知識・経験ともに臨床スキルが高まり、チームマネジメントや若手の教育を担う40代。働き盛りにあたる40代の中堅医師は、どのような自己研鑽を行っているのでしょうか。自己研鑽をテーマにしたアンケート(※)から40代医師114名の回答を基に、実態をお伝えします。
※2021年2月6~13日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施
専門科はもちろん、周辺領域への広がりも
40代が取り組んでいる自己研鑽の内容は「専門科の診療に関する学習」(72.8%)が突出し、続けて「専門科以外の診療に関する学習」(41.2%)、「研究(文献検索を含む)」(36.8%)が上位となりました。
20~30代と比較すると「資格取得のための準備・学習」のランクが下がり、代わりに「専門科以外の診療に関する学習」の順位が上がっています。40代では専門医等の資格を取得した次のステップとして、専門科の周辺領域にも知見を広げ始める人が多いのでしょう。
自己研鑽を行う理由には、以下のような回答が得られました。勤務先に求められる義務感もある一方、自身が納得しながら取り組みたい気持ちが見られました。
- がん専門医療機関に勤務しており、必須の業務(男性/外科)
- 2021年2月から教授に就任したことがきっかけ(男性/救急科)
- 今のうちに取れる資格は取っておきたい(男性/リハビリテーション科)
- 他の科にお願いすることなく、自分で全部診たいから何でもできるよう勉強しています(男性/皮膚科)
- きっかけは自分の専門領域で治療に必要な技術の習得が必須だったため。その後は、自分のスキルアップと最新の治療ができるようにアップデートする必要があるため(男性/小児科)
40代は、時間も費用もほどほど
続いて、自己研鑽にかける時間や費用、自己研鑽に取り組むタイミングについて見ていきましょう。
自己研鑽にかける時間は意見が分かれ、1週間あたりで最多は「1~5時間未満」(36.0%)、続いて「5~10時間未満」(28.1%)、「1時間未満」(24.6%)となりました。20~30代は10時間以上かける人が30.9%いましたが、40代では11.4%と、自身に無理のない時間で取り組んでいる方が多いようです。
自己研鑽の費用は「5,000円未満」(50.0%)だけで半数を占め、「5,000~1万円未満」(28.1%)を含めると78.1%に及びます。40代はそれほどお金をかけずに自己研鑽に取り組んでいる人が多いことがわかりました。
続いて、自己研鑽に取り組むタイミングは「勤務時間後」(42.1%)と「空き時間」(38.6%)が上位を占めました。資格取得後の一定期間は試験日や提出期限などに左右されなくなるため、自分の好きなタイミングで取り組む人が多いのではないでしょうか。
学びをすぐ実践し、自他に影響を与えられる
最後に、自己研鑽に取り組んで良かったことは「新たな知識・スキルが身に付いた」(43.0%)と「仕事の質が高まった」(43.0%)が同率1位となりました。働き盛りの40代は、学習したことを仕事ですぐに実践、あるいは教育することで、その効果や実感が得られる人が多いのかもしれません。
自己研鑽に関する具体的なエピソードには、自身の学びが周囲にも良い影響を与えている様子が垣間見えました。
- 様々な媒体で発信すると批判されることも多いが、新しい知見を学べる(男性/救急科)
- 子どもを英語で叱るため、あまり感情的にならず、親子喧嘩が減った(感情的になるほど堪能でないから考えながら話す)。子どもはやたらリスニングができる(女性/内科)
- 自分一人で診断、治療法も決められるようになり、自信が持てました(男性/皮膚科)
- 平社員だが実質、頭頸部癌治療の責任者をしている。他科からも相談が来る(男性/その他:頭頸部外科)
- 小児科でこの領域を専門とする医師が少ないので、著名な先生方ともすぐに親しくなれた。その後、学会関連の仕事や講演等が回ってくるようになった(男性/小児科)
医師は、一生涯にわたって自己研鑽が求められると言われますが、人生100年時代を考えると、40代は折り返し地点ではなくまだ往路なのかもしれません。自身の役割や興味・関心をもとに、無理なく続けられると良いのではないでしょうか。
- 週10時間が当たり前?若手医師の研鑽事情―医師の自己研鑽vol.1【20~30代編】
- 人生100年時代に備える!40代に必要な学び―医師の自己研鑽vol.2【40代編】【本記事】
- 50歳過ぎても医師が研鑽を続ける理由―医師の自己研鑽vol.3【50代以降編】
- 医師7割弱「補助ある」…研鑽=労働には賛否―医師の自己研鑽vol.4
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