施設中心の医療から、患者が住み慣れた地域で受ける医療へと、医療提供体制の転換が訴えられています。外来・入院に次ぐ「第3の医療」とも言われる在宅医療。推進の背景をまとめます。
高齢化とともに変わる社会
在宅医療の必要性が強調される背景には、日本で着実に進んでいる高齢化の影響があります。「かかりつけ患者が高齢化し、通院できない人が増えてきた」という理由で、地域医療を支えてきた医療機関が在宅医療に踏み切るケースは多いようです。 国立社会保障・人口問題研究所によると、2012年に3000万人を上回った65歳以上の人口は、2020年には3612万人、2035年には3740万人にまで達するとされ、特に今後は、既に高齢化が進んでいる地方に加えて、都市部においても高齢化が急速に進んでいくものと予測されています。
高齢化は、疾病構造の変化をもたらすとされています。脳卒中や心筋梗塞など、生活習慣病が悪化して起こるような疾患の比重が高まるほか、複数疾患を抱えた患者が増加すると見込まれており、病気を抱えながらも日常生活を送ることのできるモデルが求められています。
また、高齢化社会とは多死社会でもあり、病院だけで十分な看取り場所を確保するのが困難であるという、いわゆる「看取り難民」への対応も、在宅医療には求められています。病状が安定していれば終末期は自宅で療養したいという人が約6割いるという調査結果(「終末期医療のあり方に関する懇談会」報告書)もあり、在宅を看取り場所としたいという声に、どう応えていくかは大きな課題となっています。
在宅医療は「地域包括ケア」の中核
こうした状況を踏まえて政府は、医療提供体制を「病院完結型」から「地域完結型」へ転換させることを目指しています。つまり、医療機関ごとに機能分化を推し進め、主治医を中心としてその地域内の各病院、診療所、薬局や訪問看護ステーション、介護事業所などが連携し、急変時の対応や看取りを含めた在宅医療が提供できる「地域包括ケアシステム」の構築です。独居または高齢者のみの世帯であっても、長く地域に暮らせるよう、在宅医療は地域包括ケアの中核的な機能を果たすものとして推進されています。
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