社会医療法人とは、「公益性の高い医療」の担い手として2007年の第5次医療法で定められた医療法人の類型の一つ。2017年10月1日時点で、日本全国288法人が社会医療法人として正式認可されている。事業内容の公益性に加え、医療計画上での支援を受けられることから経営体制への信頼感も高く、社会医療法人での勤務を望む医師は多い。
社会医療法人の設立背景―自治体病院に代わって公益性の高い医療を
前提として、全国各地の医療提供体制を維持するためには、たとえ採算が合わなくても取り組まなくてはならない「公益性の高い医療」が存在する。社会医療法人を一口に言えば、自治体病院が取り組むようなこれらの「公益性の高い医療」の担い手として、お墨付きを得た民間の医療法人と言える。
【「公益性の高い医療」として位置づけられているもの】
- 休日診療、夜間診療等の救急医療
- 周産期医療を含む小児救急医療
- へき地医療・離島医療
- 重症難病患者への継続的な医療
- 感染症患者への医療
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)など継続的な在宅医療を必要とする患者への医療や、当該患者の療養環境を向上する活動
- 災害医療
- 精神救急医療
- 心神喪失等で重大な加害行為を犯した者への医療および観察等に関する法律にもとづく指定医療機関が実施する医療
- 患者の早期社会復帰につながる医療連携
- 先進的な医療安全や疾病予防に取り組んでおり、患者や地域の医療機関に対し無償で相談助言・普及啓発する活動
- 質の高い医療従事者の確保・育成に関する活動
- 高度な医療技術を利用した研究開発を実施しており、その研究結果情報を患者や地域の医療機関に無償で提供する活動
- 治療との有機的連携による治験(活動)など
従来、上記のような「公益性の高い医療」の担い手は各地の自治体病院だったが、赤字体質が指摘されて久しい自治体病院だけで上記のような医療の提供を存続させることが難しくなってきている。こうした中、自治体病院に代わって公益性の高い医療を担う法人として位置づけられているのが「社会医療法人」だ。国は、医療から介護、福祉に至る広範な医療を提供している医療法人を「社会医療法人」と認定して「公益性の高い医療」にも取り組んでもらうことで、地域医療存続を狙っている。
社会医療法人の特権とは?
社会医療法人として認定されるためには組織としての中立性を保つために、経営体制への要件(同一親族内での役員選出への制限など)や、公益性の高い医療に取り組むための医療提供体制の構築が求められるなど、かなりハードルの高い要件が設けられている。ただしその分、自治体病院に回されていた公費を投入されたり、税制上の優遇措置を受けられるようになったりするなど、メリットは大きい。また、ケアハウスや知的障害者施設など児童入所施設の設置・運営や身体障害者療護施設など障害者入所施設の設置・運営といった第1種社会福祉事業に加え、通常の医療法人では取り組めない「収益業務」(下記参照)にも取り組めるようになるなど、通常の医療法人では着手しづらい領域への進出も認められている。
厚生労働大臣の定める社会医療法人が行うことができる収益業務
第二条 収益業務の種類は、日本標準産業分類(平成十四年総務省告示第百三十九号)に定めるもののうち、次の各号に掲げるものとする。
一 農業
二 林業
三 漁業
四 製造業
五 情報通信業
六 運輸業
七 卸売・小売業
八 不動産業(「建物売買業、土地売買業」を除く。)
九 飲食店、宿泊業
十 医療、福祉(病院、診療所又は介護老人保健施設に係るもの及び医療法第四十二条
各号に掲げるものを除く。)
十一 教育、学習支援業
十二 複合サービス事業
十三 サービス業
社会医療法人が転職・勤務先として医師から人気を集めるわけ
先述の通り、社会医療法人には公益性の高い医療の提供が望まれている分、それを補うための数々の優遇措置が取られている。このことが、「公益性の高い医療を展開しており、かつ経営的にも安定している」というイメージにつながっており、転職先・勤務先としての社会医療法人の人気を高めている。
社会医療法人で働く医師の活躍事例
「乳がんへき地」をなくす!専門病院が思う、へき地・離島医療のあり方―相良 吉昭氏(社会医療法人博愛会相良病院)
国内初の特定領域がん診療連携拠点病院となった、鹿児島県の相良病院。県内の乳がん治療の8割を行うという圧倒的な治療実績を持っている。理事長を務める相良吉昭氏は、乳がん専門病院として、県内のへき地や離島に医師を派遣して「乳腺科特別診療外来」を開設。特定領域の専門医だからこそできる、地域医療への関わり方を探っている。
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