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産業医への転職事例。病院への転職とどう違う?―医師の転職カルテvol.8

2018年10月3日

企業の従業員の健康を守り、近年では企業の健康経営の担い手としても期待される産業医。臨床以外のキャリアを考える医師に、以前から人気のある働き方です。企業と医療機関とでは、転職活動の流れや入職後のポジションが異なります。医師人材紹介会社のコンサルタントが、実際の事例を交えながら解説します。

2~3次面接も当たり前。同時に応募する医師も多い

医師人材紹介会社を利用して医療機関へ転職する場合は、コンサルタントが匿名のキャリアシート(経歴書)を応募先に提出し、募集するターゲットと大枠合致していれば面接の流れとなります。通常、面接は1回で、この時点で内定が決まることがほとんどです。一般的には、同じタイミングで応募する医師はいないか、いても2~3人と少数。医師を選別する面接というより、人柄を確認して条件などをすり合わせる“面談”の場であることが多いのが現状です。

一方、産業医として企業へ転職する場合は、この流れが少し異なります。まず、匿名ではなく実名を記載した履歴書を企業に提出し、書類選考で通過すると、その後の面接は2~3次まであるのが普通です。1次面接は就業する事業所で現場担当者が面接を行い、2次面接以降は本社のある地域(東京など)で役員や経営層の面接となることが多いようです。
同時期に応募する医師も多く、通常は3~5人ほど。都心部で人気の高い企業では10人前後になることもあります。その中から、企業が自社に適した医師を選別します。医療機関と異なり、面接にコンサルタントが同席できないことも少なくありません。そのため、医師自身がこれまでのキャリアや志望動機、今後のビジョンについて説明する必要があります。
「企業の面接では、人柄やコミュニケーション能力、職場にうまく適応できそうかなどが重視されます。また、医師であってもほかの従業員とポジションは並列です。医療機関のように医師をトップとしたヒエラルキーはないことを、あらかじめ理解しておく必要があります」(コンサルタント)

これまでの経験が歓迎され、現在は統括産業医に

以下は、実際に産業医に転職した医師の事例です。

Case1. 大学勤務→専属産業医(メーカー) 50代の男性医師
大学に役職付で勤務しながら、非常勤で産業医を務めた経験があった。50代になって今後のキャリアを考えた時、教育と臨床以外に選択肢があるのかを知りたくなり、医師人材紹介会社に相談。コンサルタントから産業医を提案され、興味を持った。
応募先の企業は、通常、現場→部長→役員クラスの流れで3回の面接を行う。しかし、このケースの医師は、非常勤で産業医を務めた経験や知識、現在のポジションを考慮され、1次面接から部長、2次面接に現場、3次面接に役員クラスという変則的な面接となった。
現在は統括産業医として活躍している。従業員が重い疾患にかかった時には、医師がこれまでに培ってきたコネクションを活かして医療機関を紹介し、感謝されている。

家族との時間を確保するため、未経験で産業医に転職

Case2. 一般病院勤務→専属産業医(製造業) 40代の男性医師
長年、外科医として一般病院に勤務していたが、離れて住む母親が体調を崩したことから、実家近くへ転居することにした。しかし、外科医のまま医療機関に転職しても、勤務時間が長いことが予想され、母親をサポートしにくい。そのため、オンオフが明確な産業医になることを考えた。
すでに日本医師会の認定産業医は取得していたが、実務経験はなかった。医師人材紹介会社に相談すると、実家近くで未経験可の求人を紹介された。
1次面接は統括産業医が面接官で、ほかの産業医のバックグラウンドや勤務内容などを説明された。統括産業医も外科系の出身だったため、自身の転職経験談を詳しく聞くことができた。企業側は「産業医として未経験でもよいが、長く働いてほしい」と慎重な姿勢で、「臨床に戻りたくならないか?」を重点的に聞かれた。2次面接は部長クラスが面接官で、1次面接の内容を前提に話が進んだ。結果、無事に内定を得ることができた。

Case2の医師は、日本医師会の産業医講習を修了されていましたが、資格証の交付が入職日までに間に合いそうにありませんでした。そこで、医師会および労働局に事情を説明し、資格証を入職後に提出することで理解を得ました。日医の産業医講習を修了しても、すぐに資格証の申請をしない医師は意外といらっしゃるようです。発行には最長で3カ月程度かかることもあるため、産業医を希望する医師は早めに申請しておくとよいでしょう。

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