大阪・愛知など、医療資源が豊富な大都市を抱える一方で、静岡などでは慢性的な医師不足が起こるなど、医師の偏在がみられる関西・東海地方。地域によって待遇が大きく異なるため、希望するキャリアに応じて働く地域の選択肢を広げることが、転職活動のポイントの1つになりそうです。地域ごとにどういった特徴があるのか、医師の転職支援コンサルタントに聞きました。(医局の影響力や関西・東海のおすすめエリアはこちら)
関西・東海地方で求人が多いエリアは?
厚生労働省の調査によると、2018年の大阪と愛知の病院数はそれぞれ517(3位)、323(8位)となっており、全国上位の施設数となっています。クリニックの数も大阪8481、愛知5404と多く、求人数はこの2つの府県が突出しています。愛知においては、名古屋医療圏に全体の約4割の医療機関が集中し、岐阜や三重からも患者が流入しています。
次いで求人数が多いのは兵庫、京都です。兵庫の病院数は353、京都は167と施設数自体は少なくありませんが、中核都市とその他の地域で医師の偏在が大きいという特徴があります。
一方、静岡は静岡市、浜松市といった2つの政令指定都市を有し、病院数も178で全国13位となっています。しかし、医学部を有する大学は浜松医科大学1校のみのため、県全域を当該大学の医局派遣でカバーすることは難しく、県外の医局や転職者に医師の供給を頼っている状況です。県内の半分以上の医療圏医療圏では医師が不足し、急性期の病院であっても求人が多く出ています。
その他の地域の病院数は岐阜100、三重94、和歌山83、奈良79、滋賀57です。人口・病院数ともに少ないことから求人数は限られますが、今後はへき地医療などの分野で増えていくことが予想されます。
大阪・愛知・兵庫・京都の医師の待遇は?
大阪・愛知・京都・兵庫の都市部は求人数が多いものの、転職希望者も多いため年収は平均的、あるいはやや低めの水準に留まることが多いでしょう。相場としては、若手医師であれば1000万円程度、ベテラン医師であれば1800万~2000万円程度となります。中でも京都市内の中京区や左京区などは特に医師が集中するエリアですから、年収相場がさらに低くなる傾向にあります。
福利厚生は社会保険のほか、学会参加の旅費や宿泊費の負担など、標準的な内容でしょう。
ただし地域内でも医師の偏在が大きいため、たとえば大阪なら南部、愛知では半田市や豊橋市といった医師が足りていないエリアでは、年収含め高待遇となる傾向にあります。
静岡・その他地域の医師の待遇
一方、慢性的な医師不足にあえぐ静岡の年収相場は全体的に高い傾向にあります。年収提示額としては全国でもトップ10に入り、医師確保が困難な地域では科目や勤務内容などにもよりますが、2500万円以上の提示がでることもあり、中には3000万円で転職した例もあります。
標準的な福利厚生以外にも、転居費用の負担や家賃補助、また単身赴任の場合なら、家族の居住地への帰省手当てが助成されることもあります。静岡は東京や愛知からのアクセスが良いため新幹線で通勤する医師も多く、新幹線の定期券代が支給されるケースもあります。
岐阜・三重・和歌山・奈良・滋賀では、医師が充足傾向にあるため、年収は平均的な水準に留まります。ただし、中小病院の総合診療科や救急科、あるいはへき地医療などニーズの高い領域・地域では、都市部よりも高待遇を提示される傾向にあります。福利厚生も、住居手当や転居費用の負担などが付加されるケースがあります。また、家賃相場や物価などが都市部に比べ低いため、都心部からの転職者にとっては年収が減っても実質的には増収につながる、という場合があるようです。
大阪・愛知・兵庫・京都に多い求人
大阪・愛知の都市部では医師が充足しているため、急性期病院の求人数には限りがあります。
一方で、近年のトレンドとして、訪問診療専門のクリニックがさまざまな地域に開所するなど施設数を伸ばしており、比例するように求人数も増えています。背景として、住宅が密集する都市部は訪問効率が良いことに加え、バッグベッドとしての病院が十分にあり、連携が非常にしやすい環境であることが挙げられます。国としても、医療費抑制の観点から在宅医療の強化を掲げているため、この流れは今後も加速していくでしょう。訪問診療を行う医師の年収相場は1800万円程度~と、相場よりやや高めに設定されることが多いようです。
兵庫・京都の都市部では医師が充足傾向にあるので、特に外科系の急性期病院の求人数は限られます。クリニックや都市部以外のエリアでの求人が比較的多いでしょう。
静岡・その他地域の求人の特徴
静岡は急性期病院を含む幅広い分野で求人が出ています。大学医局に入局せずに入職するのが難しいといわれる国公立病院でも応募できる施設が複数あり、他の勤務地では実現が難しい希望を叶えられる可能性があります。
また、へき地と言われる地域であっても、最近は主治医が1人で対応するのではなく、地域内で複数の医師が連携しながら診療するケースが増えています。ワークライフバランス重視の働き方を求めているからといって、へき地勤務をはじめから除外するのはもったいないかもしれません。
岐阜・三重・和歌山・奈良・滋賀といった地域では、急性期病院の求人は限られます。一方、総合診療医などジェネラリストとして活躍できる人材は歓迎されます。特に医師の足りてない医療機関では、幅広い疾患・事情を持つ患者に対応をする必要があり、総合力・コミュニケーション能力が求められるでしょう。
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