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企業(産業医・MD・社医)

留学を経て製薬企業に転職 産業として医療に携わる医師(MD)に―日本製薬医学会・今村恭子理事長 Vol.1

2014年5月30日

一般の臨床医からは想像しづらい、製薬企業でのキャリア。企業という空間で、医師(メディカルドクター=MD)は何を感じ、どんなキャリアを歩んでいくのでしょうか。
今回は複数の製薬企業での勤務経験を持ち、日本製薬医学会の理事長を務める今村恭子先生に、ご自身のキャリアと、臨床現場の勤務との違いについて伺いました。

臨床研究は「産業」―米国に渡って気づいたこと

―熊本大学医学部をご卒業後、慈恵医科大学の整形外科に入局されたと伺いました。

MD_vol1医局員時代は、「昼は臨床、夜は試験管とにらめっこ」という生活でした。当時は医師主導の臨床試験などの仕組みも今ほど十分には整備されていませんでしたし、将来製薬企業で勤務することになるとは、考えていませんでした。

そんな医局員時代、縁があってハーバード大学に研究留学し、米国での製薬産業の様子を見たことで「臨床研究」に対する考え方ががらりと変わりました。

わたしが訪れた医療機関には、全世界から患者さんが集まっていて、彼らに対する治験が日常的に何十本も組まれていました。医師が治験のために執筆した論文が、教授になるためのキャリアアップにつながる立派な業績として認められている状況も、日本とは違うように思いました。

そのとき、「臨床研究とは産業なのだ」と気づいたんです。もちろん学問でもあるけれど、臨床研究を進めるためには様々な雇用が必要ですし、その成果はいずれ、医薬品として工場で生産され、世の中に流通して人の役に立っていく。これは立派な産業だと思いました。

その後、一旦帰国して臨床に携わったり、ロンドン大学大学院で公衆衛生を学んだりした後、1995年、米国製薬企業の日本支社に転職しました。当時は、地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災が相次いだ激動の年でした。薬害エイズ事件もあり、医薬品とは、扱い方を間違えるとこんなにも人を苦しめてしまうのだと言うことが、社会的に認知された時期でもありました。

医師だけで研究開発は進まない

―製薬企業に移られて、どんな仕事に携わりましたか。

最初は私以外にMDもおらず、1人部署のような形で、新薬候補のパイロットスタディに携わりました。臨床試験を企業主導で行ったのですが、海の向こうのグローバルチームとメールでやり取りしたり、社内の他部門の人と調整を取ったりしながら業務を進めていきました。

その時も、かつて米国留学した時と同様、「やはりこれは産業なのだ」とすごく意識しましたね。やはり、研究は医師だけで行うものではないのだ、と。多くの患者さんの協力を得るには、単に「患者さんに説明をして、データを取って論文を書いて」という医師としての仕事だけでは足りません。説明内容をきちんと製本したり、場合によってはビデオ映像をつくったりするなど、情報資材の企画もしなければ、うまく伝わらないことがある。多方面からアプローチをして初めて患者さんの理解と協力が得られるのだと、しみじみと分かりました。

―そのほかに医療機関と企業との違いを感じた場面はありましたか。

共同作業の組み方も、両者では異なるなと思いました。医療機関では、患者さんが来たら大勢のスタッフが当然のこととして治療に協力してくれますよね。
しかし企業の場合、何かを進めようと思っても、企画の趣旨や、想定される課題、費用対効果を踏まえた上で、「いつまでにこんな成果を出したい」という計画を立てて、周りに納得してもらわないと物事が動きません。

―1社目を経験されて、その後は複数の製薬企業に移られた。

はい。前述のパイロットスタディを終えた後は、CRO(治験委託機関)に転職し、開発のプロトコルや安全性報告にアドバイスしたり、治験コーディネーター(CRC)や治験モニター(CRA)に対する教育資材をつくる仕事を行ったりしました。CROは様々な製薬企業からの臨床試験を請け負うので、いろいろな製薬企業の研究開発のスタイルを知ることがキャリア上は大きな成果だったと感じています。

その後も複数の外資製薬企業で勤務し、現在は個人コンサルタントとしてベンチャー企業での研究開発に携わっています。

臨床の視点を製薬企業で活かすには

―これまでを振り返って、製薬企業にはどんなやりがいがあると思いますか。

MD_vol2実際に働いてみると、臨床現場を知るMDだからこそ、製薬企業ができること・やるべきことが、徐々に見えてくると思います。そうした思いを、製品やサービスを通じて、社会に対して伝えられる立場にいるというのはとてもいいと思っています。

ただ、企業内でプロジェクトを進めていく上では、「わたしは先生です」という態度で他の社員に接してしまうと、うまく周囲を巻き込めないこともあります。
MDの専門的な知識や経験が企業で活かせるのは、ベースとなる協力体制がチームの中で築けていればこそ。多方面からのアプローチの重要性を忘れずに、ほかの社員の専門性や経験を認めた上で、ベースとなる協力体制を築いていくことが大切だと思います。

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