「グループ病院」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。売り上げノルマがある、離職率が高い……そうしたイメージがあるとしたら、誤解かもしれません。グループ病院で働くメリットやデメリット、実際の転職事例について、医師人材紹介会社のコンサルタントが語ります。
そもそもグループ病院とは?
グループ病院の明確な定義はありませんが、概ね10施設以上を抱える民間の医療グループの病院を指します。一部の大手医療グループの本院は300床以上の大規模病院で、三次救急医療を担っています。しかし、多くは100~200床規模のケアミックスや、二次救急医療の病院です。
ガバナンスが効くことのメリット、デメリット
医師人材紹介会社のコンサルタントは、グループ病院のメリットについてこう語ります。
「グループ病院は法人規模が大きいため、収益性が安定しており、労働環境が整備されている傾向があります。グループによっては看護学校を経営しており、看護師の質が標準化されています。学会参加費や住宅手当、退職金など制度面も整っています」
また、組織としてのガバナンスが機能しているのも特徴的です。
「本院を中心とした統制があるわけでなく、各病院の各部署が主体性を持ち、診療に関する意思決定や合意形成をする環境があります。むしろ、単独の民間病院は経営者のトップダウンが強いように見受けられます」
一方のデメリットは、給与や労働条件についてやや融通が利かないことが挙げられます。
「ガバナンスが機能しているために職員の評価基準が決まっており、“特別扱い”があまりないのです。単独の民間病院などでは、経営者の判断で破格の待遇が認められることもありますが、グループ病院では期待できません。ただ、グループ病院であっても、育児中の女性医師への配慮など、ある程度、柔軟な働き方は可能です」
「厳しいノルマ」は本当に存在するのか?
グループ病院といえば、“売り上げノルマが厳しい”“離職率が高い”というイメージがあり、不安に感じる医師もいるかもしれません。
「確かに、一昔前はそうしたグループ病院も少なくありませんでした。しかし、最近ではめったにないようです。診療科ごとに売り上げ目標が設定されていても、不必要な検査や治療をするよう言われることはありません。目標を達成できないからといって、医師が減給されるという話も聞きません」
もともと民間病院は、国公立や公的病院より医師の入れ替わりが多いものです。離職率の高さは、グループ病院に限った傾向ではありません。
「管理職クラスの医師がグループ内を異動することはままありますが、基本的に本人の意思が尊重されます。多いのは、年齢の高い医師が、自身の体力を考えてグループ内の急性期病院からケアミックス病院に異動を希望するケースです」
プライベートの時間を増やすためグループ病院に転職
以下は、実際にグループ病院に転職した医師の事例です。
幼い子どもと一緒に過ごす時間を増やすために転職を決意。前職は大学病院勤務だったため、民間より公立病院を希望していたが、公立病院の多くは医局派遣の医師で埋まっており、選択肢が少なかった。医師人材紹介会社に相談したところ、希望条件と合致した病院の一つとして、大手医療グループのケアミックス病院を紹介された。
「グループ病院は売り上げノルマがあるのでは」と聞いたことがあったが、面接を受けると誤解であることがわかった。希望する医療機器の導入にも応じてもらえ、診療環境にも問題はない。前職より残業時間が少なく、オンコールもない。当直はあるが、回数は大幅に減った。入職後は、自分のライフスタイルに合った働き方ができている。
ただし、大学病院と違って他院からの紹介患者ばかりではない。医師も集患について考えねばならず、そこは新たな課題であると感じている。
グループ病院の働き方についてはあまり情報がないこともあって、さまざまな噂や評判が立ちやすい傾向があります。しかし、噂だけで判断せず、実際に見学をしたり、コンサルタントから情報を得たりしてみると、「実は希望条件に一致していた」という展開が待っているかもしれません。
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