにそっくりなロミだけを熱心に治療しています。その他の患者には見向きもしません。保健所の医師の思い描く“あるべき医療”とは違うであろう道を、ブラック・ジャックが突き進む姿は、皮肉な状況にも見えます。
強い後悔を抱いた保健所の医師は、最終的にどのような行動を取るのでしょうか。ぜひ作品をご覧ください。
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