更新にも、一定の時間と費用がかかる専門医。取得してから時間が経ち、勤務先や担当分野が変わる中で、更新に迷う先生もいらっしゃるのではないでしょうか。今回実施した「専門医」のアンケート(※)から、専門医の更新事情と役立った専門医などをご紹介します。
※2020年11月14~23日、m3.com会員の医師を対象にエムスリーキャリアが実施
専門医更新の理由は「リスクヘッジ」
83.9%の医師が専門医資格を持つ(vol.1参照)のに対し、今後もその専門医を「維持・更新したい」と思う人は60.2%、一方「維持・更新したくない」と思う人は9.4%でした。苦労して取得した分、半数以上の医師が専門医を維持・更新し続けたい意思があるようです。
それぞれの理由を見ていきましょう。
とてもそう思う
- 取得が大変だったので資格を喪失した場合に、次に受けても受かる気がしない(40代男性/循環器科)
- 一般の人に専門を説明しやすい。また、基本領域の専門医取得は自らのキャリアの重要な通過点でもあるから(40代女性/リハビリテーション科)
- 画像診断管理加算の関係で、専門医がないと仕事にならない(40代女性/放射線科)
- 各診療科の治療内容がより高度になり、専門医と他の医師との治療に差が出てくるから(50代男性/整形外科)
- 今後、自分が現在勤務している施設で、後進を指導・育成するためにも資格が必要になるから(60代男性/内科)
まあそう思う
- 外勤先では専門医資格の有無により業務内容と待遇が異なる(30代女性/科目未回答)
- ないと医療過誤の際に問題になりそう(40代男性/脳神経外科)
- 転職する際に専門医資格がないと難しい気がするため(40代女性/麻酔科)
- 今後、専門医でないと出せない処方が出る可能性があるから(50代男性/精神科)
- せっかく取ったし、失ったらもう絶対取れないとわかっているので更新はする。そのことで一生専門科の知識を更新するモチベーションになるし、学会参加が必須なので否が応でも勉強することになって怠け者の自分には良いことと捉えている(50代男性/循環器内科)
どちらとも言えない
- メリットは現在のところないが、持っていないと何か不利なことが起こるかもしれないという不安(60代男性/眼科)
- もうすぐ定年なので可能なうちは更新するが、症例数や経験で無理になったら諦める(60代男性/外科)
- 専門医を持っていてもスキルアップにならない。なくても勉強を毎日すれば問題ないからです。臨床1年目と専門医が診察・検査しても診療報酬が変わらないことに疑問を感じていました(60代男性/消化器科)
あまりそう思わない
- 基幹病院を定年退職したので研修医や後輩に指導する機会がなくなった(60代男性/内科)
- 患者さんも専門医だから来てくれているようではないし、更新制度が変わり面倒になったので潮時かと(60代男性/皮膚科)
- 取らずに済むなら取りたくない。持っていようが、持っていなかろうが現状ではあまり変わらない(70代以上男性/産婦人科)
まったくそう思わない
- コストパフォーマンスを考慮すると、給与や診療報酬に反映されない資格は持っていても無駄だから(50代男性/内科)
- 専門医制度の変更により、とても時間的、金銭的に面倒になり、嫌になった。新たな団体が関わったけれども実質的なメリットがわからない(60代男性/内科)
専門医が実務やモチベーションに役立っている医師もいますが、専門医の価値に疑問を感じつつ、制度や環境の変化に備え、不安を払拭するために持ち続けている医師も散見されました。
専門医、各種申請やバイトで「役立つ」
医師が今後も更新したい、役立っていると思う専門医を挙げていただきました。患者のためになる、自身の給与や働き方に関係するなど、さまざまなメリットがありました。
総合内科専門医 28件
- 総合内科専門医と循環器専門医を取得し維持しています。現在の勤務先では、内科医として循環器も診る立場として、自分の拠り所にもなっています
- 多くの専門医の申請要件となっている。学会で横のつながりができる
- 研修医、専攻医の指導に必要
糖尿病専門医 13件
- 糖尿病患者が減ることがまず無い世の中なので、何かと相談に来院する患者が多い
- 糖尿病外来をするのに必要
- 県の特定疾患認定医としての資格に必要
放射線科専門医 9件
- 自宅勤務も可能
- 保険点数に影響する
その他
- 消化器内視鏡専門医:報酬が高くなる。アルバイトにも有効
- 麻酔科専門医:転職やスポットのアルバイトに有利
- 脳神経血管内治療専門医:新しい技術・機器の早期使用ができる。患者さんが安心される
- 日本整形外科学会専門医:RSA(リバース型人工肩関節置換術)のオペ資格が取れたから
- 泌尿器科専門医:持っている人が少なく、疾患が多いから
- 肝臓専門医:肝炎治療薬の補助費申請用の診断書記載が専権となっている
- 産婦人科専門医、婦人科腫瘍専門医:研修病院に指定されるために必要で、専攻医が来やすくなり、マンパワー確保の観点からよかったと思う
- 細胞診専門医:行政実施の検診で有資格者の参加が「絶対」ではないが求められている
- 病理専門医:外勤先の選択肢が増えた。ダブルチェックが必須でなくなり、1人で病理診断が可能になった
専門医の辞め時は?
一方、更新しなかった理由も寄せられました。勤務形態や担当分野が変わったり、所持している専門医にメリットが感じられなくなったりした時が専門医の辞め時のようです。
内科系
- 病院を転勤したため(急性期病院⇒回復期病院⇒介護老人保健施設)、専門医としての患者を診ることがないから
- 専門領域に起因する別領域の疾患を多く診ていたため、そちらの専門医を取得できたが、病院を移動(原文ママ)した際にまったく異なる疾患を主に診るように言われた。同時にすべて診ていくには負担が大きすぎたため、そこまで手が回らなかった
外科系
- 他の基本領域専門医があるため、時々携わる分野の専門医なら、維持しなくてよいのかも
- 手術のない施設での勤務となり、腹腔鏡外科の技術認定は要件を満たさなくなりました。外科と消化器外科も、次回更新時は認定医となります。外科系は、手術数の縛りがあるので、現場を離れると更新できなくなります
現在保有している専門医が今後も必要かどうかは、キャリア上の変化があった時に定期的に見直すと良いのかもしれません。vol.4では専門医は医師の判断材料になるのかなど、専門医に対する考え方をまとめます。
- 専門医取得して良かった?医師たちのホンネ―専門医アンケートvol.1
- 専門医“断捨離”に「共感」6割―専門医アンケートvol.2
- 「失うのは不安」専門医の更新事情―専門医アンケートvol.3【本記事】
- 専門医資格のない医師、周りはどう評価?―専門医アンケートvol.4
今後のキャリア形成に向けて情報収集したい先生へ
医師の転職支援サービスを提供しているエムスリーキャリアでは、直近すぐの転職をお考えの先生はもちろん、「数年後のキャリアチェンジを視野に入れて情報収集をしたい」という先生からのご相談も承っています。
以下のような疑問に対し、キャリア形成の一助となる情報をお伝えします。
「どのような医師が評価されやすいか知りたい」
「数年後の年齢で、どのような選択肢があるかを知りたい」
「数年後に転居する予定で、転居先にどのような求人があるか知りたい」
当然ながら、当社サービスは転職を強制するものではありません。どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。
エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。