新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以降、医師の定期非常勤市場は大きく変化しています。以前は、勤務を希望する医療機関に応募すれば、すぐに内定が出ていた医師でも、新型コロナ流行以降は、書類選考の時点で通過しないことも……。医師人材紹介サービスを展開するエムスリーキャリアで、定期アルバイト紹介サービスの責任者を務める刈谷匡孝さんが、今、定期アルバイト市場に起きている変化と、採用される医師・されない医師の違い、買い手市場で内定を得るためのコツをお伝えします。
「アルバイト先が決まらない…」医師の非常勤市場はどう変わった?
――新型コロナ流行以降、医師の定期非常勤市場はどのように変化していますか。
従来は「医師の採用」といえば売り手市場が当たり前でしたが、新型コロナ流行以降、感染者が最初に増えた関東地方を中心に、買い手市場に変わっています。つまり、今までは医師が好きな求人を選んで、好きなアルバイトを決めることができていましたが、今はこれが逆転し、医療機関が医師を選ぶ市場になりました。
以前は、医療機関が求人を出しても、その求人に医師が殺到することはほとんどなく、医師が応募をしたらすぐに内定が出て、そのままアルバイト先が決まる、という流れが一般的でした。ところが現在は、1求人あたりの応募数が増えてきており、医療機関が書類選考で複数の応募者を比較検討する形に変わってきています。これまでは、応募が来ると「善は急げ」とすぐに採用を決めていた医療機関でも、今は「少し待てばもっと良い医師が受けるかもしれない」と待ちの姿勢を取るところも出てきています。
しかし医師側としては、「非常勤アルバイトは応募すれば決まる」という従来の感覚のまま応募をしているため、内定をなかなか得られずに戸惑われている先生が増えてきているように感じます。
――医師が選考を通過しにくくなったのは、なぜでしょうか。
大きな要因は、アルバイトを探す医師の絶対数が増えていることです。
コロナ禍をきっかけに、アルバイト先を失った医師が急増しました。緊急事態宣言発令時には、外来患者が顕著に減り、経営難からアルバイト契約を打ち切られたり、派遣をいきなり中止されたりする医師が続出。弊社でも、特に関東地方では、医局所属の医師からの相談が大きく増えており、「医局に頼らずアルバイト先を探そう」という新たな層もアルバイト市場に参入してきました。
医療機関側は、4月は新型コロナの影響で募集をストップした施設が多かったのですが、世の中が落ち着きを取り戻すにつれ患者数も回復し、一部経営的な不安は残しつつも、11月現在では採用需要はほとんど例年並みに戻ってきているように感じます。ただ、あくまで戻っている程度なので、増加した求職医師がそこに流れ込み、競合するという状況が生まれています。
すぐに内定が出る医師、出ない医師…進む二極化
――どの医師も非常勤アルバイトを見つけるのが難しくなっているのでしょうか。
そんなことはありません。明確に強みがある医師は、書類選考を通過し、アルバイト先を得ています。ただ先程も触れたように、買い手市場に変わったことで医療機関が医師を選べる立場になっているので、強みがなかったり、自己PRが苦手だったりする医師は、面接にも進めないケースが増えてきています。
特に人気求人、例えば人気エリアのクリニック外来の求人といった、「業務負担が軽い、給与が高い、アクセスがいい」の3条件を満たす求人は、従来よりもかなり競争率が高くなってしまっています。資格や実績、コマあたりの対応可能患者数、地域に愛される人柄など、何かアピールできるものがないと、「選ばれない」ということも十分起こり得ます。
診療科や希望条件などによっても状況は異なるので、アルバイト探しに不安を感じていらっしゃる先生は、私たちのような人材紹介会社に一度相談していただくのも手かもしれません。
競争率が高まる中で、非常勤先を得るには?
――競争率が高まる中で、非常勤先を得るにはどうしたらいいのでしょうか。
定期非常勤先が決まっている医師の多くは、以下のいずれかの特徴に当てはまっています。
(1)スキルや経歴に魅力がある
(2)人気求人だけではなく、第2候補、第3候補の求人にも応募している
逆に以下の両方に当てはまる医師は、内定獲得する医師もいるものの、傾向としてはなかなか内定を得られない状況にあります。
(1)スキルや経歴の魅力が伝わっていない
(2)人気求人にこだわり、他の求人に応募しない
「割がいいアルバイトがあったときだけ働きたい」という方なら、無理に条件を下げる必要はないと思いますが、「今すぐアルバイト勤務が必要」な方は、ご自身の強みをしっかり伝えることと、選択肢を少し広げてみることが大切だと思います。
――できるだけスムーズに内定を得るコツを教えてください。
求人は、①業務負担が軽い、②給与が高い、③アクセスがいい――の3条件がそろっているところに人気が集まります。
希望条件のうち、この3つのいずれかの項目を見直すだけでも、選択肢は広くなりますし、競争率も下がります。例えば、給与とアクセスは譲れないという場合は、業務内容を広げて、訪問診療なども検討されてみる――などです。訪問診療は、「業務に慣れていないから」とはじめは抵抗感を示される方もいらっしゃいますが、国が推進している領域でもあるので、学びの機会としてアルバイト先に選ばれる医師も多いです。
応募先を1つに限定せず、幅を広げて3つ程度の求人に応募してみると、採用される確率はぐっと高まるはずです。
あとはシンプルですが、できるだけ連絡のスピードを上げる工夫も効果的だと思います。人気求人ほど、応募や書類提出、日程調整で時間をかけているうちに競争相手が現れる可能性が高いので、応募先や人材紹介会社のコンサルタントとのやりとりをスピードアップするだけでもリスクヘッジになると思います。
今回ご説明した市場の変化は関東地方が顕著、と申し上げましたが、関西の都市圏はじめ、地方都市でも同様の傾向が見えています。新型コロナウイルスによって、医師のアルバイト市場も“今までの当たり前”とは、がらりと変わっています。今回のお話が、少しでも医師のみなさまのお役に立てますと幸いです。
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