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調査

実力?運?医師の出世に必要なこと―出世意向アンケートvol.4

2021年2月26日

医師の出世や役職について考察する本シリーズ。今回は674名から回答を得たアンケート(※)を基に、医師が出世するために必要なことや、最終的に就きたい役職、そこへ向けての出世の進捗についてご紹介します。

※2021年1月9~16日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施
※本アンケートでの「出世」とは「現在より大きな権限を持ってより多くの人を巻き込み、より大きな仕事ができるようになること」と定義しています

出世には臨床・研究スキル「以外」を重視

医師が出世するために必要だと思うことを上位3つまでの複数回答で伺ったところ、1位が「タイミング・運」(40.4%)、2位が「周囲からの信頼」(36.4%)、3位が「コミュニケーション能力」(31.3%)となりました。出世に関しては、臨床や研究、論文といった定量的な実績ではなく、日ごろのコミュニケーションなど、定性面を評価する人が多いことがわかりました。

図1:医師が出世するために必要だと思うこと(20~70代の医師674名の複数回答)

もし、今後「出世したい」先生は、周囲からの信頼を得られるよう、誠実に仕事をした上で、出世のチャンスが来たら逃さないことがポイントなのかもしれません。

それぞれの回答理由は次の通りです。

タイミング・運

  • 本人が諦めずに目指し続けること、人事などのタイミング、論文などの第三者からの評価がうまく合わないと難しいでしょう(部長/50代男性/病理科)
  • タイミングが1番の要素、持って生まれた運のある方が偉くなる(医長/60代男性/麻酔科)
  • 実力があっても運や人間関係に恵まれなければ出世はできないように思います(院長/70代以上男性/産婦人科)

周囲からの信頼

  • 出世するには組織の中で誰もが納得できるものが必要(その他/40代男性/産業医)
  • 人柄、実行力、信頼感があって初めて人の上に立つ資格が得られる(院長/60代男性/外科)
  • 医者として出世するには、部下の医者たちを統率する能力がないとできないかと思います。周囲の医者から、医学的、人間的にこの人には及ばないと思わせるカリスマ的なものがないと周りの医者がついてこないと思います(医員/60代男性/外科)

コミュニケーション能力

  • 医療は自分一人で行うものではなく、チームとして機能しなければ良い仕事はできない。そのためコミュニケーション能力や医師としての決断力は欠かせない。そしてその結果として臨床での結果が得られるものが最前線の医療だから(院長/60代男性/精神科)
  • 「決断力」がない人は上級職に立つ資格がありません。かといって独断では困ります。昔は「根回し」と言っていましたが、ある決断をする前には、関係各所とのコミュニケーションが欠かせません。ただでさえ忙しい医師・職員を無駄に長い会議で消耗させるわけにはいかない。これがわかっている人がボスになるべきです。そういう癖をつけると、下は自ずと働いてくるようになりますので、時間が経てば「ボス職」の仕事量は減ります。出世してもらいたい人にはこれを期待しています(役員・院長/60代男性/外科)

最終役職にこだわりはなし

また、最終的に目指したい役職と現在の出世の進捗について聞きました。

まず、最終的に目指したい役職は「最後は役職よりも自由な時間が欲しい」、「自分のことだけに専念したい」といった理由から「役職にはこだわらない」が48.1%で、圧倒的多数を占めました。次点の「【病院】部長クラス」(11.4%)では「臨床ができれば満足」「これくらいが無難」という意見が寄せられています。

図2:最終的に就きたい役職(20~70代の医師674名が回答)

そして、今現在、順調に出世できているかどうかは「できている」が30.5%、「どちらとも言えない」が28.5%、「できていない」が13.5%でした。現時点のポジションや境遇を肯定的に捉え、それほど不満を感じていない人の方が多いようです。

図3:今現在、順調に出世できているか(20~70代の医師674名が回答)

それぞれの理由は次の通りです。

できている(「とてもできている」「まあできている」の回答者)

  • 出世する気はなかったが、比較的仕事量も多くなく、自分にはもったいない待遇で働かせてもらっています(部長/50代男性/内科)
  • 8回転勤し、今までに部長を3回、副院長を1回経験している。自分は役職面で恵まれていると思う(部長/50代男性/内科)
  • 職場に満足できていれば出世も悪くないし、満足できていなければ出世は嫌だと思う(医員/50代男性/精神科)
  • 大学をやめて一兵卒として就職して10年、いつの間にか院長職になりましたので、これを出世と言わないわけにはいかないでしょうが、本人は逃げ回っていたのが事実です(役員・院長/60代男性/外科)

どちらとも言えない

  • 順調な出世が何なのかわからなくなってきた。教授や院長になりたいわけではない(医長/30代男性/整形外科)
  • 自分の実力からすれば今が妥当だと思うからです(医員/40代男性/小児科)
  • 病理医が少ないので若くして役職者になれますが、万年部長で頭打ちといったところでしょうか(部長/50代男性/病理科)
  • 出世は望んでいなかったが、そこそこ自由にできる立場を得て満足です(その他:企業内診療所の管理医師/60代男性/外科)

できていない(「あまりできていない」「まったくできていない」の回答者)

  • 感染対策委員長や産業医、月曜外来を担当しているにも関わらず、まったく裁量権がなく責任のみを問われる(部長/50代男性/内科)
  • 学会で交流のある医師の多くは教授職であり、自分が彼らと対等に議論していることから考えると、本来は大学で講座を担当しているべきだが、そうはなっておらず、とてもではないが順調に出世しているとは言えない(フリーランス/50代男性/内科)
  • 業績が低く、こなしている仕事量も自分よりも少なく、学年も下の男性医師に常に先を越されている状態のため。女性はアピールしなければ、出世に興味がないと思われる。でも、アピールすると煙たがられる。なかなか難しいです(大学医局准教授/50代女性/放射線科)

出世に関心がない/わからない

  • 肩書きよりも診断・判断力、信頼性、手術技量、正確性を重視している(副部長/50代男性/整形外科)
  • 医師という職種に「出世」という言葉は当てはまらないと思っている。優れているかどうか?オンリーワンかどうか?を、患者や周りのスタッフが判断してくれればそれで良いのでは(医長/50代男性/整形外科)
  • 過去に大病院の部長や大学で病棟医長の経験もあるが、気苦労が大きかった(フリーランス/60代男性/産婦人科)
  • 30代でいわゆる「頂点」に上り詰めてしまいましたが、辛さばかりが募り、その立場は早々に放棄しました。ただ出世しないと上からの理不尽を拒否できません。今の私はいわば天下御免の立場で、これが一番幸せな環境だと思っています(その他:顧問/60代男性/脳神経内科)

出世するなら、自分の身の丈に合った選択を

これまで見てきた通り、本アンケートの回答からは、出世する医師は診療実績以上にタイミングや人柄が重視されていること、また最終的な役職にこだわらない医師も多いことがわかりました。そのため、近年では役職はあっても、その適任者がいないというギャップも生じてきているようです。最後に、出世や役職に関して、日ごろ思うことを述べていただきました。

出世・役職の仕組みについて

  • 出世するには、最近は学歴・学閥よりも、臨床あるいは基礎研究での実力と人柄と周囲との関係と謙虚さを重要視されるようになっている印象です。運とタイミングと上司・先輩からの引き立ても重要な要素ですので、日ごろから謙虚にひたむきに業務している姿を見せた方が良いです(大学教授/40代男性/内科)
  • 業績がなくても派閥やイエスマンで出世する傾向がまだ色濃くある。全体のモチベーションが下がり、これでは組織が弱くなっていき、世界に取り残されていくことを強く懸念する(部長/50代男性/内科)

出世・役職への個人的な思いについて

  • 出世や役職は、自分にとって、より高い地位を目指し続けていきたいと思います。どのポジションが幸せなのかは、試行錯誤しないとわからないのだと思います。一番不幸なのは、自分に合わない役職になることだと思います(部長/50代男性/精神科)
  • 望んで出世するのは難しい職業ですが、公的な病院で勤続年数が長いと自然と出世する方もいます。医師は医員でも給料は良いのであまり出世にあくせくしないで、のんびり過ごすのも良いのではないかと感じています(医員/50代男性/外科)
  • 本音は、出世はしたいです。しかし、家庭やプライベートを犠牲にしたくはありません。現状、出世は、家庭やプライベートを犠牲にすることと同じです。そうであるならば、不相応に出世をしようとは到底思えません。家族やプライベートを犠牲にしないで、出世できるのであれば是非出世したいです(部長/50代男性/精神科)

役職に関連するマネジメントや経営について

  • マネジメントに向いていない人が年功序列で役職に就くと経営が上手くいかなくなる。そういう例を見てきたので何とかしてもらいたい。自分も院長になるのは気が進まない(副院長/60代男性/脳神経内科)
  • 病院には管理責任体制が必要です。小生の病院のように医師が20人弱、従業員は450人程度の規模であれば、これまでなら、医師はある年齢になれば自動的に副院長、院長と役職に就くのが当たり前だったと思いますが、今後はよほどのことがない限り、上級職をやってくれる人がいなくなりそうです。医師本来の仕事以外の業務(財務、人事、病院運営、教育等々)を身につける機会がなかなかない。自分の後継者を見つける、育てることがなかなか困難で、自分には定年がなさそうです(役員・院長/60代男性/外科)

全4回にわたって医師の出世意向をご紹介してきましたが、出世や役職へのネガティブな意見も少なくないことがわかりました。ただ、現役職者からは、当初は想定していなかったやりがいを得られたという声もあり、実際に携わって初めて気付くことも多いようです。今後、もし出世のチャンスがあれば、前向きに検討してみるのも良いのかもしれません。

責任あるポジションで働きたい先生へ

診療科部長やセンター長、院長などの責任者を求めている医療機関が全国にあります。その内容も、診療科や診療所を立ち上げるフェーズのものから、成長中の部門を引き継ぐもの、部門再建などさまざまです。

そして最近では、実績あるベテランの先生だけでなく、未経験でも意欲さえあれば採用いただけるケースも少なくありません。

こうした責任者ポジションの募集は非公開であることが多いため、ご興味がありましたらご相談ください。

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