
「もっとオペをしたい気持ちもあった」と振り返るO先生は、30代で高齢者医療、在宅医療への転向を決めて転職活動を始めました。数年前に退局した大学では同期が本格的にオペを任され始めており、自身も残っていれば好きなオペに携わっているはずでした。O先生が若くして在宅医療を志した理由、そして初めての在宅医療に向けてどのように転職活動を進めたのか前後編にわたってお聞きします。(取材日:2021年3月16日)
在宅医療への転向を決めたきっかけ
――まずは今回、転職活動に至った経緯を教えてください。
今の職場は回復期・慢性期の病院で、プライマリケアを学びたくて2年前に入職しました。それまでは大学医局にいたのですが、いずれは地元知人のクリニックを継ぐことになっていて、教授にご相談して退局を決めたんです。ですから、この職場が初めての転職先で、腰を据えて地域医療にあたる場となりました。ところが入職後しばらくしてCOVID-19が流行り始め、医療をとりまく環境も変わってしまった。患者さんは減り、それに対して経営方針が救急重視に変更されたことで、私が診療したかった患者さんが減る一方でした。そればかりか、担当病棟が倍増して負担も重くなり、入職時に期待していた環境ではなくなってしまったんです。
――在宅医療分野への転向を考え始めたきっかけは何でしょうか。
2つの出来事があります。1つは去年、祖父を亡くしたときの経験です。入院先ではCOVID-19で面会できず、会えた頃にはほとんど会話できなくなってしまっていて、そのまま他界したんです。それが悲しくて。その時思ったのが「もしも私と似た状況の患者さん、そしてご家族がいたら、医療は何ができるだろう」という疑問でした。改めて地域医療について考える機会になったんです。
そして同じ頃に、担当患者さんのご家族から「在宅で看取りたい」という要望をいただいたんです。要望を叶えようと調整はしたのですが、結局、当院にとってはハードルが高くて病院で看取ることになりました。このことが心残りで、在宅医療を経験したいと考え始めたきっかけです。
クリニック承継後も見越した転職活動
――先生は30代後半です。同年代の医師には、急性期で経験を重ねている先生も多くいます。プライマリケア、在宅医療に舵を切ることに躊躇はなかったのでしょうか。
今まで我慢してきてようやく専門医を取れましたから、もっと本格的にオペをしたい気持ちもありました。ただそのとき、“私がオペをやる意味”が問われてくると思ったんです。
まだ若輩の私がオペをやらせてもらえるのは、技術を磨くことで、次の患者さんにもっと良い医療を提供したり、次の世代に伝えていったりする確約があるときだと思うんです。それなのに、将来クリニックを承継する私がオペを続けて許されるのかという葛藤があって……。それなら自分が絶対に進む道で経験を積んだ方がいいのではないか、と早めに決断しました。
高度急性期からは離れますが、先輩や同期と同じだけのモチベーション、同じだけのプライドを持ってやりたいと思うんです。迷いのあるまま診療していては、それは叶わないですよね。
――在宅医療を経験するために、転職先はどのように選んだのでしょうか。
承継予定の知人クリニックは在宅医療をしていません。ですから、承継後に在宅医療を始めるなら連携病院はどこが良いだろうかという視点で選びました。このとき、民間病院での経験も生きたと思います。たとえば、同じ2次医療圏の中でも、施設同士のネットワークが想像以上に分かれてることは退局後に実感したことでした。
そして自分で調べていくうちに、A病院に注目するようになりました。在宅医療と地域包括ケア病棟を備えていて、機能面でも立地面でも知人クリニックと連携しやすいだろうと考えました。それで求人を見ていたら病院名は伏せられていましたが、明らかにA病院だなと(笑)。それで求人を扱ってたエムスリーキャリアに問い合わせました。
※後編はこちら
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