転職活動で内定を得たとしても、何らかの事情で入職が遅くなるケースがあります。そうした際、医療機関はいつまで待ってくれるのでしょうか? 内定から入職までの一般的な期間と、入職を延期せざるを得なかった事例について、医師人材紹介会社のコンサルタントが語ります。
都市部より、地方の方が柔軟に対応する
医師人材紹介会社のコンサルタントによると、内定から入職までの一般的な期間には地域差があるそうです。
「通常、都市部は半年~1年くらいです。4月入職を希望する場合、早い人で前年5~6月、遅い人でも前年12月~その年の1月には内定を得ています。一方、地方はもう少しゆったりしていて、内定から入職まで1年~1年半くらいのことが一般的です。地方は医師不足の問題がありますし、医局の力も強い。医局を離れる退局交渉に時間がかかることを、医療機関側も理解しています」
予定より入職が遅くなる場合の対応にも、地域差が見られます。
「都市部は医療機関が医師を選ぶようになりつつあり、長期にわたって入職が遅れる場合は、通常、白紙撤回になります。なかには、しばらく待ってくれる医療機関もありますが、1年以上は難しいと言えるでしょう。その医師を待っている間にも、ほかに入職を希望する医師が現れるかもしれないからです。
それに対し、地方の医療機関は1~2年ほど待ってもらえることがあります。医師不足のため、別の医師を採用することが難しいからです。スキルや経験の豊富な医師は、ある程度、長期間でも待ってもらえる可能性があります」
退局交渉がこじれる理由と、スムーズな交渉のコツ
入職が遅れる背景には、どんな理由があるのでしょうか。医局に所属している医師の場合は、やはり医局からの引き留めが大きな要因になります。
「教授や医局長と退局交渉をしようにも、なかなかアポイントメントがとれないことが往々にしてあります。特に、大学から遠い病院に出向している医師は、勤務を休んで大学に行かねばならず、難航するようです。アポが取れたとしても、すぐに退局の許可が得られるとは限りません。『君の気持ちはわかった。でも、もう少し頑張ってくれないか』と言われたり、条件のいい病院への出向を打診されたりすることがよくあります」
医局員が充足している医局であれば、比較的すぐに退局に応じてくれますが、それは珍しいケースです。退局交渉はできるだけ早めに始めたほうがよいと言えます。コンサルタントは、退局交渉をうまく進めるための心がけとして、以下3つを挙げます。
- 退局の意思をはっきりと伝える
- 一度、表明した辞意は撤回しない
- ほかの医局員に退局の話をしない
「医局によっては『今の患者はどうするのか?』『医局を潰す気か』など、医師の責任感に働きかける言葉で遺留し、交渉が2~3回に及ぶことがあります。その場の雰囲気に押されず、はっきりと辞意を伝えましょう。『医局の引き留めは誰のためなのか』『このまま残った場合、実現したい人生を送れるのか』を念頭に置いて交渉にのぞむといいかもしれません。また、教授の許可が得られるまでは、ほかの医局員に退局の話をしないほうが賢明です。退局したいことが噂になると交渉しにくくなりますし、ほかの医師との関係性がぎくしゃくしがちです。原則、内密に進めていくことをお勧めします」
入職時期を延期した医師の事例
医局に所属していない医師の場合は、通常、勤務先病院からの引き留めはそれほど強くありません。上司の許可を得て、患者の引き継ぎなどが終われば、比較的スムーズに退職できます。転職先への入職が遅れるとしたら、医師自身や家庭の事情の場合が多いようです。
以下は、実際に入職を延期した医師の事例です。
地方の総合病院に勤務していたが、過重労働で疲弊したため転職することに。同じ地域にある別の病院から内定を得た。しかし、その直後に体調を壊し、入職が大幅に遅れることになった。医療機関側は「採用計画が崩れる」と難色を示したが、医師人材紹介会社のコンサルタントが間に入り、「スキルが高く、採用するメリットのある医師です」と丁寧に説明し、理解を得た。また、コンサルタントは休養中の医師とも定期的に連絡をとり、「病院は待ってくれていますよ」と励ました。結果的に内定から2年後に入職し、現在は大いに活躍している。
将来は開業医になる可能性があるため、経営の勉強ができる医療機関に転職を決意。ところが、内定後に妻と子どもが体調不良となった。家庭のフォローを優先させるために、転職は延期せざるを得ない。医師人材紹介会社のコンサルタントが医療機関側に事情を説明し、理解を得た。内定から入職まで2年かかった。
入職の延期はセンシティブな問題で、どのように事情を説明するかによって、医療機関側の対応が変わる可能性があります。延期せざるを得なくなった場合は、遠慮なくコンサルタントに相談しましょう。
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