体力とスキルさえあれば、高齢になっても働き続けられる医師という職業。しかし、老後の生活を想像してみたり、自身の気力・体力と向き合ったりする中で、「引退」の二文字が脳裏をよぎることもあるのではないでしょうか。生涯現役として活躍し続けるか、ある時期を境に退くか――。編集部では、医師を対象に「理想の引退時期」についてアンケート調査を行いました。
約7割の医師は75歳以前に「引退したい」
アンケートは、2017年5月13日~17日にかけてm3.com医師会員1427人を対象に実施。何歳まで医師を続けたいかを聞いたところ、以下のような回答結果となりました。
それぞれ僅差ではありますが、多く票を集めた順から、71~75歳、65~70歳、81歳以上、76~80歳、64歳以下という結果に。7割近くの医師は、75歳以前までに「引退したい」と考えていることが明らかになりました。
なお、回答結果を内科・外科系に分けたところ、以下のようなデータが得られました。64歳以下の早期引退を考える医師の割合も、76歳以降まで現役を希望する医師の割合も、内科系が外科系を上回るという結果に。外科系は、眼の衰えや集中力など、身体的・体力的な限界を考慮して65~75歳を引退時期と考えている医師が59%に及ぶ結果となりました。
※内科系科目には、一般内科、呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、腎臓内科、内分泌内科、小児科、精神科等を含む。外科系科目には、一般外科、呼吸器外科、産婦人科、消化器外科、整形外科、脳神経外科、眼科等を含む。
以降の段落では、年代別の理由を一部抜粋してまとめています。
64歳以下
・夫が退職したら自分も退職する(腎臓内科/40代)
・元気なうちにのんびり好きなことをしたい(整形外科/50代)
・外科系であるため。65歳以上になっても集中力を維持できるか自信がない(脳神経外科/50代)
・几帳面な性分なので、医師になってから現在まで休日でも頭から診療の事が完全に消えることがない。休日にしか出来ない雑用も然り。勤務医時代も労働基準法など医師には全くない。開業しても休日以外休むにしても1カ月以上前から患者には張り紙で知らさなければならない。心身共に良く保っていると思う。風邪も20年は罹っていない。病気さえ出来ない。子供達も現在心配ないこともあるでしょう(消化器内科/60代)
・利用者は最新の医学を求めているから(一般内科/80代)
・現在89歳で、自分の体験から臨床医としては65歳が限界、産業医としては85歳がギリギリ可能でした(消化器内科/80代)
65~70歳
・このくらいの年のDrだと診察を受けてもいいかな?と自分が思っている年齢だから(循環器内科科/40代)
・一般のサラリーマンでは65歳までの定年延長が一般的であり、この程度が妥当と思う(循環器内科/40代)
・定年を過ぎても自分が必要とされるのであれば、その能力を使用し伝えていきたいが、70歳ぐらいまでが限界かと考えている(麻酔科/40代)
・60歳までに自宅のローンを払い終わり、70歳までに貯蓄ができれば妻の老後も安泰かと・・・(一般内科/50代)
・老害とならないように引退。70歳以降は、自分と家族と社会のために使いたい(泌尿器科/50代)
・外科医です。視力を含む体力が衰えたまま診療(手術)を続けることは、即患者さんにとっての不幸になります。従って私は満70歳を迎えた年度末で退職しました(一般外科/70代)
71~75歳
・年金がアテにならない。特に趣味もなく仕事をすることにより生き甲斐を感じるから。本当は元気ならもっと働きたいが勤務医のため、雇ってもらえるのは75歳くらいまでが限界かなと…(科目不明/40代)
・子供の教育費が掛かるため。老後の生活が不安なため(消化器内科/50代)
・生活のため、社会活動のため、認知症予防のため(神経内科/60代)
・可能なら生涯現役でいたい。暇な、曜日感覚のない、しなければいけないことがない、義務のない生活のほうがつらいかもしれないし、人の役にたっているかもしれない、と思える生活が一番だと思うからです。しかし、いくら元気でも、70歳代前半までが、社会的責任上、限界かもしれない、と思うからです(脳神経外科/60代)
・次男が勤務医から診療所を承継すると思われる年齢(小児内科/70代)
・大学勤務でたいした蓄財もなく、また、年金も僅少であるために退職後も働かざるを得ません。(科目不明/70代)
76~80歳
・せっかく資格をとったので、細くても長く働いていきたい。ただ、資格更新や学会参加など定期的なブラッシュアップは必須だし、加齢に伴う自分の能力低下に対しては謙虚に向き合うべきだと思う(呼吸器内科/30代)
・ぼけ防止。必要とされている限り頑張りたい。老害と言われないような言動は必要だが(放射線科/50代)
・父が88歳まで働いたから、せめて77歳までは頑張りたい(内分泌内科/60代)
・やめてしまうと地域に医者がいなくなるし、今のところ診療に支障があるほどの物忘れなど体力気力の衰えもない(一般内科/60代)
・既に74歳であり、80歳くらいまで働けたらいいなと考えている。趣味に生きる気もないから(精神科/70代)
・医師不足であるといわれており、元気なうちは地域医療に尽くしたい(一般内科/70代)
81歳以上
・医師として能力を発揮できるうちは、引退はないと考えている。もちろん仕事量は、ぐっと減ると思う(麻酔科/年代不明)
・年齢での期限は考えておらず、体力が続けばできる仕事を選び、何らかの役に立っていきたいです。ただ、体力的な無理はできないし、することは考えられません(一般内科/50代)
・生涯現役。自分の限度を知ったら、自らメスを置く(消化器外科/50代)
・実際に80歳以上まで働いている医師を見ると生き生きしているから(心臓血管外科/50代)
・認知症にならない限り、その年齢でできる医療を続けたい。ボランティアの性格は強くなるだろうが、決して患者に迷惑なことにはならない存在でありたい(老人内科/70代)
・医師不足です。医師として自分自身役立てると思ったら、終世現役で困ってる人々の役に立つべきです(科目不明/80代)
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