新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、2020年4~9月頃まで冷え込んでいた医師の転職市場。前回の記事では、10月以降回復するのではないかとお伝えしました。今回、編集部では改めて2020年10~12月にかけて、m3.comCAREERに寄せられたデータをもとに都道府県と各科の求人倍率と想定下限年収を集計。直近3カ月の市場動向と、コンサルタントによる今後の見通しをお伝えします。
2020年10~12月は多くのエリアで年収アップ
2020年の7~9月と10~12月で比較した、エリアごとの動向は上図の通りです。求人倍率は求職者1人あたりの求人数のため、高ければ高いほど、転職先の選択肢が豊富ということを示しています。また、想定年収の平均額は、医療機関から提示されている最低年収の平均です。実際は、経験やインセンティブによって金額がアップします。
7~9月は多くのエリアで年収が落ち込みましたが、10~12月は中部②、四国、九州・沖縄以外で上昇傾向が見られました。なお、中部②は横ばい、四国、九州・沖縄エリアも下げ幅は数万円のため、全国的に医師の転職市場は回復してきたと言えそうです。
30道府県で下限年収額が回復
続けて、都道府県ごとの傾向を見ていきましょう。
一覧化すると、多くの都道府県で求人倍率、下限年収(平均値)が回復したことがわかります。
7~9月と比べて求人倍率が上昇したのは22都道府県、下限年収(平均値)が上昇したのは30道府県と、転職市場が活気づいてきたことがわかります。中でも下限年収(平均値)の上げ幅は、秋田県で+119万円、石川県で+39万円、栃木県で+36万円と、大幅に年収額が上がった地域も見られました。
さらに、求人倍率・下限年収(平均値)ともに上昇したのは16道府県(※1)で、求人倍率・下限年収(平均値)ともに下降したのは8県(※2)でした。7~9月は前者が7府県、後者が28都道府県に及んでいたことから、地域差はあるものの、医師転職市場は2020年の夏以降、回復している地域が増えてきています。
※1 求人倍率・下限年収(平均値)ともに上昇した地域
北海道、秋田県、埼玉県、神奈川県、石川県、静岡県、三重県、滋賀県、大阪府、鳥取県、岡山県、広島県、愛媛県、高知県、福岡県、佐賀県
※2 求人倍率・下限年収(平均値)ともに下降した地域
岩手県、富山県、兵庫県、山口県、徳島県、熊本県、大分県、宮崎県
8科で好調な一方、新型コロナの影響が続く科も
診療科別でも、回復傾向が読み取れます。
診療科別で求人倍率・下限年収(平均値)ともに上昇したのは外科系(一般外科)、産婦人科系、皮膚科系、脳神経系、循環器系、放射線系、消化器系、腎泌尿器系の8科でした。年収の上げ幅は外科系が+69万円、産婦人科系が+29万円、皮膚科系と救急が+26万円で上昇しています。7~9月期の最大上げ幅が腎泌尿器系の+14万だったことからも、上昇幅が上がってきたことがわかります。
一方、眼科、糖尿病系、耳鼻咽喉科、小児科は、7~9月と比べて下限年収(平均値)の下げ幅が10万円以上となっています。中でも、外来中心の眼科、耳鼻咽喉科、小児科は7~9月期から引き続きマイナスのため、新型コロナウイルス感染症による受診控えが続いていることが予想されます。
転職希望医師が増える中、医療機関は経営難が継続
これまでデータで見てきた医師・医療機関を取り巻く転職市場動向について、エムスリーキャリアで医師の転職支援にあたるコンサルタントに聞きました。
求職者の動向
「例年10~12月は年度内転職が検討できる最後のタイミングですから、求職者が増える傾向にあります。2020年10~12月は急性期病院での負担増がきっかけで転職を考える人が多く、求職者数は前年同期比116%で推移しています。
この要因には、人材紹介会社を利用する医師が年々増えていること以外に、2020年は新型コロナの対応に疲弊した医師が出ていることも挙げられます。負担が増えているのは、新型コロナ患者を受け入れていない医療機関も同様です。例えば、感染防止のために常勤先以外での勤務(アルバイト)が禁止になると、今まで非常勤医にお願いしていた当直などが常勤医に回るのです」(医師転職支援コンサルタント)
医療機関の動向
「医療機関はコロナ禍の対応に慣れてきたため、採用活動に大きな変化はありません。
ただし、受診・手術を控える患者が増えていることに加え、コロナ受け入れ病院では他の疾患患者を従来通りに受け入れるのは難しいため、昨年同時期に比べて患者数は大きく落ち込んでいます。したがって、経営面では引き続き厳しい状況が続いており、契約打ち切りや減給、外来中心のクリニックでは閉院する施設も出てきています」(前出のコンサルタント)
診療科別の動向
「小児科や耳鼻咽喉科といった、外来を中心とするマイナー科目は採用を取りやめたり、競争率が上がったりする状況になっています。
一方、入院患者は一定数いますので、入院対応がメインとなるメジャー科目の需要に大きな変化はありません。ただ、先に述べたように医療機関は経営難のため、当直必須など、採用条件をより厳しく引き上げているところが増えています」(前出のコンサルタント)
例年、10月以降は年度内退職での急な空きが出るため、勤務条件の希望を受け入れてもらいやすい傾向にあります。しかし2021年1月以降、医師の転職に変化が訪れるかもしれません。前述のような経営難が続けば、一部の急性期病院を中心に、医師に求める条件も厳しくならざるを得ないためです。
問題は、今の危機的状況がいつまで続くのか分からないことです。さらに、医療機関によっても置かれている状況が大きく異なります。そのため、転職を検討しているなら、こまめに最新の求人状況などを確認することが求められるでしょう。
もしも希望通りの求人が見当たらないと思ったら、転職で叶えたいことを整理したり応募先を増やしたりすることで、転職活動を進めやすくなるかもしれません。
2020年7~12月にm3.comCAREERおよびエムスリーキャリアエージェントに掲載されていた求人約15,000件の情報のほか、エムスリーキャリアの人材紹介サービスに登録している求職者の情報を統計処理
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