介護老人保健施設(老健)とは、在宅復帰を目指す高齢者が一時的に入居しリハビリテーションや医療的ケアを受けるための施設で、病院と自宅の中間的な役割を持つ。入所定員100人あたり常勤医師1人の配置基準が定められている。医師は施設長として、介護職、看護師のほか、理学療法士や作業療法士などと協働しながら入居者の在宅復帰や施設の運営に当たることが求められる。
老健で働く医師(施設長)の役割・業務内容とは
老健施設で働く医師は施設長として、入居者の健康管理や他職種への療養・治療の指示出しなどに取り組む。当直やオンコールなどの業務が少ない分、体力的な負担も少ないとされ、セカンドキャリアとして老健への転職を考える医師は多い。
一般的に施設側が医師に求めるのは、臨床スキル以上に「人柄」。施設長という立場につく医師には、医療職はもちろん、介護職やケアマネージャーなど多岐にわたる職種とのコミュニケーション能力が求められる。
臨床スキルの面では、診療科目は問わず広範な専門を持った医師が活躍しているのが現状であり、問診・視診・触診・聴診・打診といったフィジカルアセスメントを適切に行える、プライマリ・ケア領域の診療が必要とされる。ただ、病院などと比べると、医療機器などの設備が整っていないことも多いほか、診療報酬ではなく、介護報酬で請求が行われる分、老健内で行える医療行為は臨床現場ほど広くはなく、この点についてギャップを覚える医師もいる。
老健で働く医師の年収、待遇は?
エリアにもよるが、老健施設で働く医師の年収相場は約1200万円-1400万円程度。
一般的な医療機関と比べると水準は高くないものの、前述の通り負担が少ないことから老健勤務を希望する医師は多い。
前述の通り医師にとっては「負担の少ないセカンドキャリアの場」として認知されている向きあるが、制度の隙間ともいえる、「病院と自宅の橋渡し」を担う老健施設が果たす役割は大きい。QOL重視の医師や「患者とじっくり向き合いたい」といった志向性を持った医師には適した勤務地と言える。
老健の求人を医師が探す際のポイント
制度上の位置づけは「病院と自宅の中間的役割を担う」ことが求められている老健だが、2013年に厚生労働省が発表した調査によると、入居者の平均在所日数は311日であり、在宅復帰を果たすのがなかなか難しく、長期の入居を余儀なくされる入居者も多いのが実情と言える(厚労省『介護サービス施設・事業所調査』)。
制度上は要介護1から入所が可能だが、厚労省の『介護給付費実態調査』によると、入居者の割合は要介護3-4をボリュームゾーンに、各段階の受給者が分布している状況。およそ6割の老健では看取りに対応している現状もあり、転職時にはこうした在所日数、入居者の要介護度、看取り件数なども把握し、施設の実情についてもよく確認をしておきたい。また、病院が併設されているか否かによっても臨床的なサポート体制は変わってくる。
- 在所日数
- 入居者の要介護度
- 看取り件数
- 医療サポートの体制
老健で働く医師の事例
“キャリアの脱線”の末に出会った老健施設長のやりがいとは?―介護老人保健施設とかち・施設長 森川利則氏
医師の間では「ゆったり働けるセカンドキャリアの場」として認知されている向きもある老健。介護老人保健施設とかち(北海道河東郡音更町)の森川利則氏は、長崎での血液内科医としてのキャリアの末に施設長に就任し、老健施設長という役割の可能性を実感しながら、精力的に活動している。森川氏が語る、老健施設長の面白さとは―。
すべては「家で死ぬ」ために。施設長経験20年超の医師が語る、老健のあるべき姿―介護老人保健施設しょうわ・施設長 佐藤龍司氏
「モットーはいかに家で気持ちよく死なせるか」。そう話すのは介護老人保健施設しょうわ(埼玉県春日部市)で施設長を務める佐藤龍司先生です。一見、無慈悲な言葉に映るかもしれませんが、医療と介護をつなぐため、死の手前にある「本人がどう生きたいか、家族がどう生かせたいか」にとことん向き合っているからこそ語れる言葉です。医局を5年で退局した後は、老健施設長一筋の佐藤先生。一体どのような思いのもとで老健を立ち上げ、運営し続けているのか、その根幹を伺いました。
医師として、ランナーとして。「マラソン」を追求する理由 ――福田六花氏(介護老人保健施設はまなす)
趣味のランニングが高じて、マラソン大会のランニングドクター、レースプロデューサーを務めている福田六花先生。消化器外科医としてキャリアをスタートさせ、現在は、山梨県にある介護老人保健施設はまなす施設長、山梨県老人保健施設協議会・会長として活躍しています。ランニングが医師業に与えた影響、キャリアの変化や拡がりについて取材をしました。
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