1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. キャリア事例
  4. 事例
  5. EXILEきっかけで刑務所の医師に―知られざるニッチキャリアの世界Vol. 1(前編)
事例

EXILEきっかけで刑務所の医師に―知られざるニッチキャリアの世界Vol. 1(前編)

2019年1月15日

刑務所や少年院などの矯正施設で医療を行う「矯正医官」。その業務については、表立って報道されることがほとんどないため、ご存知の方はごくわずかではないでしょうか。『知られざるニッチキャリアの世界vol.1』では、この矯正医官をご紹介します。お話をうかがったのは、全国に8つある矯正管区のうち、東京管区で矯正医官を務める岩田要先生です。大学でがんの基礎研究をしていた岩田先生が、なぜ矯正医官という新たな道を選んだのか。矯正医官の仕事とはどのようなものなのか。待遇ややりがいはどうなのか、等々。その実態に迫ります。

知らない世界に、興味をひかれた

――矯正医官になられる前は、どのようなお仕事をされていたのでしょうか。

東京大学大学院で、リンパ管の研究をしていました。ただ、最初から研究者を目指したわけではなく、1999年に東京大学医学部を卒業したときは、外科医を目指していました。当時は臨床研修制度必修化前でしたから、大学病院に1年いて、そのあと都立病院に3年、大学病院に戻って1年と、計5年間は外科医としてキャリアを重ねていたのです。
ところが、大学院に進もうとしたときに、同級生から「おもしろいことをやっている研究室があるから来ないか」と誘われて。それが基礎系の分子病理学教室で、そこに大学院を修了するまでの4年間と、その後も助教として居残ったので合計10年間余り在籍していました。

EXILEのATSUSHIさんを起用した医師募集のポスター

――どんなきっかけで、矯正医官になろうと思われたのでしょうか。

研究室の雰囲気もよかったし、研究自体もとても楽しかったのですが、研究が煮詰まってきたことや、身内が病気をしたこともあって……。優秀な後輩もどんどん入ってくるし、いつまでも同じ立場にはいられない、という気持ちもありました。
そんなときに、地下鉄の駅で矯正医官募集のポスターを見たんです、EXILEのATSUSHIさんの。研究者の性分なんでしょうね、新しい、珍しいものにひかれるという。それを見てすぐに問い合わせの連絡をして、刑務所へ見学に行きました。

――見学なさって、どんな印象を受けましたか。

まず、設備を見て「普通に診療できそうだな」と思いました。CTはありませんが、エコーも内視鏡もレントゲンもある。これならやっていける、と。基礎研究をしながらも、アルバイトで夜間の当直をしていましたから、「エコーがあれば何とかなる」というのが自分の中にあったんです。それに、挨拶に顔を出した際の医局の雰囲気がすごくよかった。それで決心しました。これが4月で、半年かけて業務の引き継ぎなどをして、入職したのが2016年10月です。

意外?! 30代、40代の医師が多い

――研修などはあるのでしょうか。

仕事をしながら研修を受けます。真っ先に国家公務員としての心構えを教わります。矯正医官は法務省管轄ですから、法令遵守は特に厳しく言われます。矯正医官になってから、自転車で一時停止を必ずするようになりました(笑)。そのほかに、施設内の他の部門の幹部職員から、その部門の役割についての講習も受けますし、管区内の新人医官に対する合同のレクチャーもあります。

――年齢的には、どの辺りの先生が多いのでしょうか。

私が今いるところでは、60過ぎの先生もいらっしゃいますが、30代、40代の先生が過半数です。ただ、地方によっては、定年退職後のセカンドキャリアの先生が多いところもあると思います。
スキルとしては、ほかの先生もおっしゃっていましたが、全科当直ができる人であれば大丈夫だと思います。自分で対処できるかどうかを見極めて、対処できないものについては外部の手を借りる、という判断も含めてですね。

17時で帰れることに、戸惑った

――矯正医官になられて、戸惑ったことなどはありますか。

いちばん戸惑ったのは、17時に帰されることでした。研究をしているときは、細胞やマウスの世話がありますから、土日も区別ありませんし、実験データを取る時間に合わせて夜間でも研究室にいなければなりません。それが17時には「必要がないなら帰ってください」と言われる。冗談のようですが、「こんなに日が高いうちに帰っていいんだろうか?」と、初めの頃は不安になりましたね。

――ご家族は、今のお仕事について何かおっしゃっていますか。

「矯正医官になろうと思う」と最初に言ったとき、妻は特に何も言いませんでした。私の仕事だから私が決めればいいと、信頼してくれているのでしょう。今は、私に時間的なゆとりができた分、妻にもゆとりができたと思います。家族でいっしょに過ごす時間も増えましたし。おかげで、家に居やすくなりました(笑)。

中編では、矯正医官の仕事の実態をうかがいます。

【提供:m3.com Doctors LIFESTYLE

従来の価値観に とらわれない働き方をしたい先生へ

先生の「やりたい」を叶えるためには、従来の働き方のままでは難しいとお悩みではありませんか。

  • 医師業と、自分のやりたいことを兼業したい
  • 病院・クリニック以外で医師免許を生かして働きたい

もし上記のようなお考えをお持ちでしたら、エムスリーキャリアのコンサルタントにご相談ください。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

この記事の関連キーワード

  1. キャリア事例
  2. 事例
【記事特集】医師の転職カルテ
キャリアの悩みに、コンサルタントが答えました


・いつ、どうやって転職したらいいのかわからない
・新たな環境で働きたいが、不安
・育児や介護、持病との両立はできる?

【詳しくはこちらから】

この記事の関連記事

  • 事例

    1年限定のつもりが…在宅診療所で院長を続ける理由

    千葉県鎌ケ谷市にある「くぬぎ山ファミリークリニック」の院長・細田亮(ほそだ・とおる)先生は、2015年、1年間限定のつもりで同クリニックの院長を引き受けました。ところが、院長のまま6年目を迎え、現在はクリニックの新築移転も計画中です。今もなお院長を続ける理由とは――?

  • 事例

    「自分が理想とする糖尿病診療を追い求めて」開業へ

    小児糖尿病の宣告を受けるも、「糖尿病だってなんでもできる」という医師の言葉をお守りに自らも医師を志すことを決意した南昌江内科クリニック(福岡市)の院長、南昌江先生。現在の糖尿病専門科医院を経営するようになった軌跡を伺います。

  • 事例

    犬猫の脳腫瘍は、一度私に診せてほしい

    医師・獣医師の安部欣博(あべ・よしひろ)先生は、ヒトと動物の脳神経外科医として、両方の臨床を並行して行っています。どちらの臨床も行っているからこそ感じる双方の特徴、相違点や刺激について伺いました。

  • 事例

    小児糖尿病にならなければ、医師の私はいない

    福岡市にある糖尿病専門科医院、南昌江内科クリニックの院長・南昌江先生は、ご自身が中学2年生の際に小児糖尿病を宣告された身の上です。病気を発症した前編に続き、今回は医療への水差し案内人となった医師との出逢いや転機となった出来事について伺います。

  • 事例

    ウガンダ勤務を経て医師になり、ベンチャー企業に入社したわけ―谷川朋幸氏(株式会社CureApp最高医療責任者)(後編)

    アフリカでの難民支援NGO、東証一部上場企業勤務を経て、医師になった谷川朋幸氏。公衆衛生、国際保健への関心から、聖路加国際病院公衆衛生大学院に進みました。現在は、自宅で治療ガイダンスを受けられる「治療アプリ」を研究・開発する株式会社CureApp の最高医療責任者(CMO)として、治験や薬事申請などを進めています。多彩なキャリアを築く谷川氏が、自身の道を選択する上で重視してきたことは何でしょうか。

  • 事例

    日本初の“治療アプリ”を目指す最高医療責任者の異色キャリア―谷川朋幸氏(株式会社CureApp)(前編)

    日本初となる“治療するアプリ”の薬事承認・保険適用を目指している株式会社CureApp。最高医療責任者(CMO)として、治験や薬事申請などを進めるのは、医師である谷川朋幸氏です。東京大学法学部を卒業後、アフリカでの難民支援NGO、東証一部上場企業経営企画スタッフを経て、呼吸器内科医になった異色の経歴を持っています。どのようなキャリアを描き、医師になったのでしょうか。

  • 事例

    検疫所長が教える、検疫所で働く医師の働き方やキャリアパスとは?(後編)

    国内に常在しない感染症の病原体が海外から持ち込まれることを阻止するために、検疫所で働いている医師がいます。那覇検疫所で所長を務める垣本和宏氏に、検疫所の医師のキャリアパスや働き方、検疫所から見た日本の医療の課題について聞きました。

  • 事例

    50歳を超えた医師が選んだ職場は、エキサイティングな“検疫所”(前編)

    東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年。国は訪日外国人数の目標に、2015年の倍に値する4000万人を掲げています。訪日客の急増に伴い、高まっているのは、国内に常在しない感染症の病原体が海外から持ち込まれるリスクです。重大な感染症の流入を水際で阻止するために、全国の空港や港にある検疫所で、医師が働いていることをご存じですか。

  • 事例

    刑務所で働く医師、待遇は?―知られざるニッチキャリアの世界Vol. 1(後編)

    大学の基礎研究者から、矯正医官にキャリアチェンジした岩田要先生。最終回の今回は、気になる待遇ややりがいなどについてお聞きしました。

  • 事例

    患者は受刑者たち。危険はないのか?―知られざるニッチキャリアの世界Vol. 1(中編)

    大学の基礎研究者から、矯正医官にキャリアチェンジした岩田要先生。矯正医官になるまでの経緯をまとめた

  • 人気記事ランキング