数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』(手塚治虫)。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「白い目」より、医師の真価について考えます。
大病院のオペに、異質な医師が参入
今回のストーリーは、権威ある大病院が舞台です。肺塞栓と思われる患者にベテランの酒鬼原医師が手術を行うも、たびたび再発。患者の希望でブラック・ジャックが招かれ、再手術を執刀することになりました。しかし、自分に治せない患者の手術を、無免許のブラック・ジャックに任せることに、酒鬼原医師は忸怩たる思いを抱きます。「最高権威を誇る大病院も モグリの医者も同じ値打ちだというわけか……」と助手の医師たちを前に心情を吐露していました。そのため、酒鬼原医師はブラック・ジャックの手術中にあれこれと口を挟み、助手もそれに同調します。ついには全員が“白い目”を向けてきますが、その時、ブラック・ジャックがとった行動は――。
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自分の医療を否定されたら
このストーリーに近いことは、医療現場で少なからず起きているのではないでしょうか。
手術チームにブラック・ジャックのような医師が入ることはないにしても、別のキャリアを歩んできた医師が、ある日、転職というかたちで参入することは珍しくありません。新たな医師が、既存の医師たちと違う診療方針や手術手技を持っていた時、その“真価”はどう判断したらいいのでしょうか。また、上司や周囲の医師が1人の医師に“白い目”を向けた時、あるいは自分自身が“白い目”で見られる側に立った時、どういった身の振り方ができるでしょうか。
この物語の場合、酒鬼原先生は自らの手術スキルに限界を感じながらも、オペでの協調精神を重んじたり、患者のことを第一に考えたりする様子が垣間見えます。一方、ブラック・ジャックは手術スキルに長け、最終的には成功させるものの、終始独りよがりのままオペを進めています。両者ともに真価の高低は断言しづらいでしょう。
また、ストーリーの中盤、ブラック・ジャックは酒鬼原医師が手術をした跡を見て、通常通りのオペではなく、治療法を抜本的に変えなければはならないと気づきます。
その事実を突き付けられた酒鬼原医師の心境は複雑です。酒鬼原医師は患者の安全を第一に思うからこそ、常識外れなオペをしていません。そんな中、ブラック・ジャックの言動を目の前にした時、権威ある大病院の医師というプライドと、自分の医療が否定された悔しさ、加えて「なぜ問題が生じたのか」という探究心とが渾然一体となって降りかかるのです。「もし、自分が酒鬼原医師の立場だったら……」と想像しながら読むと、よりストーリーの深みを感じられることでしょう。医師の世界は実力勝負でありながら、チームの結束も求められる。相反する要素のバランスの上に成り立っていることを示唆するストーリーでもあります。
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