いくら仕事が多忙でも、生活すれば家事は生まれます。今回は医師438人が回答したアンケート(※)から、医師家庭の家事分担や家事のこだわり、負担軽減策をご紹介します。
※2020年11月7~14日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施
理想は夫5割、しかし現実は1割
2020年版「男女共同参画白書」では、結婚して働く女性の家事時間は男性の2倍以上になっているとして、男性の働き方を見直し、家事や育児への参加を進めることが必要だと発表されました。この話題について医師家庭はどうなのか、既婚夫婦の家事分担比率の理想と現実を比較しました。
現在の家事分担比率で最も多いのは「夫10%:妻90%」で、続いて「夫0%:妻100%」、「夫20%:妻80%」です。どれも夫の割合が低いことが特徴で、夫が60%以上の比率はすべて合わせても8.2%と、多くの家事は妻が担っていることがわかりました。
一方、理想は「夫50%:妻50%」を筆頭に、妻への分担比率を減らしたい思いが垣間見えます。しかし、現在の家事分担比率と同様、夫60%以上の分担を望む医師は少ないことがわかりました。
現在の家事・育児の分担比率の満足度は「満足している」と答えた人が47.0%、「どちらとも言えない」が29.7%、「満足していない」と答えた人が13.0%と、全体的には不満を感じている人は少ないようです。
では、満足な分担比率をできている、あるいはできていない理由は何でしょうか。自由回答では以下のような意見が得られました。
とても満足している
- 夫の仕事がホワイト企業で、男性でも育児を理由に定時上がりしやすいこと(30代女性/リウマチ科)
- 夫が何でもできるので、お互い時間に合わせて必要な家事をしている(40代女性/消化器科)
- 配偶者はてきぱき動き、人に頼らず自分で行うことに満足している。いらない手を出さないほうが相手の家事ペースを乱さない(60代男性/脳神経外科)
満足している
- 妻は食事をメインに、私は掃除洗濯をメインに家事を分担しているが、うまく分担できている(30代男性/神経科)
- 家計の収入と子供たちの満足度を考えると現在の状態はベターと思いますが、もう少し自分の仕事が減ると妻の負担を減らせるので(40代男性/整形外科)
- お互いに納得できる働き方をしているつもりです。夫と息子は共通の趣味もあり、その分育児の負担は軽減されました(50代女性/内科)
- それぞれの得意なところをやってちょうど良い感じに分担できているので。これはどっちがやるなどと決めてしまうと、かえって負担になってうまくいかなくなると思う(50代女性/眼科)
- できている。朝は私の方が強いのでもっぱら朝・昼食は準備しています(60代男性/肛門科)
どちらとも言えない
- お互いに日によって仕事量が異なるため、なかなか一概に良好な分担とならないから(40代男性/小児科)
- 元気な時は良い分担比率だが、体調を崩した時でも替わろうとしてくれないから(40代女性/内科)
- 妻の家事負担に配慮しています。食事はすべて自分で済ます(3食)等々(50代男性/泌尿器科)
- 家事もやりたいとは思うが役割分担で稼ぐのが第一(60代男性/脳神経内科)
- 帰宅時間が遅く、協力できていない(60代男性/消化器科)
あまり満足していない
- 私の方が勤務時間の調整ができない環境にある(30代男性/脳神経外科)
- 朝は自分より先に出勤、帰宅も自分より遅いため、必然的に食事の準備、片付けが私になってしまう。休日の掃除やごみ捨てはやってくれるが、100点ではない(40代女性/整形外科)
- 自分の本業が優先されており、家事等の部分が疎かになっています。子供は成人しており、あまり手がかからないのですが(60代男性/科目未回答)
まったく満足していない
- 協力する気持ちが相手に全く無い(40代女性/小児科)
- 夫が帰れば、家事はすべて夫というのが分担らしいが、本当は、仕事の質量で変動させるべき(40代男性/脳神経内科)
- 仕事があまりに多忙なため(50代男性/消化器科)
「とにかく時短」家庭内でできる範囲を模索
ここからは現在、誰がどの家事を担当しているのか、具体的に見ていきましょう。
夫の担当で多いのは「ゴミ出し」(35.2%)、「家計管理」(21.7%)、「浴室やトイレの掃除」(19.4%)です。妻よりも夫が実施している割合が多い家事は「ゴミ出し」のみでした。一方、6割以上の家庭で「料理」(69.9%)、「洗濯」(61.2%)は妻が担当しているようです。
食材・日用品の買い物、食器洗い、部屋の掃除はいずれも夫より妻の割合が多いものの、半々で分担している家庭が2割以上ありました。
医師家庭の家事分担では、以下のようなことを心がけているようです。
我が家の家事のこだわり
- とにかく時短できること。クオリティは大体でも良い(30代女性/リウマチ科)
- 子育てにはなるべく関与する。仕事もできるものはなるべく自宅のリビングで座って行う(30代男性/消化器科)
- 自分のこだわりを相手に押し付けない。こだわりたいことは、こだわりたい人がやる(30代女性/精神科)
- 一応医者の端くれなので、栄養バランスは考えて料理しています(40代男性/内科)
- 家事で負担を掛けている分、経済的な負担は多く負う(40代男性/脳神経外科)
- 夕食後、子どもを寝かす側と、食器の洗い物側に分かれる(40代男性/泌尿器科)
- 朝食はとにかく野菜を多めにする(50代女性/内科)
また、パートナーと家事のやり方等で不満を感じる時は、以下のような例が挙がりました。とはいえ、「特にない」という意見も多く、しっかり理解し合えている、あるいは諦めてしまった家庭もあるのではないかと推察されました。
パートナーの家事への不満
- お金で解決しようとしてしまっている(30代男性/脳神経内科)
- やりかけが多い、そしてやりかけたことを忘れている(30代女性/放射線科)
- 食器洗いの際に、油物と非油物を同じトレイの中に入れてしまうこと(40代男性/脳神経内科)
- 何もしないのは良いが、余計な仕事を増やすこと。必要以上に片付けないとか、必要以上に汚す、とか(50代男性/外科)
- 仕事をやりきった後のパートナーの肩や背中を揉まなければならない(60代男性/脳神経外科)
- 手伝って少しやり方が違ったりすると文句を言う(60代男性/耳鼻咽喉科)
続いて、家事・育児の負担軽減のために工夫していることも聞きました。上位は「手を抜けるところは手を抜く」(37.0%)、「パートナーと協力する」(30.8%)となり、「特になし」も26.0%で3位にランクインしています。実家や親族、家族以外の第三者に頼むよりも、手を抜いて、自身の家庭内で回せるように工夫していることがわかりました。
その他には、「外食する」「ネットスーパーや宅配を使う」「子どもたちにも手伝ってもらう」という意見も見られました。
妻に家事負担が集中している家庭が多いようですが、それぞれで試行錯誤している様子がわかりました。後編では、キャリアと家事育児の関係性について考えます。
- 「時間がない」働く医師の家事事情―医師のキャリアと家事育児(前編)
- 夫0%の家庭も。医師家庭の家事分担―医師のキャリアと家事育児(中編)【本記事】
- 子育て世代が苦悩…医師のワークライフバランス―医師のキャリアと家事育児(後編)
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