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地方でも、気軽に「家庭医」を目指せる環境を―藤谷直明氏(宮崎医院)

2015年12月15日

生まれ育った大分県で家庭医として働くことを志し、現在は由布市の診療所に勤務している藤谷直明氏。念願の家庭医療専門医として医療の道を歩んでいるものの、これまでの過程で、さまざまな障壁を感じてきました。プライマリ・ケアの認知度向上と医学生の教育に日々励んでいる藤谷氏に、家庭医療の教育における課題や、今後の展望を伺いました。

「町のお医者さん」を目指して

―現在、具体的にはどのような活動をされているのですか?

宮崎医院という個人の診療所で家庭医として働きながら、週に半日は大分大学で後期研修医に家庭医療の指導をしています。また、日本プライマリ・ケア連合学会若手医師部会で代表を務めています。

「若手医師部会」は家庭医や総合診療医など、プライマリ・ケアに興味のある若手が集まる団体です。地域ごとや、初期・後期・JF5(医師10年目まで)といった世代別のコミュニティーがあり、さらに国際交流、病院総合医、多科・多職種連携など各分野のチームがあります。双方が支えあう仕組みや学習環境の基盤をつくり、他職種や一般の方々との連携の推進を目指して活動しています。

―藤谷先生はなぜ、家庭医を志したのでしょうか?

由布市_宮崎医院地図ver2医学部に入るまで病院にあまりかかったことがなかったので、わたしにとって「医師」とは「町のお医者さん」でした。そのため、医学部を卒業したら診療所の医師、つまり家庭医になるのだと思っていました。しかし、医学部では臓器別専門医を目指すことを前提に授業や実習が進められていくように思え、目指す医師像とのギャップを感じることが多かったです。

当時はまだ、家庭医療専門医のプログラムができて間もないこともあって、家庭医の道を選ぶのは勇気の要る選択でした。しかし、病院の先生たちがプライマリ・ケアで診るべきと思われる高血圧など慢性期の患者さんも診ながら、休みなく働いている状況を目の当たりにして、1次・2次・3次の各医療機関が役割分担できるようになることが必要だと感じました。家庭医として、プライマリ・ケアの領域を整備していきたいという思いは、医学部卒業後も日に日に強まっていきました。

家庭医になるためにも、研修できる環境と指導医が必要

―家庭医を目指すにあたって、苦労されたことはありますか。

大分県内で家庭医療の専門研修を受けようと思っても、とにかく情報が少なく、研修先の医療機関をなかなか見つけられませんでした。同じように家庭医を志す先輩に相談してみましたが、先輩も試行錯誤をしており、はっきりとした答えのないことにがっかりしたのを覚えています。診療所を見学しても、自分が家庭医になるためにはどうしたらよいのか指標がつかめずにいました。

naoaki_fujitani2最終的には幸い、家庭医療専門医を取得できる診療所に入職できましたが、大分からはだいぶ離れた岡山県のプログラムでした。「地元で普通の町医者になりたいだけなのに、なぜこんなに苦労しなければいけないのか」という思いは強かったですね。専門研修は、10年20年かけて家庭医療の技術や知識を培ってきた先輩医師のノウハウが凝縮された内容で、患者さんの地域生活を支えるための考え方など、独学でプライマリ・ケアを学ぶよりもはるかに多くの気づきを得ることができたと思います。この研修環境が全国各地に広がり、より多くの医師がもっと気軽に家庭医を目指せるようになれば、プライマリ・ケアの現場は変わる。そう考え、「家庭医の教育体制の構築」はわたしにとって一大テーマとなりました。

教育の場を増やして、家庭医療が学びやすい環境をつくりたい

―家庭医として、大分で今後どんなことをしていきたいですか。

将来的には、現在勤務している宮崎医院や大分大学で、2017年に開始予定の新専門医制度にも準拠した研修プログラムをつくり、研修医指導をしていきたいです。宮崎医院が若手医師にとって良い研修の場になるためには、わたし自身が優れた家庭医療を実践していく必要もあるでしょう。医学的な知識はもちろん、時間をかけて患者さんや診療所のスタッフ、他職種・介護・福祉・行政の方々と関係を築きながら、地域で必要とされている家庭医療を着実に実践する。行動で示しながら、ノウハウをきちんと指導していけるようになりたいです。

naoaki_fujitani3専門研修の体制を整えつつ、並行して力を入れたいのが卒前教育です。多くの医学生にとって、家庭医の専門性や役割を知る機会はまだまだ少ないです。大学で講義を受けてもらったり、診療所に実習に来てもらったりして、診療所の医師の使命や思いをより多くの医学生に知って欲しいと思います。それは将来家庭医の道を選ぶか否かに関わらず、医師として成長していく上で大きな糧になるはずですし、我々としてもプライマリ・ケアへの理解を深めてもらうチャンスでもあります。

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