働き盛り世代の健康管理や予防医療を担う産業医。
社会性の高い業務内容に加え、「当直がない」「臨床現場で感じるストレスが少なそう」といったワークライフバランスへのイメージからも、そのキャリアに興味を持つ医師は多いようです。
しかし、その具体的な仕事内容や、求められる役割は実際に働いてみないと想像しづらいのも事実。また、法律や制度との結びつきも強い領域だけに、「どのように情報収集したらいいかわからない」という声も聞きます。今回は、産業医としての働き方の概況について紹介します。
産業医の有資格者は10万人超―取得の背景はさまざま
産業医として働くには、日本医師会や産業医科大学が行う所定の研修を修了するなど、労働安全衛生法に示されている条件のいずれかを満たす必要があります。
厚生労働省が発表した「産業医制度の在り方に関する検討会報告書・参考資料」(2022年)によると、こうした条件を満たした産業医有資格者は10万7千人。日本の医師数が約34万人であることを考えると、およそ3人に1人が産業医の有資格者であることが分かります。
産業医資格を取ろうとする理由は医師によってさまざまです。「労働衛生や予防医学に興味がある」「臨床的な忙しさから解放されそう」といった魅力を感じているケースもあれば、病院内の産業医業務を行うために「周囲に取得を促された」というケースもあるようです。
法律上、労働者数50人以上の事業所には嘱託産業医の選任、労働者数1000人以上(業務内容によって500人以上)の事業所には、常勤産業医の選任が義務付けられています。総務省の「令和3年 経済センサス」によると、労働者数50人以上の事業所は約17万件となっており、相当な数の企業が産業医を必要としていることが分かります。
社会とともに変わる産業医の役割・期待
企業において、産業医は実際にどんな業務を担っているのでしょうか。 少し古いデータにはなりますが、2023年12月の時点で公表されている最新のデータから、産業医の活動内容を紐解いてみます。 厚生労働省の「労働安全衛生基本調査」(2010年)によると、産業医が関与している業務内容として、事業所の6割以上が、健康診断関連の業務(健診実施、結果に基づく事後措置・再発防止措置の指導など)を回答。これに「健康相談・保険指導の実施」(63.2%)、「職場巡視」(41.9%)などと続いています。
2010年の調査から時間が経過する中で、産業医に求められている役割も変化しつつあることが考えられますが、企業における普遍的な課題としてはメンタルヘルスへの対応が挙げられるでしょう。
厚生労働省が行った「令和4年 労働安全実態調査」によれば、過去1年間でメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業あるいは退職した労働者がいた事業所の割合は13.3%と、企業にとってメンタルヘルス対策は喫緊の課題であり、産業医の役割にも期待が高まっています。
産業医に求められるもの―医学的・環境的にアプローチするために
労働者の心身の健康の保持・増進、さらに快適な職場環境の形成に関する助言、指導などが期待される産業医。 職業性疾患や、メンタルヘルスなどへの医学的な知識、労働安全衛生法をはじめとする労働関係の法律や制度へのキャッチアップが必要なのに加え、よりよい職場環境を実現させるためには、企業の立場を理解した上での折衝力が求められる場面もあるようです。
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