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コラム

初めて転職する医師が知っておきたい、病院探しのコツ―女医のつれづれ手帖(14)

2018年2月15日


Yu(ゆう)
キャリアを考えるうえで、時に選択肢となり得る「転職」。しかし、転職経験がない場合は、何をどのように進めていいかわからないのではないでしょうか。今回は、わたしが転職をするにあたり、どのように転職候補先を探したかについてお話ししたいと思います。

減る常勤医、増える残業に限界を感じるように

わたしはかつて、中小規模の病院で麻酔科の常勤医をしていました。そこでの勤務条件は、当直・オンコールなし、週4~4.5日勤務。入職後1年くらいはとても働きやすかったのですが、徐々に執刀医の数、手術件数が増えていき、それに伴い残業も増えていきました。

大学病院時代は当直もあり、急変、急患対応も当たり前な環境だったので、なんとかなるかな?と気楽に構えていました。しかし、麻酔科医は増えるどころか減ってしまった状態での勤務が続きーー頼ってもらえる状況をやり甲斐に感じる人もいるでしょうが、わたしにはそれがだんだん大きなストレスとなってしまったのです。オペ室から出られないため術前・術後の患者さんを見ることができなくなり、仕事上でのコミュニケーションは患者さんとではなく、オペ室を使いたい各科との交渉になってしまいました。また、家庭もあったので毎日帰宅時間が読めないというのも辛く感じるようになっていったのです。

紹介会社を利用するときは、わがままでも何でも希望条件をしっかり伝えること

このような状況から、「もう少し時間に余裕を持ちながら、患者さんともっとお話ができる仕事をしたい」と思うようになりました。加えて、倦怠感、異常な眠気、イライラなど、年齢を追うごとに体調不良がひどくなっていき、栄養学や美容内科にも興味を持つようになったのです。
いろいろ調べた結果、「副腎疲労」や「栄養学」といった言葉にたどり着き、栄養学に基づく診療をしているクリニックで治療と栄養指導を受けたところ、それまでの症状が驚くほど改善。それ以来、「いずれは栄養や美容内科、予防医学を臨床現場で積極的に経験できるところがあったらいいな」と考えながら、さまざまな勉強会などにも参加していました。

転職先を探すにあたり、まずは当時の勤務先を紹介してくれた人材紹介会社(以下、紹介会社)に、麻酔科医としての働き口を相談することに。当時の勤務条件と同じ「できれば自宅から行きやすい」「当直、オンコールなし」「週4~4.5日勤務」に、「オペの入れ方に余裕を持ち、患者さんを術後も十分にケアできるところ」という希望も加えて探していただきました。かなりわがままな条件というのは承知の上で、です。わたしは、紹介会社に依頼する際は、わがままでも何でもいいので、希望条件をしっかり伝えたほうが良いと思っています。探してもらった結果、希望するような転職先はないかもしれないし、あるかもしれないし、それは未知です。「こんなうまい条件のところなんてあるわけない!」と思っていたら、ぴったりのところが見つかることも意外にあるもの。全ての条件を満たさなくても、紹介会社の方は1つでも当てはまる候補先をあれこれ紹介してくれるので、選択肢も増え、より吟味できるというわけです。

こちらの紹介会社からは、いくつか病院を紹介していただきましたが、残念ながらピンと来る案件には出会えず、諦めかけていました。そんな矢先に、かねてから興味があった栄養学や美容内科分野もできる外来勤務募集の話が舞い込んで来たのです。この求人は、大学時代の同期から紹介されて登録していた別の紹介会社で、時々スポットのアルバイトを紹介していただいていたところでもあります。紹介いただいた病院には、非常勤勤務経験があったので院内の雰囲気もおおよそわかっていましたし、麻酔業務ではなくても興味ある分野にチャレンジすることは自分にとって有益なことだと判断し、転職を決意。さまざまなご縁とタイミングが重なり、転職を機に美容内科に転科する運びとなったのです。

紹介会社の選び方 わたしの持論

紹介会社の選び方に迷われる方もいらっしゃるかもしれません。個人的にはどこでも良いと思いますが、友人の紹介で登録した紹介会社のほうが、ゼロから探すより安心感も信頼感もあります。友人が利用している紹介会社に登録している医師は周りに多いように感じますし、わたし自身もそうです。

また、つてのある紹介会社には、できるだけ転職相談をして探してもらったほうが、より多くの案件を得られると思います。数は少ないですが、知り得る紹介会社に全て転職相談をしたのが今回のわたしの結果です。紹介会社によっても、つながりのある病院が異なりますし、交渉力にも差があるように感じます。

一方で、こちらがあまり気乗りしない病院にもかかわらず、やたらとその病院の良いところだけを主張して推し進めてくるところには要注意。紹介会社側の利益追求が、求職医師の希望と将来よりも勝ってしまっている可能性があるためです。転職先となる病院側も人手がないばかりに、マイナス面をあえて伝えないまま話を進めて入職に持っていこうとする場合もあります。

自分の生活と将来がかかっている、大事な転職。紹介会社や転職候補の病院が言うことは参考までに留めておき、自分の目と肌でよく確かめてから転職先を決めるのが良いと思います。あまりにも納得できる候補先がなければ、今は転職時期ではないのかも?と捉えて、無理に転職の話を進めずに様子をみることも必要かもしれませんね。

Yu
ゆう
麻酔科医・内科医

医学部卒業後、某医局で麻酔科認定医取得。 30代で国際結婚、1児の母。現在は麻酔科・内科医として働きながら、 自身の経験を活かした執筆活動も行う。

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