国内最大の転職マーケットである関東エリアでは、時流に沿った新たな職場や働き方など、幅広い選択肢が用意されています。一方、求職者の数も多いため、希望の条件を満たす職場が見つかったとしても、応募者が多数集まってしまい、すぐに募集が締め切られてしまうこともあります。転職時期に希望がある場合には、情報収集や転職サイトへの登録を早めに行うことが大切でしょう。ここでは、最近増えている求人の動向やトレンド、求人応募にあたり注意するべきことなどを医師紹介コンサルタントに聞きました。
関東地方で増えている在宅医療
団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に向けて、長期入院を防いで自宅での療養を増やす「施設から在宅へ」という国の方針もあり、在宅医療に注目が集まっています。2016年から施行された厚生労働省による診療報酬の改定の影響もあって、診療効率の良い東京や周辺都市部に在宅医療専門のクリニックを作る医療法人が増えています。それに伴い、求人数も増えてきている状況です。今後ますます需要が高まっていくことが予想される、いわゆる医療経営のブルーオーシャンと呼ばれる領域となっています。現在は、求人に対して応募者の少ない売り手市場となっています。
在宅医療に応募時の注意点は?
診療にあたっては病院とは違い、環境患者の自宅あるいは介護施設などで、基本的には1人で患者と向き合わなければいけません。高度な検査機器なども身近にないなかで、患者の私的な部分も含めて、さまざまな対応ができるジェネラリストとしての役割が求められます。
訪問にはドライバーや看護師などのスタッフが付く場合もありますが、法人によっては運転も含めて全て1人で行うケースや、診療補助のみを行う無資格のスタッフと2人で行うケースもあります。
オンコール体制についても、看護師がはじめに対応してから医師にパスするような2段階対応をしているところもあれば、基本的には医師が24時間365日オンコール待機、といったところもあります。看取りについても、法人によって方針が異なり、患者が求めたときには必ず行うように指示する法人もあります。
訪問診療ならではの勤務実態については、転職活動の際にきちんと把握しておく必要があるでしょう。
年収水準は高く、一般のクリニックが年収1200万~1400万円なのに対し、訪問診療では年収1800万円以上となっています。また、夜間対応等が多ければ2100万円程度まで上がることもあります。在宅医療に興味がある、あるいは年収をアップさせて開業に向けた資金を貯めたい等の医師におすすめです。
在宅診療のクリニックはさまざまな場所に建てられているため、自宅近くで勤務したいという場合には、病院での勤務よりも希望が叶いやすいでしょう。
東京ではゆるやかな働き方を実現しやすいクリニックに人気が集中
子育てをしながら働きたい、家庭と両立できるゆるやかな働き方をしたいといった希望や、年齢的な不安から無理のない勤務をしたいといった場合に選択肢に入ってくるのがクリニック。当直がないところや、希望する勤務日数を実現しやすいなど、プライベートの時間を調整しやすいのが特徴です。また、人間関係に左右されず、患者と向き合う診療に注力したいといった理由から、クリニックへの転職を選ぶ医師もいます。東京では今、こうしたクリニックが求職者に人気で、求人が出ると比較的早くに募集が終わる状況となっています。
地方では開業医1人で運営しているクリニックが多い中、都内で医師募集をしているクリニックは複数名体制の法人が多く、数人で協力しながら診療を行っているケースもしばしばあるため、ゆるやかな働き方が叶えられる傾向にあります。ただし、勤務条件については院長の方針に左右されることが多いので、転職エージェントを経由するか、あるいは面接時に直接、確認する必要があるでしょう。また、クリニックは内定通知が出てから勤務開始までの期間が短く設定されることが多いのが特徴です。退局時期を見越した転職活動が必要になるでしょう。
東京以外の地域ではクリニックの数自体があまり多くなく、求人数も少ない傾向にあります。そのため病院での採用がメインとなります。
定年前後の医師に人気の老健
定年後は負担を抑えてゆったりと働きたい、という医師に人気なのが老健(介護老人保健施設)の施設長です。入所者の在宅復帰に向けた健康管理や、看護師や理学療法士など他スタッフへの療養・治療の指示出しなどを行うのが主な仕事で、場合によっては看取りを行うこともあります。
9時から17時など決まった時間内での勤務に収まることが多く、当直がなかったり、オンコール体制がなかったりと体力的な負担が少ないのが特徴です。年収は1200万~1400万円と、医師の平均的な年収と比べて決して高額ではありませんが、負担の軽さからセカンドキャリアとしてゆくゆくは施設長に……、と考えている医師も多いようです。
しかし、前述したように、老健の施設長は転職市場においてとても人気が高く、ポストに空きが出ればすぐに埋まってしまう状態です。さらに、転職スパンが比較的短い急性期病院と違い、自身の健康への不安等がなければ長く勤務したいという医師も多いため、ポストの空きはあまり出てきません。また、人気の高まりとともに、できるだけ若手の医師を採用しようと考える施設も増えてきています。老健への転職を考えている場合は、早めに判断して動くことがおすすめです。
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