1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. ノウハウ
  4. コラム
  5. しがらみに縛られたキャリアの行方―『ブラック・ジャック』に学ぶキャリアVol.16
コラム

しがらみに縛られたキャリアの行方―『ブラック・ジャック』に学ぶキャリアVol.16

2020年9月30日

数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「ふたりのピノコ」より、医師の働く姿勢について考えます。

「奇病」の原因は明らかなのに…

ある化学工場の公害病を治療していたブラック・ジャック。工場から少し離れた町で旅館を探していると、偶然、ピノコにそっくりな女の子を見かけます。気になったブラック・ジャックがその子の家を訪れると、ロミという名前で、重い呼吸器障害の伴う「奇病」にかかっていることがわかりました。保健所の医師が診ても、有効な手立ては見つかりません。

ロミのレントゲン画像を見たブラック・ジャックは、奇病の正体が公害病だとすぐに気付きました。工場の有害廃棄物が風に乗って町まで飛んできて、呼吸器障害をもたらすのだと。しかし、保健所の医師はそれを認めません。自分が工場から依頼されて調査した結果、工場とロミの奇病は無関係だったと、語気を荒げて主張します。あまりにムキになる姿を見て、ブラック・ジャックは「おまえさんにもいろいろ事情があるんだろうね」と察します。事実、その医師は公害病だと認めるわけにはいかない、“ある事情”を抱えていたのです。

マンガの詳細、その後の展開はこちらから
※m3.comへのログインが必要です

誰のために医療をするのか?

本ストーリーのポイントは、「誰のため、何のための医療か」という視点ではないでしょうか。今回登場する保健所の医師は“ある事情”によって、患者よりも「工場のため」「お金のため」に医療をしていました。その後、一人の患者が亡くなった後、ブラック・ジャックは言いました。「外科手術にふみきっていりゃ こんなことにならなかった」「その勇気さえなかったのかい」と。この問いをきっかけに、保健所の医師は“ある事情”に絡め取られていたことを強く後悔するのです。

医師も人ですから、時として、立場やしがらみ、その他の様々な事情から、自身の信じる道を進むには大きな決断が求められる可能性があります。そうした時、ブラック・ジャックの「その勇気さえなかったのかい」という一言は、ハッとさせられるかもしれません。

ブラック・ジャック自身は、工場から口止め料をもらい、ピノコにそっくりなロミだけを熱心に治療しています。その他の患者には見向きもしません。保健所の医師の思い描く“あるべき医療”とは違うであろう道を、ブラック・ジャックが突き進む姿は、皮肉な状況にも見えます。

強い後悔を抱いた保健所の医師は、最終的にどのような行動を取るのでしょうか。ぜひ作品をご覧ください。

今後のキャリア形成に向けて情報収集したい先生へ

医師の転職支援サービスを提供しているエムスリーキャリアでは、直近すぐの転職をお考えの先生はもちろん、「数年後のキャリアチェンジを視野に入れて情報収集をしたい」という先生からのご相談も承っています。

以下のような疑問に対し、キャリア形成の一助となる情報をお伝えします。

「どのような医師が評価されやすいか知りたい」
「数年後の年齢で、どのような選択肢があるかを知りたい」
「数年後に転居する予定で、転居先にどのような求人があるか知りたい」

当然ながら、当社サービスは転職を強制するものではありません。どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

この記事の関連キーワード

  1. ノウハウ
  2. コラム

この記事の関連記事

  • コラム

    病名告知…誰に、何を、どこまで伝える?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。今回は、エピソード「侵略者」より、患者の「知る権利」「知らされない権利」に医師はどう応えるかについて考えます。

  • コラム

    「なぜ医師に?」キャリア迷子の処方箋

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。今回は、エピソード「三者三様」より、自分の意思でキャリアを歩む大切さについて考えます。

  • コラム

    ネコ、赤ん坊、代議士がケガ…誰から救う?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「オペの順番」より、トリアージについて考えます。

  • コラム

    エビデンスだけで患者は満足できない?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「目撃者」より、患者への寄り添い方について考えます。

  • コラム

    どうする?医療費を払わない患者の懇願

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「サギ師志願」より、医療費未払い問題について考えます。

  • コラム

    診療拒否が正当化、変わり始めた「応召義務」

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「曇りのち晴れ」より、医師の応招義務(応召義務)について考えます。

  • コラム

    ガイドラインにない“医師の仕事”実感した日々

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生。今回は、医師が“命”に寄り添うことについて語ります。

  • コラム

    患者からの怒り、どう受け止める?

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「復しゅうこそわが命」より、患者から理不尽な怒りをぶつけられた時の対応について考えます。

  • コラム

    医師が円満に引退するコツ

    数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、ストーリー「助っ人」より、医師の引退について考えます。

  • コラム

    今だから思う、研修医が報・連・相できない理由

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生。今回は研修医時代の失敗から学んだことについて語ります。

  • 人気記事ランキング

    この記事を見た方におすすめの求人

    常勤求人をもっと見る