入職や退職に影響するものとして挙げられがちなのが年収や当直・オンコール有無などですが、上司や部下との人間関係も大きな要素になります。m3.com会員の皆様は、直属の上司との相性が離職にどれほど影響すると考えているのでしょうか。そして、影響する方々が上司について不満をもつとき、周囲はその兆候をどのように掴めば良いのでしょうか。意識調査の結果から考察します。
上司との相性は、離職・定着に影響
Q5.直属の上司との相性の善し悪しは、現在の勤務先で働き続けるか否かに影響を及ぼしますか?(n=1000)
“愛され上司”、“憎まれ上司”の存在は、上司・部下の問題だけではありません。医師の71.1%が、直属の上司との相性が勤続に影響すると答えています。もはや医師の離職・定着にも影響する、病院全体の問題と言えそうです。
特に、医長クラスまでの若手は7割以上が勤続に影響すると回答。影響しないと答えるのは約1割にとどまりました。科長・部長クラスにまでなると、影響する割合が減少しますが、それでも7割近くは勤続への影響を訴え、院長クラスでも6割以上は上司との相性が勤続に影響すると回答しています。
Q6.直属の上司との相性以外で、働き続ける上で重視しているものを教えてください。(複数選択可)(n=1000)
なお、今回の調査では、人間関係以外に、働き続けるうえで重要な要素についても質問。最も多く選択されたのは、「収入」(59.8%)でした。調査項目が異なるため単純な比較こそ難しいですが、71.1%が上司との相性を重視したことには大きな意味がありそうです。
さらに、上司との相性を重視する層とそうでない層に分けて分析したところ、「収入」や「勤務時間日数」といった待遇面に乖離が見られました。たとえば収入は、重視する層の6割が挙げたのに対し、そうでない層は約4割にとどまる結果になりました。
その反面、「専門医の追求活用」や「自分のこだわりを実現できる」などスキルアップや業務内容については大きな違いが見られませんでした。上司との相性を重視しない層には、自身の業務に集中したい職人気質な方が多いのかもしれません。
「今の職場で働き続けたいかどうか」 上司への満足度で実際に大差
Q7.現在の勤務先で、今後も働きたいですか?(n=1000)
現在の勤務先で働き続けたいと考えるm3.com医師会員の方は6割で、勤続を願わない方の8.8%を圧倒的に上回りました。
Q7を「Q1.直属の上司に、これからも上司でいてほしいですか?」の回答結果とクロス集計した結果からも、上司との関係性が勤続意欲に影響していることが示唆されました。
現職場で働き続けることを望んでいるm3.com会員は、上司に満足している層で約8割だったのに対し、「どちらとも言えない」で5割を切り、“不満層”では35%と減っていきます。
逆に、将来的に退職を考えていると思われるm3.com会員は、満足層で5%しかいなかったのに対し、「どちらとも言えない」で8%に微増、不満層になると3割に達しました。
上司との相性を重視するm3.com会員で、上司について思うことを上司本人に伝える方は少ないようです(8.6%)。家族や同僚医師に伝える方が多く、同僚のうち後輩医師やコメディカルに伝える方、なかには勤務先以外の医師に伝える方も一定数いました。医師からこうした方々に不満が漏らされていたら注意が必要と言えそうです。
Q8.Q7(現在の勤務先で、今後も働きたいですか?)の回答理由についてご教示ください。
「はい」
- 不満がないため。(部長)
- 働きやすいため。(医師)
- 働きやすい。(院長)
- 働きがいがある。(副所長)
- どこにいっても大変。その中では理解ある上司に恵まれている方だと思います。(助教)
- 当方の希望通りでの勤務形態を受け入れて頂いているし、パラメディカルの人たちの協力も得られているから。(非常勤医師)
- 人間関係に満足している。(医員)
- 大勢の医局だとお互いがカバーし合うことによって長期の休みが取れる。(部長)
- 満足というわけでもないが、現在の就職環境下を見れば、まずまずの労働環境なので。(医師)
- 通勤に便利な立地で、勤務時間の融通も比較可能なため。幅広い症例を経験できることが魅力。(研究医)
- 待遇、給与、認められ方に満足している。(医局長)
- 専門性の高い医療を実践できる環境にある。(部長)
- 自由に仕事ができればよい。(診療部長)
- 自分の好む診療が出来ている。(副院長)
- 自分の思いをある程度実現できる環境と思うから。(管理者(所長))
- 仕事量、内容ちょうど良いです。(医長)
- 仕事のやりがいを感じられるから。(院長)
- 今年度から定年延長したが、診療は自分の専門に専念でき、委員長などの役職が解かれたので雑用が減った。(顧問)
- 経営状況が良好なので。(院長)
- 経営者に感謝しているから。(副院長)
- 経営者(事務方)が良い。(副院長)
- 代わりがいない。(診療部長)
- もう歳だとなかばあきらめもあります。(管理医師)
- 他に行くところがない。(医長)
「どちらでもない」
- 本当はやめたい。(医師)
- もう少しのんびり仕事をしたい。(施設長)
- 忙しすぎるから。家庭が犠牲になるから。(医長)
- 疲れました。トップとして活動して正当な評価もされず。(トップ)
- 病院内での同僚との人間関係には満足しており、上司との関係性は無視できる。病院をやめることになっても、退職後のことも考えているので、あまり心配はしていない。(部長)
- 病院全体の経営方針には異論がある。(医長)
- 年を取ると、現在の病院での勤務は体力的にも難しいと思われるから。(科長)
- 特に強い不満があるわけではないがこのままでいいのか不安な時がある。(医長)
- 転勤できる職場があればよいが、現在と全く同じ収入で仕事量という好都合なところはないと思われる。(医長)
- 直属の上司以外にも「老害」が多く、70代になっても仕事を続けそうなので、そうなると耐えられないかもしれない。(医長)
- 直属の上司による対応は極めて良好であるが、病院全体の雰囲気などにより。(医長)
- 体力が落ちてきているのでそろそろ最前線から身を引くときかと。(部長)
- 腹立たしい限りではあるが当該の人事担当部長もいずれ異動していくので、これ以上圧力をかけてこないのならば、それまでは面従腹背で時間を過ごすつもり。(産業医)
- 前職場(関東)と現在の職場・地域のパラメデイカル等の考え方・働き方等の違いになじめない。あまりにもひどい!!(診療科部長)
- 数年後の合併像が見えないから。(部長)
- 人間的に信頼できない同僚が多い。(部長)
- 収入は良くないし、パートもしなきゃならないが、自分の好きなことはできているからいいかなあと。(助教)
- ・仕事内容は非常に充実しているが、他のスタッフとの業務負担の差が大きい。(科長)
- 今の環境はそれほど悪くないが、2年後に教授が変わるので、状況がどうなるか分からないことと、業務量に対する対価の支払いが悪いので、どうするか検討中。(助教)
- 研究環境が劣悪なためですが、今の自分では外の世界で生きていくことは極めて難しいと思います。(助教)
- 経営状態が改善するまでは、辞められないと思うが、安定したら、異動したい。(部長)
- 金儲け主義ですね。いただけない。(部長)
- 環境が変化したら検討が必要なため。(医長)
- 以前に救急対応の個人負担が非常にシビアになったことがあり、転職を検討していました。同様の状況になったら今度は逃げます。(部長)
- よりよい環境があれば、移りたいと思っています。(科長)
- パワハラ的な扱いを受けて疲れる。(助教、病院講師)
「いいえ」
- 激務なので。(副部長)
- 疲れた。(副所長)
- 自宅から遠いから。(教授)
- (経営)母体が不安定だから。(診療部長)
- 部長が改善しないときつい。(医長)
- 病院の方針にあわない。新しい教授の方針に合わない(助教)
- 田舎すぎる。(医員)
- 定年が近い。(診療部長)
- 上司の方が業績が無い。全ての科がゆるい。(不明)
- この病院に所属している限り、自分の能力を今以上に向上させることができないと思うから。(医長)
- 自分より専門分野で指導して頂ける上司がいないため。(助教)
- そのほか、他科Drより2度、パワハラを受けました。(副部長)
- いずれ辞めると思うが、すぐには辞められない。(医員)
- 給料が安い、時間外が理不尽。そのわりに忙しすぎ。(医員)
調査期間:2018年6月1日 (金)~5日 (火)
対象:m3.com医師会員
回答者数:1000人
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