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「全てが中途半端」料理家ママDr.の悩み―医師と2足のわらじvol.14(前編)

2019年4月24日

麻酔科医の河埜玲子先生のもう一つの顔は料理家です。手軽に作れて栄養バランスのいい料理のレシピを掲載した自身のブログは6万PV/月と厚い支持を得ており、中には企業とのタイアップレシピも多数。現在は食育トレーナーとして、子どもの食育にも取り組んでいるといいます。こうした活動の背景には、子育て女医ならではの“罪悪感”があったそうです。医師として、また母として多忙な生活を送りながらも、二足のわらじを履く理由とは。多忙な医師のための時短レシピもご紹介します。(取材日:2019年3月8日)後編はこちら

料理家になったきっかけは、母として、医師としての実感

――どういったきっかけで料理家としての活動を始めたのでしょうか。

料理家としても仕事をするようになったのは、子どもを産んでからです。きっかけはいくつかあって、一つは、子どもが赤ちゃんのときは産休・育休で家にいられるのに、想像していた以上に子どものことで手一杯になってしまい、全然料理ができなかったこと。もともと料理が好きな自分でも時間を捻出できずに困ったので、もっと困っている人もいるだろうと思いました。それに、「自分と夫はさておき子どもには体にいいもの食べさせてあげたい」というニーズは少なからずあるだろうと。だから、手軽で栄養バランスのいいレシピで、そうした悩みやニーズに応えられたらと思ったんです。

もう一つは、“体にいい食事”のイメージを変えたいという思いがありました。麻酔科医として患者さんをみていると、「食生活に気を付けていればこんなことにならなかったかもしれないのに……」と感じる場面が多くて。たとえば糖尿病や高血圧の合併症があると、麻酔によるリスクが増したり予後も悪かったりするんです。

医師はよく、「食生活が大切」って患者さんに言いますよね。でも患者さんは、体にいい食事は“面倒”“あまり美味しくない”などネガティブなイメージを持ちがちです。それに、野菜を食べてくださいとか、バランスよく栄養をとってと言われても、そういう食生活の経験や習慣があまりないと、そもそもどんな食事が体にいいのかよくわからない、という場合も少なくありません。面倒で、美味しくない上に具体像がつかめなければ、余計改善する気にはなりませんよね。

それで、健康に良くて簡単につくれて、しかも美味しいレシピを広めれば、食生活の改善に取り組んでくれる人が増えるのではないか、と考えたわけです。ただ、独身の時はフルタイムで働いていたので医師の仕事以外に手が回りませんでしたね。

医師兼料理家というキャリアへ導いたのは、“罪悪感”

――いまはどのような働き方をしているのでしょうか。

医師としては週3日、9時~17時の勤務です。料理家の仕事を始めてからは、予防医学の分野も勉強したくなったので、週1日は勤務している病院内の健診センターで、残りの2日は麻酔科で働いています。それ以外の時間を料理家の仕事と家事・子育てに充てる感じですね。日本キッズ食育協会という団体では医学アドバイザーを務めており、小学校での授業や、ドラッグストア経営者向けの講座、食育や予防医学的な観点でのコラム執筆などもやっています。


2015年に出版した『医師が教える 一品で栄養バランスが取れるレシピ』(SBクリエイティブ)では、手軽で作り置きができ、かつ美味しいレシピを多数掲載している

――医師以外の活動に対して、勤務先の反応はどんなものだったのでしょう?

院長はじめ、上司や職場の皆さんは理解のある方ばかりでした。そのおかげで料理家の活動を続けていられるので、本当に感謝しています。

私は人や環境に恵まれて今のような生き方ができていますが、中には「他の事をするくらいならその時間も病院で働けばいいのに」と考える人もいるんだろうなと思います。この罪悪感というか、疑心暗鬼になってしまう気持ちは、子どもが産まれてフルタイムから少し遠ざかった先生なら経験したことのある方も多いのではないでしょうか。

自分自身、医師としても妻・親としても中途半端なのではという悩みはあります。医師としてやりたかったことのうち、諦めざるをえない部分もなかったわけではないので。それでも、子育てしながら人の健康のためにできることはないか、と思って見つけたのが料理家や食育の仕事。あと、私にとって料理はストレス解消の手段でもあるので、それを無意識的に仕事にした部分もあるかもしれないですね。

医師の仕事と料理の仕事と、家事と子育て。罪悪感を自分でなだめながら、全部のことにどうにか折り合いをつけようと、この8年くらいで納得のいくバランスを模索してやってきました。でも、まだまだ悩みは尽きないです。

医師・料理家・妻・母…全てをバランスさせるために

――現在、医師と料理家と母親の3つの仕事を兼業していることになるわけですが、3つを両立するにあたって工夫していることやコツはありますか?

子どもが生まれてからは、仕事も家事もひっくるめてやりたいことに優先順位をつけています。本当は全部できればいいけど、優先順位の高いものから着手して、時には順位の低いものをすっぱり諦めることもありますね。

それと、無理しないとできないことは引き受けないようにしています。独身のときは体力的にもスケジュール的にも自分のことだけ考えればいいので無理もできましたが、いまはたとえば子どもが熱を出すとか、自分のこと以外で対応を求められる場面が少なくありません。また、精神的に余裕がないと、子どもにもピリピリして、自己嫌悪に陥ってしまうので、緊急時に動ける余力を常に残しておくというか、マックス頑張りすぎないように意識しています。

特別企画 医師に贈るレシピ(子育て中の医師向け) ジューシー!レンジチャーシュー

レンジで12分チンするだけで、しっとりジューシーで本格的なチャーシューができます。
手抜きなのに、お店にも負けない、家族に大人気のチャーシューレシピ。
作り置きも出来、そのまま食べるだけでなく、チャーハンやラーメン、サンドイッチなどにも使えて便利です。(調理時間:15分

材料(作りやすい分量)
豚肩ロースブロック 300~350g
A水 1カップ
Aしょうゆ 1/2カップ
Aはちみつ(砂糖でも可) 大さじ2
Aおろしにんにく(チューブ可) 小さじ1
Aおろししょうが(チューブ可) 小さじ1
  • 豚肩ロース肉全体をフォークで突き刺す
  • 耐熱ボウルにAを合わせて入れ、1の肉を入れる
  • オーブンペーパーを肉にぴったりかぶせてのせ(落としぶたのように)、ラップをふんわりかける
  • レンジ600wで7分加熱し、一旦取り出して、裏返してさらに5分加熱する。加熱後そのまま10分おき、肉汁を落ち着かせる
  • 薄めにスライスして再び煮汁につけ、数分おいて味をしみこませる。好みで煮汁をタレにして、スライスした肉にかけて召し上がってください

※作り置きする場合は、スライスせずに固まりのまま、お肉がしっかり煮汁に浸かった状態で冷蔵庫で保存します。冷蔵庫で4~5日保存可能。レンジで温め直して召し上がってください

◆レシピのポイント◆

  1. オーブンペーパーの落としぶたで、乾燥と吹きこぼれを防止します
  2. すぐに食べる時は、スライスしてから煮汁に数分漬けることで、短時間で味をしみこませます
  3. 煮汁は冷凍保存しておけば、繰り返し使えます

後編では河埜先生が取り組んでいる食育と予防医学について、さらに詳しく伺います。料理を作るハードルを下げるアドバイスもしていただきました。

河埜 玲子
こうの・れいこ

麻酔科医・料理家・キッズ食育マスタートレーナー。8歳の娘をもつ医師。
滋賀医科大学医学部卒業後、大阪大学医学部附属病院麻酔科などを経て、現在は済生会松坂総合病院にて麻酔科・健診科に勤務。医師として臨床に携わるなかで、身体と心の健康のためには、毎日の食事がいかに大切かを痛感。今、まさに子育て中である自身の経験から、働くママを応援するため料理家として活動をスタート。身近な食材を使った簡単、時短レシピを提案。ブログや著書『忙しい人のための“一品で”栄養バランスが取れるレシピ―女性医師が教える体と心が喜ぶ食事』(SBクリエイティブ)などでレシピを紹介。また、予防医学の観点から、子どもの食育を推進する活動も行っている。
ブログ http://balance-kitchen-reiko.blog.jp/

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