企業(産業医・MD・社医)

現場の産業医に実態を聞く【NTTデータ】

2014年1月28日

医療機関で働いている医師からは、勤務実態が想像しづらい産業医。今回は株式会社NTTデータで産業医として活躍している松村雅代先生に、現場の声を聞きました。

医療と企業の接点に興味

―松村先生はもともと一般企業での勤務を経て医師となり、産業医として勤務されているとのことですが、これまで産業医としてどんなキャリアを歩んでこられたのでしょうか。

もともと医療と企業との接点に興味があったので、初期研修医の2年目のときに、日本医師会の講座を受講して、産業医資格を取得しました。その2年後に労働衛生コンサルタント(保健衛生)の試験に合格しました。労働衛生コンサルタント(保健衛生)の試験は医師であれば筆記試験の一部またはすべてが免除されますが、口述試験で踏み込んだところまで求められますし、産業医としての経験も問われます。当時まだ常勤産業医経験のなかったわたしが合格できたのは、企業経験が豊富であったことと、MBA(経営学修士)を取得していることが大きかったと思います。

産業医としてはこれまで、大学病院の心療内科に在籍しながら嘱託産業医として大手鉄鋼メーカーの製鉄所に2年ほど勤務した後、大手素材メーカーの工場に1年間常勤勤務し、2012年4月からNTTデータで常勤として週4日間働いています。

産業医としての業務内容

―現在、どのような業務をされていますか。

sangyoui_interview_vol2

当社はシステム構築やデータ通信などを行うIT企業です。従業員は1万804人(2013年3月31日現在)で、わたしは人事部の健康推進室に所属し、ほかに3名の産業医や保健師、心理士などの専門職や、非医療職の社員とともに連携しながら、多角的なアプローチを行います。スタイルや強みは違いますが、前向きな提案にはできる限り協力しようという雰囲気があるので、ありがたいなと思います。

日常業務で圧倒的に多いのは面談ですね。1回30分程度の面談を、社員やその上司を対象に月100人程度行っています。一部グループ企業の産業医も兼務していますので、担当する社員は3,000人に上り、健康診断結果の事後措置も一仕事です。通常業務の継続が困難だと思われる場合には、就業上の措置の決定をしなければいけませんから、その判定には細心の注意を払います。そのほか、安全衛生委員会、職場巡視に加え、新入社員や新任管理職等に、健康関連のセミナーも行っています。

―社員の方に特徴はありますか。

平均年齢は30代半ば過ぎと、比較的若い社員が多いですね。システム開発に携わっているメンバーが多く、プロジェクトが佳境に入ってくるとどうしても業務負担が大きくなり、それが終わると一息つくことの出来る等、働き方にメリハリがあると思います。繁忙プロジェクトの場合には、職場と連携して踏み込んだ取り組みを行う場合もあります。

このほか、社員のグローバル化が進んでいることも特徴的かもしれません。外国籍の社員はコミュニケーションや、日本独自の文化に戸惑ってしまうことも考えられるので、文化的な背景を踏まえて、どのようにすれば働きやすくなるのかも考えています。

産業医に必要な能力は

―これまで複数の企業に産業医として携われてきた中で、社内の健康増進のために、産業医にはどんなことが求められると感じますか。

信頼関係をつくるということだと思います。まずは社員の相談をしっかりと聞く。「実はこういうことがあって」と話してくれた内容から、解決策をたどっていく感じですね。

労働環境に何か課題を見つけたからといって、現場の状況を無視して土足で入り込むわけにはいきません。仮に臨床的な見地からは正しい指摘・指導であったとしても、現場の社員に「現実とはかけ離れている」と受け取られてしまったら、前向きな動きには繋がらないですよね。謙虚さを持って、現場の状況を知る、仕事内容が具体的に分からなければ質問する。そういう姿勢が大切だと思います。

凸凹+凹凸: お互いの得意で不得意を補う、相互補完的な社会の実現をめざして

ほかの人にはないような際立ったスキルをお持ちなのに、コミュニケーションが苦手で職場環境に順応できず、メンタル不調に陥ってしまった方々に、心療内科医として向き合ってきました。周囲の環境が原因で、得意分野を持った方々が力を発揮できないのだとしたら、あまりにももったいない。

sangyoui_interview_vol3こうした思いから、産業医業務と心療内科臨床に加え、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder (ASD)、いわゆる発達障害)傾向を持つ大学生の就労を支援するプロジェクトを立ち上げました。障害者採用枠ではなく一般採用枠でのスペシャリスト就労を目指すものです。大学のキャリア・サポート課や企業と連携し、心療内科医・産業医の経験を活かして、学生と企業の間の橋渡しを行っていきます。企業に入る前の学生の段階から関わることで、より多くの人に、自分の得意分野を生かせる仕事と企業に出会ってもらえるのではないかと考えています。ひとり一人が得意分野を活かして補完し合う、ダイナミックでしなやかな社会の実現を目指していきます。

産業医としてのキャリアをご検討中の先生へ

エムスリーキャリアでは産業医専門の部署も設けて、産業医サービスを提供しています。

「産業医の実務経験がない」
「常勤で産業医をやりながら臨床の外勤をしたい」
「キャリアチェンジをしたいが、企業で働くイメージが持てない」

など、産業医として働くことに、不安や悩みをお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。

エムスリーキャリアには、企業への転職に精通したコンサルタントも在籍しています。企業で働くことのメリットやデメリットをしっかりお伝えし、先生がより良いキャリアを選択できるよう、多面的にサポートいたします。

この記事の関連記事

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医が身につけたいビジネスマナー

    産業医として企業で働く際に知っておきたいビジネスマナーについて紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医面談で従業員が泣いてしまったら?

    産業医面談の際、従業員が泣き出してしまうような場合の対応例を紹介しています。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医のキャリアパス「1社目の壁」を越えるには

    産業医の仕事は社会貢献性が高く、臨床とは一味違ったやりがいのある仕事です。本記事では、産業医になるための第一歩から、その後のキャリアの積み方、そして将来的な選択肢について紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    【産業医という働き方】産業医の役割・業務内容

    本記事では産業医の役割と業務内容について解説しています。これから産業医として働きはじめたいという方が知っておきたい要点をまとめました。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    「産業医は精神科で無くても大丈夫」企業のメンタルヘルス解決法

    令和5年度の「精神障害に関する事案の労災認定」件数は3,575件(前年度比892件増)と、企業にとってメンタルヘルス対策は重要度を増しています。企業で解決する強い味方である産業医について、対策法と誤解されやすいポイントを紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    はじめての産業医:どうとる?担当者や従業員とのコミュニケーション

    産業医として企業に勤務する際に知っておきたいコミュニケーション術についてご紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医が知っておきたい「衛生委員会」とは

    企業が定期的に実施する「衛生委員会」の概要と、産業医に求められている活動について紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    産業医が知っておきたい「健康経営」の実践内容とメリット

    企業において注目度の高まる「健康経営」の実践内容とメリットを紹介します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    非常勤産業医(嘱託産業医)の働き方と給与相場

    非常勤(嘱託)産業医の働き方と給与相場について解説します。

  • 企業(産業医・MD・社医)

    〈2023年版〉産業医を取り巻く業界動向

    産業医を取り巻く業界全体の動向は?産業医になる方法、業務内容などについてまとめました。

  • 人気記事ランキング

    この記事を見た方におすすめの求人

    常勤求人をもっと見る