2025年に向けてめまぐるしく変化する環境に適した病院経営を行う上で、財務諸表を読めることが病院経営者や事務部門には必須のスキルとなっています。今回は、エムスリーキャリアが開催したセミナー「今さら聞けない財務諸表の読み方PL編」を編集して紙上公開します。セミナー講師は、医療機関に対し財務諸表に基づいた経営改善を提案している濱岡勇介氏(エムスリーキャリア 経営支援事業部)です。
※2015年に掲載後、2019年6月26日に更新
【提供:病院経営事例集】
財務諸表は“病院の成績表
病院経営や会計に携わる方にとって、いかに収支を黒字にしていくかは大きな関心事でしょう。そのためには、病院の経営状態を理解することが欠かせません。
その経営状態を示したものが、“病院の成績表”とも言える財務諸表です。財務諸表にはPL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CS(キャッシュフロー計算書)の3種類があります=図1=。
今回は、その中で多くの方に最もなじみのあるPLを取り上げます。PLは、1年間の売上・費用・利益を記載したものです。病院の収支、つまり、いくらのお金が病院に入り、出ているのかという構造が分かるようになっています。
「PLが黒字になっていればいい」という声をお聞きすることがあります。ここで気を付けたいのは、PLが、(1)入金がなくても取引の発生時点で数字を計上する(2)減価償却費*が含まれる―ことから、実際の現金の動きは追えないことです。PL上の利益が1億円だからといって、同額が手元にあるわけではないのです。この点を覚えておかないと、半年後や1年後に資金が足りない事態に陥ってしまいます。
最後に、重視したい通勤に関する手当について、「その他」で回答があった詳細をご紹介します。
【用語解説】減価償却費
長期間に渡って使用する固定資産(設備)を耐用年数で配分した費用。Depreciationの訳語で、価値が下落することを意味します。 たとえば耐用年数10年の医療機器を1億円で購入した場合、毎年1000万円ずつ減価償却費として計上します。購入年は1億円の価値がありますが、5年後には5000万円、10年後には0円となり、買い替えることになります。なお、耐用年数は法律で定められています。PLの最小単位は「売上-費用=利益」
PLには多くの項目と数字が羅列されていて、どの項目に注目すべきかが分かりづらいかもしれませんが、次の計算式だけ覚えれば大部分は読み解けます=図2=。
病院経営の財務は特殊であると言われることもありますが、上記計算式をいくつか組み合わせたものが医療機関のPLです。そして、何に関する売上・費用・利益かで名称が変わります=図3=。
補足すると、ここでいう「売上」は、厳密にはすべての収入を指す「収益」です。ただ、収益の大部分を売上が占めるため、ここでは2つを同義で使います。
PLに準じた形で表すと次のようになります。
このように、医業・医業外・臨時のどこでお金が多く入り、どこで多く出て行ったのか、収益構造を理解することができるようになっています。
PL分析に「時系列比較」と「ベンチマーク比較」
PLの記載内容が分かるようになったら、次は自院の収益構造が適正かどうかを分析します。そのための手法として、自院内での変化から課題を見つけ出す「時系列比較」と、他院との違いから課題を見つけ出す「ベンチマーク比較」を用います。
次回は、これら2つの手法を使って、人件費率や償還期間などを分析していきます。
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