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在宅医療

一都三県に訪問診療 持続的な「24時間対応」を目指して―佐々木淳氏(悠翔会理事長)Vol.1

2014年2月24日

在宅医療において、質を担保しながら医師が無理なく働き続けられるように、現場ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。今回は、一都三県にまたがる8つのクリニックを通じて在宅医療を提供している、医療法人社団悠翔会(本部=東京都港区)を取材しました。在宅療養支援診療所が制度化された2006年に設立され、急速に成長を遂げてきた同会。これまでの戦略や、訪問診療を繰り返す中で見えてきた「在宅医の役割」について、佐々木淳理事長に聞きました。

一都三県で訪問診療、地域ごとにユニット体制はカスタマイズ

―法人の概要を教えていただけますか。

interview_vol1

2006年、東京都千代田区で法人を立ち上げ、現在は東京都23区、埼玉県南部、神奈川県東部、千葉県西部などに8つの訪問診療クリニックを展開しています。患者数は1700人で、個人宅・施設でおよそ半々くらいの割合となっています。特に個人宅で診る患者さんは、重症・終末期の方が多いのが特徴です。

法人全体のスタッフ数は、医師が常勤15人・非常勤35人、看護師が常勤25人。そのほかにも、▽歯科医師▽歯科衛生士▽理学療法士▽管理栄養士▽鍼灸マッサージ指圧師▽ソーシャルワーカー▽ドライバー▽管理部門―など、多職種のスタッフが在籍しており、国内では最大級の陣容となっています。

―どんなチーム体制で訪問診療に当たっていますか。

訪問診療に向かうのは基本的に、医師・看護師・ドライバーの3人で、個人宅だけであれば1日12―15軒ほど、施設だけであれば2-3施設ほどまわっています。ただ、地域ニーズに応じて、

interview_vol2

訪問する職種や医師の専門科目は変わります。認知症患者の多い地域には精神科医を配置しますし、リハビリのニーズが強い地域では、理学療法士も訪問します。施設の多い地域では効率的にたくさんの患者に携われる分、事務負担も膨れ上がりますから、ドライバーを減らし事務スタッフを増やしています。

―どんな診療科目の医師が活躍していますか。

当会では、患者さんに必要な診療サービスを自宅に居ながらワンストップで提供できる「在宅総合診療」の実現を掲げています。法人内では、プライマリケアを行う総合内科医と、専門診療を行う医師に分けており、主要な科目は耳鼻科医と産婦人科以外、おおむね揃っています。

医師に日勤・夜勤制の導入で24時間体制を実現

―特に個人宅には重篤・終末期の患者さんが多いとのことでしたが、24時間対応は大変ではないでしょうか。

当会では、法人全体で当直専門の医師を1名確保しており、日勤医には夜間対応をさせていません。常勤医の持ち回りでオンコール対応する在支診も多いですが、昼も夜も同じ医師に対応をお願いすると、どうしても翌日の仕事に支障が出るので、そこはしっかり休みを取ってもらいます。その代わり、日勤医には、「担当患者の治療内容」「いざというとき家で看取るか/救急車を呼ぶ方針か」など、当直医に引き継ぎできるよう情報をまとめてもらいます。また、当直医の夜間対応も、一定の質を担保できるよう、オンコールの内容はすべて録音し、第三者評価を受けるようにしています。

昼も夜も同じ医師に対応してもらえる形態の方が一見、安心感があるように思われるかもしれません。しかし、患者さんも、夜に電話しなくていいならその方が助かるはずです。昼間しっかりと対応すれば、夜間の対応は減ります。昼しか診ないのだとすると、医師にも「昼のうちにやれることはやっていこう」という意識付けができ、「熱が出たらこうしましょう」などと、予め患者さんとすり合わせておけるからです。
実際に現在、当直医にかかってくる1晩の平均コール数は法人全体で4-5件、このうち往診が必要なのは1-2件と、1人でも対応可能な件数にとどまっています。ただ、一都三県にまたがるクリニックの全エリアを1人でカバーしている状況なので、より迅速に往診ができるよう、当直人員は増やしていく方針です。

 

地域医療機関から当直の請負も

―法人を立ち上げた当初から、現在のような24時間対応のスタイルが確立されていたのですか。

interview_vol3法人を立ち上げた当初は、わたしが昼夜の24時間対応をしていました。しかし、夜間オンコールが続くと体力的にも限界が来ますし、きちんとした判断もできなくなってくることが分かったんです。あるとき患者さんに、「先生が毎日つらそうだから、具合が悪かったけれど我慢して、朝まで待ちましたよ」と言われたことがあったんですが、こんな心配を患者さんにさせてしまうのは、在宅医として失格だとも感じました。

こうした教訓もあって、在宅医療は、持続可能なサービスでないといけないと思っています。ただそのためには、法人の規模をそれなりに大きくして、システマチックにサービスを提供できる体制にならないといけない。そう考えて、受け持ちの患者さんを1500人程度にまで伸ばすことを当初は目標として掲げて、これを達成させました。

当会の当直医は、2013年7月から、近隣の在支診への休日・夜間対応支援も始めており、現時点で、連携する4クリニックの在宅患者約500人への救急・夜間対応を担当しています。他の医療機関と陣取り合戦のように患者さんを取り合っても仕方ありません。連携を取りながら、一緒に地域を支えられる体制をつくっていけたらと思っています。

「追い風」なくても続く在宅医療を

―現在、在宅医療は診療報酬などで追い風を受けていますが、一方で、いずれこうした制度の後押しがなくなったらどうなるのか、不安の声もあがっています。

当然、いつまでも在宅医療への追い風が吹き続けることはないと思っています。しかし在宅医療は地域の重要な医療資源なので、やがて制度による後押しがなくなった時も、運営が成り立ち、法人として成長を続けていけるような方法を考えなければいけません。そのためには、コメディカルや事務スタッフとの業務分担も推し進め、医師以外の専門職にも、専門性を大いに発揮してもらい、医師は医師にしかできない、訪問診療や往診をメインで行えるように体制を整える。有限な資源をいかに活かすことができるかがカギになってくると思います。

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