1. m3.comトップ
  2. キャリアデザインラボ
  3. ノウハウ
  4. コラム
  5. あえて理由は告げずに退職。悔いない転職のために、わたしが考えたこと―女医のつれづれ手帖(16)
コラム

あえて理由は告げずに退職。悔いない転職のために、わたしが考えたこと―女医のつれづれ手帖(16)

2018年3月2日

Yu(ゆう)
現職との退職交渉は、医師の転職活動における最難関と言っても過言ではありません。タイミングや伝え方次第で、新しい職場へのスムーズな入職が難しくなってしまうことも少なからずあるようです。今回は、わたしがどのように退職意向を伝えたか、入職日までどう過ごしたかも併せてお話ししたいと思います。

どんな状況でも、「わたしはわたし」

入職先は決まったものの、現職で退職を切り出すのが結構大変でした。人手不足の状況で退職することを申し訳ないとは思いましたが、情に流されていては成長できないし不満が募るだけ。「今の病院がわたしの人生を保障してくれるわけではない」と意を決して、院長・事務長に退職の旨を伝えました。報告したタイミングは、転職先の院長との面談を終えて内定をいただくまでの間だったと思います。こういう時、「そうですか」とはなかなかいかず、大概「なぜ辞めるのか?次はどこの病院に行くのか?」と聞かれるもの。しかし、わたしは詳細を伏せることにしました。

それなりの規模の病院でしたから、わたしのことをよく知らないスタッフにも退職にまつわる噂は広まってしまいます。中には、いなくなった人を面白おかしく言う人もいるので、「辞める理由はいろいろあります。次(の職場)は、まだはっきり決まっていません」と答えておきました。辛くなった、嫌になったなどのネガティブな発言も、激しく追及されない限り、言わないほうが無難だと思います(他の先生方が、どのような話をつけて退職されるのかは、わたしも気になるところです)。なお、わたしは麻酔科でしたので、受け持ちの病棟患者さんもおらず、特別な引き継ぎもなかったので、退職日もスムーズに決まりました。

一歩踏み出したからこそ、知ることができた世界

退職日から入職日まで数カ月あったので、勉強会に参加をしたり、麻酔の非常勤・スポット勤務をしたりして過ごしました。結果的にいろんな病院に行くことになり、これまでいかに狭い世界でやってきたのかを思い知らされました。そして、いくつもの病院に勤務するうちに、院内の雰囲気察知能力がアップしたようにも…。このこともあり、転職した今でも時々、麻酔のスポット勤務を引き受けるようにしています。

転職して最初のうちは初めてのことも多く、戸惑いもありました。不慣れなところを看護師さんにカバーしてもらったことも多々あります。それでも現在は、だいぶ慣れてきて、新しい経験もできて、とても勉強になっています。定時で帰宅できることがほとんどですし、自分の健康管理などにも時間を使う余裕も出てきて、心身ともに以前より穏やかに過ごせるようになりました。

その時々で柔軟な選択を

今回、転職・転科という選択をしてよかったと改めて思います。わたしもですが、女性は人生において、いくつも転機があります。結婚、妊娠、出産、子育て、仕事復帰…と書き出したらきりがありません。もちろん男性にも転機はありますが、「妊娠・出産」はかなり特別です。独身のときは、自分のことだけを考えてやりたい仕事ができるかもしれません。しかし、結婚をしたら家族のことも視野に入れて、妥協点をその都度探らなければならず、「自分のやりたい仕事」だけを貫くことは困難になっていきます。妊娠・出産もすれば、なおさら。妊娠・出産はいつ何があってもおかしくないだけでなく、体力も相当奪われます。以前と同じように勤務しようとしても、思うようにできない…といったジレンマを抱えるかもしれません。

この他にも、男女問わず、開業するかどうか、家業を継ぐかどうか、などのテーマにぶち当たることも。人生の岐路に立ったとき、やりたい仕事内容、ライフスタイルや家族の状況などに応じたワークスタイルを、柔軟性を持って選んでみてもいいのではないでしょうか。

Yu
ゆう
麻酔科医・内科医

医学部卒業後、某医局で麻酔科認定医取得。 30代で国際結婚、1児の母。現在は麻酔科・内科医として働きながら、 自身の経験を活かした執筆活動も行う。

仕事とプライベートを両立しながら働きたい女性医師の方へ

結婚・出産・育児・介護などを考えると、今の勤務先は続けにくいとお悩みではありませんか。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携し、以下のような希望を叶えられる求人もお預かりしています。
●オンコール・当直・時間外勤務なし
●複数体制で急な休みが取りやすい
●院内保育園完備、保育所までの送迎あり

ご希望であれば女性のコンサルタントが担当いたしますので、お気軽にご相談ください。

この記事の関連キーワード

  1. ノウハウ
  2. コラム

この記事の関連記事

  • コラム

    ガイドラインにない“医師の仕事”実感した日々

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生。今回は、医師が“命”に寄り添うことについて語ります。

  • コラム

    今だから思う、研修医が報・連・相できない理由

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生。今回は研修医時代の失敗から学んだことについて語ります。

  • コラム

    「K君死んじゃうの?!」旧友が教えてくれたこと

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生が、「女性医師だからできない」ことではなく、「女性医師だからできる」ことについて語ります。

  • コラム

    コロナ禍だから振り返りたい「扶氏医戒之略」

    ドクターと医学生の交流を目的とし、将来の選択肢を増やすためのイベント「Doctors’ Style」の代表を務める正木稔子先生が、「女性医師だからできない」ことではなく、「女性医師だからできる」ことについて語ります。

  • コラム

    女医を悩ます「2人目の子」のタイミング―女医の「2人目」問題 vol.2

    当然のことながら、子どもを授かるということはそう簡単なテーマではありません。2人目に限らず、「いつ子どもを出産するか」は、働く女性にとっての永遠のテーマとも言えます。難しい問題ではある一方で、「いつ出産したら、どんなリスクがあるのか」を意識しておくことで、出産・育児がスムーズになる側面もあるでしょう。2人目の出産を悩んだ女医の一人として、2人目の子どもをいつ出産すべきか、読者の皆さんと一緒に考えたいと思います。

  • コラム

    女医に立ち塞がる「2人目の子」の壁―女医の「2人目」問題 Vol.1

    私の親しい女医仲間や女医に限らずとも、仕事を持つ女友達の間では、「2人目どうする?」という話題が顔を合わせるたびに出てきます。自分の身の回りだけでもこれだけありふれているのだから、全国的にみたらかなりの割合で「2人目」について悩んだり考えたりしている女性がいるということではないでしょうか。私自身も1人の子どもを持ち、今すぐではないにしろ、近しい将来2人目も考えている当事者ですので、自分の考えや、周囲の声も織り交ぜながら、読者の皆様と一緒に「2人目問題」についての事柄を整理していければ幸いです。

  • コラム

    どう築く?産後のキャリア―女医のつれづれ手帖(22)

    子供が生まれたことで、医師としての目標と母としての理想の狭間で揺れる方も多いでしょう。復職するのか否か、働き方はどうするのかなど、悩む内容も人それぞれ。今回は、私なりの産後のキャリアプランの描き方についてお話したいと思います。

  • コラム

    不測の事態、どう対応する?職場で子育てを応援してもらうには―女医のつれづれ手帖(21)

    産休・育休明けは、生活リズムの変化や久々の職場復帰など自分自身の負担も大きくなる時期。不測の事態に対応するためにも、家庭や職場からバックアップしてもらえるよう働きかけていく必要があります。今回は、私がどのように育児と仕事の両立をしているか、周囲との関係づくりのポイントも含めお話したいと思います。

  • コラム

    実録! 1歳3カ月の子どもを持つ、女医ママのタイムスケジュール―女医のつれづれ手帖(20)

    ただでさえ多忙な医師が、仕事をしながら子育てをするのは想像がつかない―。そのように考える女性医師は少なからずいるのではないかと思います。実際に働きながら育児をしてみると、工夫次第で何とかなるものです。今回は、1歳3カ月の子どもを持つわたしが、どのようなスケジュールで過ごし、何を重視して仕事と育児に取り組んでいるかをお伝えできればと思います。

  • コラム

    「復職先に求めるもの」、整理できていますか?―女医のつれづれ手帖(19)

    Yu(ゆう)先生インタビュー。復職先に求めるもの=働きやすい環境、この一言に尽きると思います。それを具体的に洗い出し、優先順位を付け、勤務先に伝えられるかどうかが、復職後の働き方を左右するのではないでしょうか。今回は、わたしが復職先に求めたいもの、それをどのように活かして働いているかをお話ししたいと思います。

  • 人気記事ランキング

    この記事を見た方におすすめの求人

    常勤求人をもっと見る