1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. キャリア事例
  4. 事例
  5. 病院内から日本全国へ広まった、医師の思い―医師と2足のわらじvol.11
事例

病院内から日本全国へ広まった、医師の思い―医師と2足のわらじvol.11

2019年2月7日
ボーカル・バイオリン担当のToshi先生(左)、ギター・作詞作曲担当のJyun先生(右)

臨床医として働きながら音楽活動を行うToshi先生とJyun先生の2人組ユニット『Insheart(インスハート)』。医療の力が届かないところで患者さんを癒したいという思いから始めた小さな活動が広がり、いまではコンサートのチケットがなかなか取れない人気ユニットに成長しました。世間からの注目を集めるお二人に、医師として音楽活動を行う思いを伺いました。(取材日:2018年12月15日)

臨床で感じた思いを音楽に託して

――どのような経緯で、いまのような音楽活動を始めたのでしょうか。

Toshi(以降T):Jyunと私は大学の同級生で、軽音楽部の同じバンドに所属していました。大学卒業時にバンド活動はやめていましたが、卒業後にJyunと話をした時、何とか一命を取りとめて身体の健康を取り戻しても、元気にならない患者さんたちをお互いに多く診ていることが分かりました。その方たちに何かできないかと思い、病院内で演奏をしたのがきっかけです。

Jyun(以降J):その活動をメディアの方に取り上げてもらって、少しずつ多くの方に知っていただけるようになり、今に至ります。様々な団体、当事者の方から楽曲制作の依頼もいただくようになって、曲のレパートリーも増えていきました。私は中学3年くらいからギターを始めたのですが、独学のせいか、私が作る曲はメロディーやコード進行が独特だと言われることが多いです。

作詞は、テーマによっては患者さんに取材をして行います。たとえば、「明日も咲くひまわり」という曲は、乳がんになったお母さんとそのご家族がテーマです。制作にあたって、お子さんをもつ乳がん患者さんにお話を聞かせていただきました。

当直なども対応

演奏中のInsheart

――臨床医の仕事と音楽活動は、どのような比重で行っているのでしょうか?

T:私たちは、医師として働くことが大前提。医師としてフルタイムで働いて、当直なども行っています。そのため、音楽活動は必然的にほぼ土日のみ。二人の空き時間が合えば、そこにInsheartのスケジュールを入れて活動しています。

J:細々と始めた活動がこんなに大ごとになるとは、全く予想していませんでした。「最近有名になってきているし、音楽をメインにやっていくのでは?」と聞かれることもありますが、それは100%ありません。2人ともスタンスは医師であり、音楽活動は医療でアプローチできないところを補うものと考えて活動しているからです。

T:もともと私たちの音楽は、患者さんに向けて届けていました。しかし病院の外にもこの音楽を必要としてくれる人がいるかもしれない。その曲が人生の救いになる方が、一人でもいるかもしれない。その方に届けるために、私たちがどのような思いで音楽活動をしているかを知ってもらうことも必要なのではないかと考え、メディアに出させていただいています。

音楽活動を通じた気付き

――音楽活動が医師の仕事に与えている影響はありますか?

J:コンサートに来てくれた方の話を聞くと、医師に対して近寄りがたいイメージを持っている方でも、演奏後には気軽に話しかけてくれることが多いです。そのような場で話をすることが、患者さんの気持ちや本心をより理解することにつながるので、音楽活動は医師をする上でもプラスに働いていますね。曲を聴いた方から「自分のことを歌ってもらっているようだった。どうして私の気持ちが分かるんだろう」といったコメントをいただくと素直に嬉しいですし、励みになります。

T:音楽で表現するのは「患者さん側の心」であることがほとんど。それを表現するにあたり、患者さん側のことをより深く考えられるようになりました。
医師には統計的・論理的な考え方が求められます。一方で、患者さんの気持ちは必ずしもその通りではありません。そこに寄り添いきれていないと自省する気持ちも持っているので、音楽活動を通して患者さんの気持ちに少しは近づくことができているのかなと思っています。

医療施設での演奏活動(写真提供:Insheart)

――今後の展望について教えてください。

T:ありがたいことに、Insheartを知ってくださる方が増えたことで忙しくはなっていますが、あくまでも医師業を最優先に、いまの活動をできる範囲で粛々と行っていきたいです。医師としても、音楽家としても、より専門性が発揮できるように勉強し続けたいと思っています。

J:Toshiと同じく、医師が原点という気持ちのもと、活動を続けていきたいですね。もちろん、「コンサートに来てください」という声があれば、できるだけ足を運びたいと思っています。そこで喜んでくれる方が一人でもいるのであれば、結果的にその人を元気にすることにつながるのですから。

Insheart(インスハート)

現役医師ToshiとJyunによるユニット。ボーカルとバイオリンはToshiが、ギターと作詞作曲をJyunが担当している。2015年からInsheartとしての活動を開始し、活動内容がプロミュージシャンやメディアに注目され、病院や施設、学校での演奏・講演やワンマンコンサート、音楽フェスへの出演など、活動のフィールドを広げている。2019年3月には福岡・東京・大阪でのワンマンツアー開催が決定。
公式HP: http://artist.aremond.net/insheart/

従来の価値観に とらわれない働き方をしたい先生へ

先生の「やりたい」を叶えるためには、従来の働き方のままでは難しいとお悩みではありませんか。

  • 医師業と、自分のやりたいことを兼業したい
  • 病院・クリニック以外で医師免許を生かして働きたい

もし上記のようなお考えをお持ちでしたら、エムスリーキャリアのコンサルタントにご相談ください。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

この記事の関連キーワード

  1. キャリア事例
  2. 事例

この記事の関連記事

  • 事例

    オリンピック出場を目指す研修医の思い―医師と2足のわらじvol.19(後編)

    初期研修医と世界クラスの山岳ランナーという二つの顔を持つ髙村貴子先生。今シーズンからは山岳スキーも始め、年間を通じて山を駆ける髙村先生は、将来にどんなビジョンを描いているのでしょうか。医師として、山岳ランナーとして目指している場所を伺いました。

  • 事例

    研修病院決定の決め手は「そこに山があったから」―医師と2足のわらじvol.19(中編)

    長野県で初期研修医として働いている髙村貴子先生は、国内では敵なしの実力をもつ山岳ランナーでもあります。初出場したレースでいきなり3位に入賞したのが医学部2年生のとき。ときには海外にも転戦する山岳ランナーと医学生をどのように両立してきたのでしょうか。卒試・国試を控えた6年生のときの過酷なエピソードや研修医生活との両立についても伺いました。

  • 事例

    国試の前は地獄…山岳ランナーと医学生の両立―医師と2足のわらじvol.19(前編)

    長野県で初期研修医として働いている髙村貴子先生は、国内では敵なしの実力をもつ山岳ランナーでもあります。初出場したレースでいきなり3位に入賞したのが医学部2年生のとき。ときには海外にも転戦する山岳ランナーと医学生をどのように両立してきたのでしょうか。卒試・国試を控えた6年生のときの過酷なエピソードや研修医生活との両立についても伺いました。

  • 事例

    エンジニア、研究者を経て“ゴール志向じゃない自分“を肯定―医師と2足のわらじvol.18(後編)

    医学部を卒業後、ゲノム研究者とエンジニアを両立する日々を送っていた鈴木晋氏。「臨床がわからないと研究も深まらない」と考え、スキップしていた初期臨床研修を受けようと決意しました。その後、大学院でのプログラミングを用いた医学研究を経て、「治療アプリ」を研究・開発する株式会社CureAppの創業メンバーに。現在は、臨床を続けながら、同社の最高開発責任者(CDO)として開発全般を指揮しています。実は少し前まで、“ゴール志向”でない自身のキャリア観を肯定できずにいたとか。CDOとして働く現在は、どのように捉えているのでしょうか。

  • 事例

    保険適用アプリ開発までに模索した、医師兼エンジニアの道―医師と2足のわらじvol.18(前編)

    病気を治療するアプリ”の保険適用に向け、日本で治験が進められていることをご存知ですか?「治療アプリ」の研究開発を行う株式会社CureAppで、最高開発責任者(CDO)としてアプリ開発を牽引するのは、現在も臨床を続ける医師であり、エンジニアでもある鈴木晋氏です。独学でプログラミングを始めたのは、医学部在学中。その後、エンジニアとしての腕を磨きつつ、ゲノム研究者としての道を歩み始めました。鈴木氏はそのユニークなキャリアをどのように模索し、治療アプリの開発にたどり着いたのでしょうか?

  • 事例

    「外科医に未練なし」バーテン医師の決意―医師と2足のわらじvol.17(後編)

    外科医兼バーテンダーの江原悠先生。医師としてのキャリア観に加えて、お店に来るお客さん、診療する患者さんに向き合う際に気を配っていることについても伺いました。

  • 事例

    30代で常勤医から離脱 バーテンダーの道へ―医師と2足のわらじvol.17(前編)

    東京都杉並区に2019年5月、「BAR Hoya」というお店がオープンしました。オーナー兼バーテンダーは、外科医でもある江原悠先生。30代で常勤医のキャリアから離れ、自分のバーを始めた経緯や、現在のワークスタイルについて伺いました。

  • 事例

    「アニサキス」も曲に メタル女医の徹底ぶり ―医師と2足のわらじvol.16(後編)

    形成外科医と医療系メタルバンドのボーカルという二足の草鞋を履くババロア先生によると、医学部とメタルには、意外な親和性があるそうです。医師とバンドマン、双方のプロとして多忙な毎日を送る先生に、今後の展望を伺いました。

  • 事例

    メタルバンド女医「人一倍頑張ってきた」―医師と2足のわらじvol.16(前編)

    形成外科医であるババロア先生のもう一つの顔は、医療系メタルバンド「Anatomy」のボーカリスト。3月にリリースしたミニアルバムが、発売週にディスクユニオンヘヴィメタルチャートで1位を獲得するなど、バンドの注目度も上がっています。医師兼バンドマンというユニークなキャリアを歩み始めたババロア先生に、医師を志したきっかけやバンド活動への思いを伺いました。

  • 事例

    視点の“ズレ”はむしろアドバンテージ―医師と二足のわらじvol.15(後編)

    産業医・スポーツドクターとして活動する傍ら、テニスプレーヤーとしてもトップを目指し研鑽を重ねている岩井勇策先生。先生が自分自身に実践している“整形外科的集学的治療”とは、一体どのようなものなのでしょうか。医療とテニス、どちらにも全力で向き合う原動力を教えてくれました。

  • 人気記事ランキング