1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. 転職ガイド
  4. 企業(産業医・MD・社医)
  5. 産業医が知っておきたい「意見書」の書き方入門
企業(産業医・MD・社医)

産業医が知っておきたい「意見書」の書き方入門

2025年8月18日

産業医業務では、従業員の健康管理や就業上の措置について、事業者から意見を求められる場面が多々あります。その際に作成するのが「意見書」です。 意見書は、単に医学的な要件を伝えるだけでなく、従業員の健康状態を改善し、安全に働くための具体的な道筋を示す重要なものです。この意見書を適切に作成することで、従業員の健康を守り、事業場の生産性向上にも貢献できます。 本記事では「意見書」の書き方のポイントについて解説します。

産業医の作成する「意見書」とは何か?

「意見書」とは、産業医が事業場における労働者の健康管理や就業上の措置について、医学的知見に基づき事業者に意見を述べるための文書です。

労働安全衛生法に基づき行う各種面談の際に産業医が作成し、事業者へ提出します。事業者はこれらの情報をもとに改善施策に取り組むため、従業員の健康と安全を確保するための重要な根拠となるものです。

意見書はどのような時に作成する?

産業医が意見書を作成するのは主に以下のような場面です。

・長時間労働者への面接指導

時間外労働や休日労働の時間が一定の基準を超えた労働者に対して面接指導を実施します。面談結果を意見書として作成します。

・休職・復職の判断

疾病や負傷により休職していた従業員が職場復帰する際、面談により復職について判断し、その内容を意見書に記載します。

・健康診断の結果に基づく就業上の措置

健康診断の結果、異常の所見が認められた従業員について、就業場所の変更や作業の転換などの措置が必要かどうか判断し、意見書を作成します。

意見書を作成するための3つのポイント

では、具体的にどのような内容で意見書を作成すれば、より効果的なものになるのでしょうか。ここでは、3つの重要なポイントを解説します。

ポイント1:客観的な事実と医学的知見に基づき作成する

意見書は、主観的な推測ではなく、客観的な事実に基づいて記載する必要があります。面談で従業員から聴取した内容(症状、生活状況、業務内容)と、健康診断の結果や主治医が発行した診断書などの情報をもとに作成します。

これらの事実と、医学的な知見や専門家の見解を関連付け、どのような健康上の問題が考えられるのかを明確に示します。

ポイント2:就業上の措置が明確に伝わるように

ポイントの2つ目は、意見書の情報をもとに「事業者が何をすべきか」が明確に伝わるように作成することです。抽象的な表現では、事業者はどのように対応していいか迷ってしまいます。

意見書作成の際には、対象者の業務内容をよく理解することが不可欠です。面談の前に、人事担当者などに業務内容を詳しく確認しておきましょう。

NG例:「業務軽減が必要です」

OK例:「当面の間、時間外労働を月10時間以内とし、出張業務を免除してください」

また、ただ単に措置を提示するだけでなく「なぜその措置が必要なのか」を事業者が理解できるように説明します。

これにより、事業者は措置の必要性を納得し、実行に移しやすくなります。

NG例:「休息の確保が必要です」

OK例:「回復には十分な休養が必要なため、週休日は確実に取得できるよう、業務量の調整をお願いします」

ポイント3:プライバシーに配慮する

産業医の意見書は、個人情報・要配慮個人情報に配慮しつつ、事業者に正確な情報を伝えることが腕の見せ所です。具体的には、病状やプライベートな情報等を直接的に記載せず、「疲労が蓄積している状態」「精神的な負荷が高まっている」のように医学的所見を一般化した表現に留めます。

これにより、従業員のプライバシーを守りながらも、業務上の配慮が必要であることを明確に伝え、適切な就業上の措置へとつなげます。

まとめ

面談や意見書の作成は、産業医の専門性を活かすことによって、職場の健康保持に重要な役割を担います。

正確でわかりやすい意見書を作成することは、従業員と事業者の双方に安心をもたらし、より良い職場環境を築くことにつながります。

産業医としてのキャリアをご検討中の先生へ

エムスリーキャリアでは産業医専門の部署も設けて、産業医サービスを提供しています。

「産業医の実務経験がない」
「常勤で産業医をやりながら臨床の外勤をしたい」
「キャリアチェンジをしたいが、企業で働くイメージが持てない」

など、産業医として働くことに、不安や悩みをお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。

エムスリーキャリアには、企業への転職に精通したコンサルタントも在籍しています。企業で働くことのメリットやデメリットをしっかりお伝えし、先生がより良いキャリアを選択できるよう、多面的にサポートいたします。

この記事の関連記事

  • 企業(産業医・MD・社医)

    〈第3回〉職場復帰時の異動 会社は対応すべきなのか(後編)

    〈連載第3回・後編〉職場復帰時の異動。それを取り巻く背景と人事・産業医の対応について、精神科クリニック院長であり産業医として職場のメンタルヘルスに向き合い続ける吉野聡先生が解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    〈第3回〉職場復帰時の異動 会社は対応すべきなのか(前編)

    〈連載第3回・前編〉職場復帰時の異動。それを取り巻く背景と人事・産業医の対応について、精神科クリニック院長であり産業医として職場のメンタルヘルスに向き合い続ける吉野聡先生が解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医活動の「あるある」とTips〈第2回〉面談でよくあるケースと実践していること

    第2回となる今回は、よくある面談のシチュエーションをもとに、私が産業医として行っていることを紹介します。お仕事の参考になれば幸いです。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医活動の「あるある」とTips/〈第1回〉産業医を始めて感じたこと

    臨床医から産業医へ転身した筆者が、自身の経験から産業医の「あるある」事例とその対応を紹介する連載です。第1回は、キャリアチェンジのきっかけや、産業医の道を選んだ理由を語ります。産業医に興味のある方、働き始めたばかりの方に役立つヒントをお届けします。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医として企業を関わるときのポイント

    本記事では、臨床医の皆様が産業医として働く際に知っておくべき、民間企業との関わり方の要点を解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    これだけは伝えて!休職判断も変えうる産業医への情報提供ー産業医インタビューvol.2後編

    現在20社の嘱託産業医を務める産業医・古河 涼先生に、企業と産業医の連携について伺った今回のインタビュー。後編では、具体的にどのような情報を産業医に提供すると産業保健がうまくいくのか掘り下げていきます。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    「無責任な社員」との評価も変えた、産業医の関わり方とはー産業医インタビューvol.2前編

    産業医としてのキャリアや活動について、大企業からベンチャー企業までさまざまな企業の産業保健に携わってきた産業医・古河 涼先生にインタビュー。産業医が最も専門性を発揮する「就業措置」と、一歩進んだ「多分野の専門家との連携」について深掘りします。 ※本稿は、人事労務担当者向けの記事を一部編集しています。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    「元気です」に潜むSOSを見抜く!メンタル不調社員を救うには―産業医インタビューvol.1後編

    産業医としてのキャリアや活動について、これまで約20社の嘱託産業医を務めてきた先生にインタビュー。後編では、メンタルヘルス対策として実践している面談方法などを深掘りします。 ※本稿は、人事労務担当者向けの記事を一部編集しています。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    社員の健康意識を変える!人事と二人三脚の取り組みとは―産業医インタビューvol.1前編

    産業医としてのキャリアや活動について、約20社の嘱託産業医を務めてきた先生にインタビュー。産業医になったきっかけや、人事との連携などを伺います。 ※本稿は、人事労務担当者向けの記事を一部編集しています。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    専門科目外の医師でも産業医になれる?

    「専門科目外だから産業医になるのは難しいのでは?」とお考えの先生に、働き始めるにあたってよくある疑問と解消法についてお伝えします。

  • 企業訪問ガイドブック 今ならメルマガ登録で
    企業訪問ガイドブック
    プレゼント!
    産業医求人を受け取る(登録1分)

    人気記事ランキング

    この記事を見た方におすすめの求人

    常勤求人をもっと見る