価値観が多様化し、出世して役職を得ることにこだわらない人も珍しくありません。今回は674名から回答を得たアンケート(※)を基に、医師が「出世したいと思わない」理由や、出世して困ったエピソードをご紹介します。
※2021年1月9~16日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施
※本アンケートでの「出世」とは「現在より大きな権限を持ってより多くの人を巻き込み、より大きな仕事ができるようになること」と定義しています
出世には個人の向き・不向きも
vol.1では「出世したいと思わない」医師は44.3%で、世代別では50代以降でその割合が増えていくことがわかりました。
その理由について具体的に尋ねてみたところ、「自分に向いていないと思うから」(44.1%)を筆頭に、「仕事量が増えそうだから」(39.8%)、「プライベートを重視したいから」(38.1%)となりました。
やりたくない仕事もやらなければいけないジレンマ
続けて、医長クラス以上の方に出世しなければ良かったことも聞いたところ、1位は「特になし」で31.4%、次に「責任が増えた」(29.6%)、「仕事量が増えた」(23.2%)、「責任と給与・年俸が比例しない」(22.3%)が上位になりました。なお、1位が「特になし」だったのは、出世して良かったことも同様でした(参考記事)。
責任の伴う仕事が増える一方で、それらが正しく評価されないことに不満を感じる人が多いとわかりました。
合わせて、出世しなければ良かったと感じた時の印象的なエピソードは次の通りです。
責任が増えた
- 自分が直接関与していない診療の責任を問われる(部長/50代男性/小児外科)
- 勤務している医師の裁量権を削ったり、定年を超えた技術系職員の引導を渡したり、職員の譴責処分を行ったり、本来はやりたくない仕事を責務上行わなくてはいけないのが精神的になかなかタフなことです(役員・院長/60代男性/外科)
- いじめが原因で退職者が出た時、私は就任直後で誰が誰だか、被害者も加害者もわからなかったが「上が悪い」となった。トップとは何事にも全能であることを求められているのだと思いました(その他:顧問/60代男性/脳神経内科)
仕事量が増えた
- 指導の仕事が増えたため、オンコールが減った割に時間外労働が減らない(医長/30代男性/整形外科)
- 科の長になって、研修医/臨床実習学生の教育関係、院内の各種委員会など、臨床以外の雑務が一気に増えた(部長/50代男性/内科)
- 部下の医師の医療事故対応を行った(副院長/60代男性/呼吸器内科)
責任と給与・年俸が比例しない
- 病理解剖など診療報酬が発生しない、ほぼボランティアの仕事がどんどん増えた。たまに遅れたりできなかった時は、感謝されるどころか文句を言われる(部長/50代男性/病理科)
周囲との人間関係に悩まされた
- 非常に問題のある部下の扱いについて、院長から対応を丸投げされて頭を悩ませることが増えた(部長/40代男性/精神科)
プライベートの犠牲が増えた
- 完全休暇はほぼなし(部長/50代男性/外科)
- 管理者として毎日ある程度の緊張がある(院長/60代男性/内科)
- 救急で呼び出されれば行くが、旅行中にも電話があり断るのが心苦しい(部長/60代男性/放射線科)
役職者になると、自分が直接関わっていないことにも責任が問われたり、診療以外の業務が増えたりすることに物理的・精神的な負担を感じるようです。vol.4では医師が出世するために必要なことや、出世の進捗などについてお伝えします。
- 40代が分かれ目?医師が出世する意義―出世意向アンケートvol.1
- 医師の出世、目的を実現できる割合は?―出世意向アンケートvol.2
- 「感謝どころか文句」4割の医師が出世に後ろ向き―出世意向アンケートvol.3 【本記事】
- 実力?運?医師の出世に必要なこと―出世意向アンケートvol.4
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