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カテあり・なし問わず、選択肢が多い循環器内科―診療科目別のキャリアプランvol.2

2020年4月7日

専門医を取得した後、医師はさまざまな経験を積み、多くの選択を重ねて自分自身のキャリアを築いていきます。しかし、フェーズによってはキャリアの悩みや課題が出てくることも。医師のキャリアに精通した医師人材紹介会社のコンサルタントが、診療科目別のキャリアについて語る本シリーズ。今回は循環器内科について、エムスリーキャリア・コンサルタントの田島智子氏にお話を伺いました。(取材日:2020年1月29日)

キャリアを左右する「心臓カテーテル」

——循環器内科専門医を取得した医師は、その後、どのようなキャリアを築いていくのでしょうか。

他科と大きく違うのは、心臓カテーテルというスキルです。30代半ばで専門医を取得したら、カテーテルを選ぶか選ばないかで、キャリアの築き方が変わってきます。カテーテルを行う先生の中でも、心臓カテーテル検査だけを行う先生と、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)を行う先生に分かれるので、循環器内科医の先生のキャリアは、大きなカテゴリーでいえば3つに分かれることになります。それとは別に、不整脈の治療であるアブレーションを専門にする先生もいらっしゃいます。 カテーテルを選ばない先生は、急性期病院で循環器を中心に内科を含むジェネラルな診療経験を積まれていきます。

循環器専門の医療機関は少ないため、スキルを身につけるまでは大学病院や総合病院でキャリアを積むことになると思います。急性期病院かつ急患が多いため、働き方としてはどうしても忙しくなります。これはカテーテルを扱う先生も、循環器のジェネラリストを目指す先生でも変わりません。

なお、循環器内科専門医を取得した後に取れる資格としてCVIT(日本心血管インターベンション治療学会)の認定医・専門医があります。取得するには一定の経験が必要になるため、CVIT認定医・専門医を持っていることで、医療機関側から経験豊富な循環器内科医として評価されやすいかと思います。

——循環器内科医の先生方から寄せられるご相談内容には、どういったものが多いのでしょうか。

カテーテルの治療経験を積み重ねるのが、30代~40代の循環器内科医の一般的なキャリアパスだと言えます。そのため、「カテーテルの件数を積める病院を紹介してほしい」「もっとカテーテルの症例数を増やしたい」というご相談を、特に30代の先生方から多くいただきます。 経験を積み終える頃になると、転職を考える方が多くなってきます。この時期の先生からは、私もよくご相談いただきますね。転職の目的はさまざまで、診療科立ち上げや後進育成などにチャレンジする方もいれば、これまでの働き方を続けつつ待遇改善を図る方もいます。

40代~50代になると、それまでのハードな働き方を見直す先生が増えてきます。なにしろ循環器内科は、急性心筋梗塞や心臓麻痺のような一刻を争う疾患が多いため、かなり体力を求められます。大きな病院であれば、当直や夜間の呼び出しに対応しなければなりません。そのため、「今の働き方だと体力的にそろそろ厳しい。QOLを重視した働き方にしたい」とご相談いただくことが多いです。

セカンドキャリアの選択肢は多め

——循環器内科医のセカンドキャリアには、どのような選択肢があるのでしょうか。

循環器内科は医師数が非常に多く、先生によって働き方も多岐にわたります。そして、カテーテルを使わない場合でも、指導をはじめ幅広いキャリアの選択肢があります。循環器内科の場合はカテーテルなど専門性を高めていても、内科の処置を行うジェネラリストとしての素地があるので、選択肢がなくて困ることは少ないと思います。

循環器内科医のセカンドキャリアとして多いのは、予防医療や検診などの領域です。検診の内視鏡検査は消化器内科の先生が行いますが、だからと言って循環器内科医の評価が下がるわけではありません。脂質異常症(高脂血症)、高血圧といった生活習慣病の患者さんが多いので、問診のほか心電図にも対応できるため重宝されます。生活習慣病や急性期を脱した患者さん向けに、心臓リハビリテーション領域での需要もあります。

専門にカテーテルを選ばなかった先生の場合、内科のジェネラルな診療をしながら循環器の疾患も診るなど、循環器内科というよりは一般内科のようにかなり幅広く診ることが多いです。訪問診療や在宅診療の道へ進む先生もいらっしゃいます。これは他科にも言えますが、年齢とともにスペシャルティよりはジェネラルな診療に移行していく傾向があります。

「キャリアの分岐点」を見据えた選択を

——循環器内科医が経験を活かして転職に成功した事例を教えてください。

まず、30代医師の事例をお話します。民間病院で働かれている先生で、「カテーテルの症例を積みたい」というご希望でご相談を承りました。 たくさんの症例を担当できているものの、医療機能的に難易度の低い症例が多いため、中身を濃くしたい、CVITの資格も取得したいというご希望をお持ちでした。また、休日はしっかり休んでオンオフをはっきりさせたい、年収もあげたいというご意向もあるなど、ご希望が多岐にわたっていました。せっかくの転職ですから、多くのことを実現したいと考えるのは自然なことです。 とはいえ、すべてを満たす求人は現実的でなかったため、優先順位をつけていただきました。ご希望の内容を表にして、譲れるポイントとそうでないポイントを先生と私でお話ししながらすり合わせていきました。当初は東京都内の病院をご希望でしたが、重要なのは距離ではないとご納得いただき、関東圏にある循環器の専門病院へのご入職が決まりました。転職後は年収もアップし、望んでいた経験が積めているとのことでした。CVITの資格を取るべく、日々励んでいるそうです。

続いて、40代医師の事例をお話します。カテーテル手術の経験を積んできて、後輩にカテーテルの指導もしていて、役職はありながらも未だ一プレイヤーであることに不満をお持ちでした。特定集中治療管理料なども取れる実績をきちんと評価してほしいというご要望でした。大学病院の医局に所属されている先生で、当直が月に7~8回あるという環境でした。

この先生には、心臓血管外科出身の先生が内科を担当している病院で、循環器内科を立ち上げることをご提案しました。一般的に、院長の専門診療科は患者数が多いです。心臓血管外科は循環器内科と親和性が高い一方で、診察にはすみ分けがあることから、内科的な対応が得意な循環器内科医のニーズがあるのではと考えたためです。医師の経験を活かせること、診療科立ち上げなど難易度の高い業務へのモチベーションが高そうだったことから、まずは病院側と調整をし、このようなご提案をしたという経緯があります。病院側も循環器内科の先生の需要があったのと、先生のお住まいから通勤できる距離にあったことから、ご入職が決まりました。大学病院から民間病院に移って循環器内科自体の経営にも参画することとなり、これまでの経験を活かして次の段階へとステップアップした事例でした。当直も週1回対応になり、身体の負担も軽減されたそうです。

——キャリアについてお考えの循環器内科医に、アドバイスをお願いします。

循環器内科は、専門性を高める方向に進んでも、ジェネラリストとしての経験を積んでも、のちのち様々な選択肢を手に入れることができる科です。キャリアの分岐点が明確にあるので、5年後、10年後にどうなっていたいかをしっかりと見据えて、ご自身でキャリアを選択することが重要です。キャリアについてお悩みがあれば、ぜひご相談ください。ご自身のライフステージに合わせて、ご希望の方向へシフトしていくお手伝いができるかと思います。

田島 智子
たじま ともこ

国立看護大学校を卒業後、国立成育医療研究センターを経て、エムスリーキャリアに入社。現在は、医師キャリア事業部常勤紹介グループで、関東エリアのリーダーを務める。2013年新人賞を受賞。2013年下期、2017年下期MVP賞を受賞。

今後のキャリア形成に向けて情報収集したい先生へ

医師の転職支援サービスを提供しているエムスリーキャリアでは、直近すぐの転職をお考えの先生はもちろん、「数年後のキャリアチェンジを視野に入れて情報収集をしたい」という先生からのご相談も承っています。

以下のような疑問に対し、キャリア形成の一助となる情報をお伝えします。

「どのような医師が評価されやすいか知りたい」
「数年後の年齢で、どのような選択肢があるかを知りたい」
「数年後に転居する予定で、転居先にどのような求人があるか知りたい」

当然ながら、当社サービスは転職を強制するものではありません。どうぞお気軽にご相談いただけますと幸いです。

エムスリーキャリアは全国10,000以上の医療機関と提携して、多数の求人をお預かりしているほか、コンサルタントの条件交渉によって求人を作り出すことが可能です。

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