非常勤産業医として勤務をはじめるにあたって、気になるのは「お給料はいくらぐらい貰えるの?」ということではないでしょうか。本記事では、非常勤(嘱託)産業医の働き方と給与相場について解説します。
非常勤(嘱託)産業医の役割と働き方
産業医は、企業等に訪問しそこで働く従業員の心身の健康を守ることが主な役割です。
労働災害やメンタルヘルス対策など、近年では産業医に求められる役割も増えてきていると言われています。
従業員が安全でかつ健康的に働ける職場環境となるように、医師として専門的観点から指導や助言を行うことが求められています。
次に産業医になるための資格についてです。
産業医になるためには、医師免許に加えて、産業医学の研修を受講し認定されることが必要になります。
この産業医研修は、医師会や各地の産業保健総合支援センター等で受けることができますので、チェックしておきましょう。
非常勤(嘱託)産業医の働き方を見てみると、病院やクリニックで働く傍ら月に1回から数回の頻度で企業等に訪問するケースが多く、また1回の訪問あたり1〜数時間の産業医業務を行うことが一般的です。
非常勤(嘱託)産業医が働く場所
次に、産業医の勤務先について触れてみます。
産業医の選任が必要となるのは、労働者が50人以上いる事業場です。
事業場とは、端的にいうと職場の単位と言い換えることができます。「企業」ではない点が重要であり、例えば「本社には50人の労働者がいるけれど、〇〇支社には30人しか働いていない」といった場合では、同じ企業であれ支社に産業医選任の義務は無いということになります。
ちなみに、労働者が50人以上(=産業医の選任義務がある)の事業場は全国16万か所以上あると言われています。そして、産業医の資格(日本医師会認定産業医)を持っている医師は全国に10万人以上(※1)とされていますが、そのうち実際に活動している産業医は約34,000人(※2)という実態があります。
※1 https://www.med.or.jp/nichiionline/article/008418.html ※2 https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001010932.pdf非常勤(嘱託)産業医の業務内容
産業医の業務内容は労働安全衛生法・労働安全衛生規則によって定められているものや、職場の健康維持に必要な活動まで様々なものがあります。主なものは次の7つです。一つずつ確認しておきましょう。
- 衛生委員会への参加
- 職場巡視
- 労働衛生教育の実施
- 健康診断結果の確認と就業判定の実施
- 健康相談の実施
- ストレスチェック
- 休職者・復職者などへの面談
産業医の選任義務が発生する事業場では、同時に「衛生委員会」と呼ばれる組織を構成し、職場の健康管理について定期的に討議することが求められています。
そして、その衛生委員会の構成員として、産業医が参加することが望ましいとされているため、企業等では衛生委員会のメンバーに産業医が入っていることが一般的です。
産業医は医師という立場から職場の健康課題等について助言を行うようにします。
②職場巡視職場巡視とは読んで字のごとく職場の見回りを行うことです。
ただ職場を見て回るだけでなく、産業医(医師)という立場から健康障害リスクをチェックする必要があります。
例えば、「オフィスの光量は足りているか」「大きな騒音が発生していないか」「転倒・転落の危険性はないか」など、従業員の安全や健康を守るという視点で巡視を行います。
なお、職場巡視は労働安全衛生規則により毎月1回以上、もしくは2ヶ月に1回以上の実施が義務付けられています。
③労働衛生教育の実施労働衛生教育は衛生講話という形で実施されることが一般的で、衛生委員会の場で衛生講話を行うケースも多いです。
健康的な職場をつくるためには、従業員のヘルスリテラシーを向上させることも欠かせません。衛生講話とは、産業医が企業と従業員に対して行う研修のようなもので、「熱中症予防」「メンタルヘルス不調対策」「長時間労働の危険性」など、様々なテーマで行われます。
労働衛生教育は法令によって実施が義務付けられている業務ではありませんが、事業場もしくは産業医自らが必要と判断したときに実施します。
④健康相談の実施産業医が行う3つ目の業務内容は、健康相談の実施です。
従業員から申し出があった場合、産業医は個別で健康相談を受け、心身の健康に関する不安や悩み等を聞く役割があります。
産業医は従業員の話にしっかりと耳を傾け、指導・助言を行います。
⑤健康診断結果の確認と就業判定の実施健康診断結果の確認と就業判定を行うことも産業医の業務のひとつです。
定期健康診断は年に1回の受診義務があります。
産業医はその健康診断の結果を確認し、従業員の就業の可否を判断することが求められています。
⑥ストレスチェックストレスチェックとは、従業員の精神的不調を発見し速やかに対処することを目指して行われます。
企業には年に1回以上、このストレスチェックを実施する義務があります。
ストレスチェックにて「高ストレス」と判断された従業員に対しては、産業医面談などを行うことがあります。
ストレスチェックの実施については以下のマニュアルも参考にしましょう。
【参考】厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」 ⑦休職者・復職者などへの面談7つ目は休職・復職者との面談です。
メンタルヘルス不調やその他疾患等を理由に休職を余儀なくされてしまう従業員もいます。
産業医はこうした従業員に対し個別で面談を行い、心身の状況を確認します。必要に応じて就業制限や休職を勧めたり、企業に報告したりします。
また、面談では医療機関の受診を促すのも産業医としての役割の1つです。休職者に対しては、復職について判定することもあります。
非常勤の産業医(嘱託産業医)の報酬相場
続いて産業医の給与相場について紹介します。 非常勤(嘱託)産業医の場合、事業場への訪問時間や頻度によって報酬が変動します。
報酬の考え方・計算の仕方公益社団法人日本橋医師会(本部・東京都中央区)では、同会所属の産業医にヒアリングした結果を基に、嘱託産業医の報酬について以下のような資料を公表しています。
【産業医基本報酬額】 【出典】公益社団法人日本橋医師会「産業医報酬基準額について」なお、愛知県医師会産業保健部会では、嘱託産業医報酬の目安を以下のように公表しています。
【出典】愛知県医師会産業保健部会「嘱託産業医報酬の目安」産業医の報酬は地域ごとに差がありますが、従業員の数が多いほど産業医への報酬額が高くなる傾向があるようです。
その背景には、従業員の数に比例して面談数が増える(見るべき従業員が多い)ことが考えられます。 非常勤(嘱託)産業医の求人の探し方産業医の求人を探す方法は、主に以下の5つです。
- 地域の医師会に登録する
- 定期健康診断を依頼している病院・健診団体に相談する
- 先輩医師などの人脈を活用する
- 医師の人材紹介会社を利用する
- それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
医師会は都道府県や市区町村の単位で運営されています。医師会に登録することで、企業から産業医紹介の要望があった際に声がかかるケースがあります。
ただし医師会が行っているのは紹介のみで、企業と産業医は直接契約になることが一般的です。
契約に関しては、企業における職務内容・報酬額などの交渉は医師個人で行う必要がある点に注意しましょう。
定期健康診断を依頼している病院・健診団体に相談する定期健康診断を実施している病院・健診団体には、企業から産業医選任の相談が来ることが珍しくありません。
企業にとっては健診を通じてコンタクトを取っているので、相談しやすいという背景があるようです。
病院・健診団体に相談してみることも一つの方法としてあります。
先輩医師などの人脈を活用する産業医として働く先輩医師に相談してみることも一つの方法です。
「臨床の業務が忙しく産業医を続けられないため、後任者を探している」「訪問先の企業から、支社の産業医選任について相談されている」など、様々なケースが考えられます。
一方で、紹介してくれた相手との関係上、条件が見合わない等の場合でも簡単には断りにくいなどのデメリットが出てくることもあるようです。
産業医の紹介会社を利用する多数の医師が登録している紹介会社を利用すれば、勤務地や時間などの条件を相談できることが大きな魅力になります。
これにより、自身のライフスタイルに合った勤務先を紹介してもらえる可能性が高いでしょう。
万一、企業との間でトラブルが起こった場合、紹介会社によっては担当者が間に入って対応してくれることも心強いはずです。
また、はじめての産業医業務であっても様々な書式やツール等を提供している紹介会社もあるようですので、事前にチェックしましょう。
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