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製薬企業へ転職した医師(MD)が感じる「臨床とのギャップ」とは? ―日本製薬医学会・今村恭子理事長 Vol.3

2014年6月13日

製薬企業に勤務する医師(メディカルドクター=MD)でつくる日本製薬医学会では、現場のMDがキャリアについて情報発信するキャリアセミナーを定期開催し、これから製薬企業で働こうと考えている医師や、MD同士の情報交流を行っています。
その背景には、製薬企業に入職しても、定着できないMDが一定数おり、入職前後のギャップを埋める必要が生じているということがあるようです。製薬企業内でのキャリア形成において、注意しておかなければいけないポイントと問題意識について、今村理事長に聞きました。

多くのMDが陥るギャップとは?

―そもそも、どんな動機でMDは製薬企業に就職し、どんなギャップを感じているのでしょうか。

MD_vol5多くの医師にとって、製薬企業に就職する大きな動機になるのがQOLのよさです。土日や祝日にお休みが取れるという製薬企業の環境は、医師にとっては大きな魅力です。給与の面でも、医療機関で働いている場合と遜色のない額が支給されることが多いので、勤務環境に対する満足度は実際のところ、高いのではないかと思います。

しかし一方で、様々な立場の人と折衝をして物事を進めなければならないことに苦労することは多いようです。社内の各部署はもちろん、規制当局とのやり取りが求められる場面もありますし、外資企業であれば海外本社の存在もあります。そうした場面で求められる折衝能力は、やはり企業ならではのものがあります。

人の意見の聞き方、伝え方を工夫するだけで乗り越えられる場面もあるかも知れませんが、そもそも企業という組織体に、限界を感じてしまうMDがいるのも事実です。

―どうしたら、そんな状況を乗り越えられるのでしょうか。

大事なのは、広い視点を持つことではないでしょうか。
孤軍奮闘して変えられることと、変えられないことがあります。変えられないことがたとえあったとしても、そうした悩みは日本製薬医学会のような学会に悩みを持ち寄って、業界としての対応を考えていく。学会というのはそもそも、現場が感じた疑問や気づきをデータとともに持ち寄って、いろいろな結果が実証されていく場なのですから。自分一人でどうにかできないことも、より広い視点からアプローチすれば、徐々に変わっていくかもしれません。

日本製薬医学会では、昨年から定期的にキャリアセミナーを開催し、職場をまたいだMD同士の情報交換を行っているほか、2014年は7月に年次大会も予定しています(参考:日本製薬医学会 2014年度年次大会)。こうした場に参加しながら、会社にとらわれない視点で製薬業界に携わることも重要だと思います。

製薬企業で身につくスキル

―製薬企業に就職したことで、もう臨床に戻れないのではないかという不安を抱くMDもいると聞きます。今村先生はもともと整形外科医だったとのことですが、臨床を離れることに抵抗はなかったのでしょうか。

わたしは外科系なので、現場を2年でも離れると、戻るのは大変です。内科系のMDの方が臨床には戻りやすいかもしれませんが、それでも現場から離れるほど、臨床スキルはどうしても落ちてしまうものだと思います。

ただ、製薬企業に勤務したことでたとえ診療スキルが落ちてしまったとしても、製薬企業にいれば、大規模な組織の動かし方や、業務の管理方法、グローバルな単位でのプロジェクトの進め方を学ぶことはできます。これらは、臨床現場では磨けないスキルです。こうした側面を魅力だと思えるかどうか。これは製薬企業でのキャリアを選ぶ上で、カギになるかもしれませんね。

製薬企業によってはMDが医療機関に非常勤で勤務できるように体制を組んでいるところもありますから、臨床への復帰が不安な場合は、そうしたところで週1日でも働き続けて、現場の感覚を衰えさせないようにするといいと思います。その場合、無給でないとさせてもらえないケースもあるようですが、常に現場と接していることは、製薬企業での業務に何らかの形で活きることもあるのではないかと思います。

医療現場だけが医師のフィールドではない

―これから製薬企業での勤務を検討している方へメッセージはありますか。

医師としての一生を病院だけだと想定していたら、それ以外の人生は想像しづらいかもしれません。しかし、患者さんに貢献する活躍フィールドは、必ずしも医療機関だけではありません。

企業でしかできないことに目的意識を持ったMDにとって、製薬企業のリソースはとても魅力的です。「自分の専門分野に治療の打ち手がない」「より多くの人の健康に携わりたい」「グローバルに活躍してみたい」―。こうした思いを持ったMDが製薬企業の環境を使い倒して、自己実現することは、本人だけでなくきっと、製薬企業にとっても、そしてもちろん患者さんにとっても、幸せなことにつながるのではないでしょうか。

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